第五十三話
「目立ちませんが、娼館がそこそこございますの」
伸びをしながら、ララが町を眺めながら言った。
「ええ、分かります」
「その娼婦達が、この町最大の売りですわ。町の潤いの秘訣です」
「……アスモデウスの使徒達なのですか?」
「全員がそうではありません。しかし、その娘達にわたくしもお話をさせていただく機会が多くございますわ」
「どのようなお話を?」
「強く生きましょう、というお話ですわ。希望を持つ娘の方が、少のうございます。そのような娘らにも、生きる苦しみだけでない何かを、お伝えするのもわたくしの役目ですわ」
「アスモデウスの教義」
「はい。どうか、奔放に性を楽しみたまえ。それは罪深いことではございません。それはあなた方にも許された救いなのです。どうか、生きることを楽しみたまえ、と」
「……全員が全員、それで納得するわけでもないと思います。ただ、それで救われる者も、いらっしゃるのでしょう」
「まさしく。そして面白いことに、そのような娼婦が多くなると、娼館の質が良くなるのです。そのため、またここに来ようとする商人も増える」
悪魔の教義で人を救い、それが良い循環になる。
ジェラールにとって、この一連の流れに否定すべきものは何もなかった。
それを導師抜きでやって見せたセドリックに、深い畏敬の念を覚える。
「セドリック殿と、語りたいな」
「あら、わたくしではご不満ですか?」
「いえ、そういうわけでは……」
「分かっておりますわ、ジェラール様。ジェラール様にとって、この町はメルルナ様を助けるに値する町であったことに、安心なさっておいでなのでしょう」
そう言葉にされると、そうかとジェラール自身で納得できるものがあった。
フォルセウスを敵に回し、メルルナを助けた。
その意義に安心している。
「アスモデウスの使徒に、ご入信いただければいくらでもセドリック様と語らえましょうに」
ジェラールが黙ってしまった。
アスモデウスの使徒としての出世や、武術、性技には興味がない。
しかしこうして悪魔教を健全に町の運営に使う技についてだけ言えば、教えを乞うのもいいのではないかと思ったのだ。
黙り込むジェラールの横顔を、ララは媚笑しながら眺めていた。




