第五十六話
間もなくララが現れる。
「お呼びでしょうかメルルナ様」
「ララちゃん、あなたに仕事をひとつ任せます」
地図を交えての詳細がララに伝えられた。
「ダズー様……」
仕事を了解し終えれば、ララがぽつりとその名を零す。
ひしひしと、逆襲にどうしてくれようという感情が詰まった声である。
「用心として、ジェラールくんにも同行していただきますわ」
「まぁ、ジェラール様と!」
合わせた両手を頬にそえて、ララの表情が喜色でいっぱいになる。
その輝く瞳は恋する乙女のものとも、獲物を狙う妖蛇ともつかぬもので、ジェラールは気圧されたように微苦笑をする。
「よ、よろしくお願いいたします、ララ殿」
「ジェラール様がいらっしゃれば六百六十六人力ですわ、わたくし格好いいところ見せられるように頑張ります! 目を離さないでくださいましね、ジェラール様!」
「ララちゃん、見事にこなしてくるのよ。帰ってきたら、副導師に昇進ですわ」
それからそっと、メルルナがララに耳打ちをする。
「ジェラールくんを落として帰ってきたら、導師も確約よ」
「はい、メルルナ様、それも頑張りますわ」
「聞こえていますよ、おふたりとも!」
それから、ジェラールを想定ダズーとした戦闘の構想を練ることになる。
ベルゼブブの使徒に有効な技が、メルルナからララにいくつか伝えられた。
副導師になってから教えてもらえるようになる高度な技で、少しばかり伝授の前借りだ。
それだけに完全に習得するのは難しく、要旨と型を覚えてその日は終わった。
旅すがら、ジェラールを相手に稽古をして実戦に間に合わせよ、ということだ。
次の日の午前にふたりは出発した。




