第六十話
ばし、ばしと駆け抜け様に六人の腿の辺りを打つが、威力はない。
六人をすり抜けたララがくるりと身を翻して媚笑を向ける。
叩かれた数拍を置いて、六人がびっくりしたように状況を飲み込んだ。
ぽかんと、ララを見返して引きつった笑いになる。
「へ、へへ、なんだよ、そのまま逃げればいいものを」
「全然痛くねぇぞ小娘が」
「ええ、痛くないでしょうね」
艶然とララが掌をひらりと振る。
それを取り囲もうとする六人が、一斉に転んだ。
叩かれた脚が動かない。
敵にオウルを打ち込んで身体機能を阻害する、治癒術の真逆の技である。
「な、なんだこりゃ!?」
「てめぇら、まさか教会の……」
ララが口元を隠してほほほと笑う。
「まぁ、わたくしがそんなに貞淑で敬虔に見えるなんて心外ですわ」
「いえ、私は教会の信徒なのですが……」
「ジェラール様、ひとりひとりにお話を伺いたく存じます。見張りをお願いしてもよろしいでしょうか?」
「分かりました」
ララがひとりを引きずって森の奥へ身を隠す。
ひとりひとりに尋問して、嘘やでたらめで煙に巻かれぬようにするためだ。
残った五人のうち二人が、ジェラールに片足で突っかかってきた。
他の三人は、逆方向に逃げようとする。
まず向かってきた二人を足払いで地に転がし、一瞬ごとに逃げたひとりずつの首根っこをひっつかんで纏めて転がす。
その間、背中のパメラがむずがったので軽くゆすってやる余裕付きだ。
その早業に、何をされたか分からずならず者達が目を白黒させた。
何かの間違いだと、また逃げ出そうとするが同じ結果に終わった。
それを三度もそれを繰り返すと、ならず者達は怯えて抵抗もしなくなる。
それからララが戻って来る。
おそらく逃げ出そうとしたのだろう、連れていっていた男は両腕が動かなくなっていた。
そしてジェラールが見張っていた内のひとりを連れていき、また茂みの奥に消えていく。
六人中二人が両腕を動かぬ状態になって、尋問も終わった。
その頃には、パメラも目が覚めていた。
「おにいちゃんの、おともだち?」
転がる六人の無法者達を不思議そうにパメラが眺める。
「そうですね、これからちょっとした友達付き合いになると思います」
苦笑するジェラールに、ララが近づいてそっと耳打ちをする。
「ジェラール様、ベルゼブブの使徒が九人に増えておりますわ」




