第五十一話
「したたかですね……しかし残念ながら私ではララ殿の出世にはお手伝いできかねます。地道にこつこつ、参りましょう」
「はい、ベルゼブブの使徒達に切り取られた縄張りをどんどん取り返して参りますわ。今居座っている方々は、足腰立たなくなるまで搾り取って差し上げますことよ」
ララが妖蛇の媚笑で舌なめずりをする。
可憐な少女の外見だが、その内面はやはり修羅場を潜り抜けた淫魔である。
「ほ、ほどほどにお願いしますよ。抗争を激化させるためにメルルナ殿を助けたわけではありませんから」
「大丈夫ですわ、ジェラール様。地獄のような極楽で骨抜きにするというのが、わたくし達アスモデウスの使徒の戦いですから。悪魔を信奉する七派で最も穏健と言っても過言ではございませんもの」
「物は言いようですね……」
つんとララがする。
その仕草も男心をくすぐる芝居だろう。
すぐに柔和な面持ちに戻って、ジェラールの腕に胸を押し付けてくる。
「ねぇ、ジェラール様。この町にはどのくらい滞在をなさいますの?」
「まだ決まっておりません。セドリック殿に郵便をお願いしようと思っておりまして。その返事でどうなるかで、また考えるつもりです」
「でしたら、わたくし毎日ジェラール様のお世話をいたしますから。うふふ、それくらいは許してくださるでしょう? それに町を案内したり」
「はぁ、その……そうですね、町の案内などは、お願いしましょう」
「うふふ、でしたらお昼からいかがですか?」
「副導師に案内していただけるなんて、少し申し訳ないですね」
「ジェラール様も、その地位が約束されているではありませんか」
「いえ、私はアスモデウスの使徒ではありませんので……」
「来てくださればよろしいのに」
童女のような純真をたたえたつぶらな眼差しで見てくるララに、ついジェラールも罪悪感を覚えそうになる。
それに首を振れば、ララが仕掛けた罠に獲物がかからなかったとばかりに鼻を鳴らして身を翻す。
「ではお昼に。まるで恋人のように、たぁっぷり町をご案内いたしますわ」
心から楽しみにしている。
そう顔に滲ませた、年相応の笑顔でララが去って行った。




