第五十二話
「おや、ララちゃんお買い物かい?」
「そっちの男は恋人かい?」
「こりゃ格好いい人見つけたねぇ」
ララに手を引かれ、シエクスの町の散策する。
道中、多くの人々に声を掛けられた。
どうもララは町で顔の効くちょっとした存在らしい。
都度都度、愛想を振りまいてはこれみよがしにジェラールと腕を組んで見せて、ジェラールを困らせた。
町は平和だった。
表面上、メルルナは町長であるセドリックの愛妾ということになっている。
ララは館の下女。
町長の評判も良好で、自然とララのような下女にも皆親しんでくれていた。
何人かの男衆は、ララとジェラールが並んでいるのを見て絶望した顔をしていたが。
「良い町だと思ってくださっておいでなのでは?」
町の東にある広場の端。
少し休憩を、とふたり並んで座っていた。
行きがけに買った葡萄を、ララが一粒つまんで口に含んだ。
「はい、活気があって良い町ですね。商人の行き来も活発です」
「セドリック様の功労ですわ。民に、伯にと上手く立ち回ってくださっておりますの。おかげで果物も良い物が入ってきますわ」
もう一粒、房からもぎってジェラールの口元へと近づける。
それを、手で受け取ろうとするとひょいと逃げられた。
「……」
「ジェラール様、あーん」
もう一度、手でその一粒を掴もうとするが、やはり逃げられる。
にこー、とララが葡萄の一粒を手に圧力をかけてくる。
仕方なく、唇を突き出してその一粒を食んだ。
「おいしいですか、ジェラール様?」
「……ええ」
「うふふ、嬉しいですわ。では次は、」
言いながらもう一粒をつまめば、薔薇の蕾のような唇に葡萄の粒が収めて突き出してくる。
両目を閉じ、胸元で両手を絡めた祈るような仕草は可憐にして淫靡であった。
「ララ殿」
少し厳しめな口調。
指で、粒を押せば唇に挟まっていた一粒がララの口の中に消えた。
いらたずらを叱られたこの子のように、ララがしゅんとする。
「ジェラール様の意地悪」
「まだ日も高いのですから」
「では、夜に受けてくださいますの?」
「ララ殿」
脱力気味のジェラールの声だった。
くすりと、からかいすぎたかと言わんばかりにララが伸びをする。




