第四十八話
きっぱりと拒絶してから、ジェラールはアスモデウスの護符をセドリックへと掲げて見せる。
「セドリック殿、お願いしたいことがあります」
「なんなりと」
「フォルセウス様が現在どの辺りまで捜査の手を伸ばしているか教えていただけますか。それと、私の風評がどうなっているか。まぁ、指名手配くらいされてそうですが」
「かしこまりました。こちらでも、聖ミカエルの山で騒ぎが起きてすぐに情報を仕入れ続けておりますので、ご説明しましょう」
セドリックが食堂を出て、すぐに地図を手に戻って来る。
この町を中心にして、聖ミカエルの山や他の悪魔教の目ぼしい拠点が記された地図だ。
「現在、各地で赤天派とベルゼブブの使徒達と小競り合いが起きています。メルルナ様の捜索の網が、お互いに絡んで戦闘が起きているようです」
赤天派としては、聖ミカエルの山を虚仮にされた形だ。
フォルセウスもジェラールやメルルナに監禁の事実を暴露されるとまずい。
早々にジェラールとメルルナを捕らえるなり斬るなりしたいだろう。
それをユーグが邪魔しているのかと、ジェラールは思案する。
それにしては、セドリックの言い回しに気になるところがある。
「ユーグ殿も、メルルナ殿を探しているのですか?」
「そうです。なにせ導師ユーグは、」
セドリックが何かを言いかけて、メルルナの視線に気づく。
「……そうです、メルルナ様を浜で助けてくださったようですが、アスモデウスの使徒として付け入る隙を見せるわけには参りません。メルルナ様の帰還は、徹底して秘匿しますのでどうかジェラール殿もご協力ください」
セドリックが、地図に三つの印を刻んでいく。
印の隣には、日付が添えられる。
「この印が、フォルセウスと導師ユーグが小競り合いをした場所になります」
「この町とは逆方向ですね」
つまり、ふたりはメルルナの位置にあたりもついていないのだろう。
安心したようにジェラールが呟く。
「赤天派もベルゼブブの使徒も、ある程度はアスモデウスの使徒の拠点を把握しています。ひとつひとつ、つぶしている状況です。この町は秘匿性が最も高い拠点のひとつです。まず向こうのあたりにはついていないでしょう」
「どのくらいでここに来るでしょう」
「……二週間といったところでしょうか」
「一週間後、わたくしが滞らせていた儀式やララの昇進を行ってから町を発ちますわ」
「一週間」
フォルセウスの憤怒の形相を思い浮かべれば、それでは遅い気がする。
「三年も留守にしておりましたから。どうしても各方面の情報の整理と、各方面への指示に使いたい時間ですわ。これでも削っておりますのよ」
それを察したらしいメルルナが、断固として言う。
「あ、一週間後の儀式は、わたくしの帰還を祝う催しでもありますこと、ジェラールくんも参加してくださいましね」
「んな!?」
どう考えても乱交になるはずのそれに、ジェラールが辞退しようとするが、
「男として、返礼も受け取れぬ狭量ですの? わたくしのメンツをないがしろになさりたいのならな、どうぞ断ってくださっても構いませんけれども?」
寂しそうな流し目をするのだからジェラールも黙ってしまった。




