第四十七話
きっぱりと言うジェラールに、メルルナがくすくすと笑う。
「ジェラールくんをアスモデウスの使徒に迎えた時、副導師待遇に致します、ということですわ」
「そもそも私は男ですよ。メルルナ殿の流派に、副導師待遇なんて」
アスモデウスの使徒の流派は、男系と女系があった。
これは使える性技の違いと言ってもいい。
メルルナの流派は言うに及ばず、女系だ。
なのでメルルナの下では、副導師への出世も導師の継承も女性になるのが普通だ。
ちなみにセドリックの導師補佐という役職は執事のようもので、導師への出世はできない。
「別の国で過去に例がないわけではない」
「ララも副導師に昇格をいたしますから、ふたりがわたくしの後の両輪となってくださると心強いですわぁ」
「ララ殿が? 若すぎませんか?」
「今回のようなことがありましたから、早いうちからララには奥義を仕込んでゆこうと決めましたの。うふふ、この構想はまだあの娘には秘密にしておいてくださいましね?」
これにはジェラールも驚いた。
実質、ララを次の導師として指名しているようなものだ。
「その修行としてぇ、ベルゼブブの使徒に盗られた地区の奪還を任せようと思っていますのですけれども。過酷な任務になるかもですわぁ。ジェラールくんが支えてくださるととぉっても心強いですわねぇ」
「そんな風にララ殿を人質に取るのやめてくださいよ」
メルルナの変化球過ぎる脅しに、ジェラールも脱力してしまう。
「まぁ副導師の地位は、将来の約束ということで。現状で、ジェラール殿にはこちらの護符をお贈りいたしましょう」
セドリックが下女に合図をすると、奥から小ぶりな木箱を運んできた。
開くと中には、銀の枠に古代の文字が複雑に刻まれ、柘榴石や真珠が散りばめられた護符があった。
「アスモデウスの護符ですか」
アスモデウスの導師の権威を貸し与える象徴であり、これを見せれば各地のアスモデウスの使徒達がジェラールに従うであろう代物だ。
ううむとジェラールが難しい顔をする。
ベルフェゴールの使徒としての過去を償うための巡礼の旅の途中、今度はアスモデウスの使徒の権威を助けにするというのは、おかしな話だ。
だがフォルセウスを敵に回した手前、助勢が有難いのも事実だった。
恭しく受け取れば、懐に納めた。
「ありがとうございます。少し、力を貸していただきたいことがありますので受け取らせていただきます」
「路銀も用意しております。さらに三日三晩アスモデウス様の像の前で、美女を用意した宴会を催す準備もございますが」
「いえ、路銀だけで結構ですので」




