第四十四話
「メルルナ様!」
人目をはばかり、裏口へ向かうと下女が迎えてくれた。
彼女もまたアスモデウスの使徒だという。
というよりもこの時刻、町長の館に残っている者達は全員アスモデウスの使徒だ。
客間に案内されると、すぐに身なりの良い壮年の男が駆けつけてきた。
「メルルナ様、御無事でしたか!」
「苦労をかけましたね、セドリック」
メルルナの言葉に、セドリックと呼ばれた男は首を垂れた。
それから感極まった様子で、ジェラールの手を握ってきた。
「あなたがジェラール殿ですな。私はメルルナ様の導師補佐、セドリックという。ララからの連絡で話は把握している。よくやってくれた、本当によくやってくれた」
「いえ、私はその……成り行きでこうなったと申しますか……」
「ふふふ、控えめな性格だと報告も受けている。本当にそのようだ。それにララ、お前もよくやってくれた。今回の功は大きいぞ」
「いいえ、セドリック様。アスモデウスの使徒の窮地に、わたくしは己ができる事に力を尽くしただけですわ」
セドリックが入念に三人に言葉をかければ、下女を呼びつける。
「長旅お疲れでしょう、ジェラール殿。どうぞ今夜はゆるりとお休みください」
「こちらにお部屋をご用意しておりますわ、ジェラール様」
セドリックが鈴を鳴らせば、下女がやってきてジェラールを部屋へ案内する。
清潔で過ごしやすい部屋で、寝台も寝心地がよさそうだ。
「ありがとうございます。このような夜更けに、ご苦労様でした」
ジェラールが労い、寝台へ休もうとすると、
しゅらり
と下女が着ている衣をはだけて床に脱ぎ落した。
それをジェラールは着せ直す。
「いえ、アスモデウス式の歓迎は結構ですので」
「そんなつれないですわ、ジェラール様」
背後から何者かが熱い吐息を耳元に吹きかけてくる。
既に全裸となったララである。
「結構ですから!」
「いやん、いけずですわぁ」
ぽいぽい、とララと下女を部屋の外に放り出して、ジェラールは部屋の内側の扉を固定する。
「ふぅ、これで……」
「やっとふたりきりですわね」
振り返ると寝台の上でメルルナが横になり、色っぽく手招きしてくるのを、ジェラールは窓の外に飛び出して逃げ出した。
その先で、どんと誰かにぶつかってしまう。
「す、すみません、急いでいまして……」
「ふふふ、情熱的だね、ジェラール殿」
上半身裸になったセドリックであった。
ねっとりとそのたくましい筋肉を見せつけてくる。
「さぁ、君の夜の歓迎会を……」
ジェラールは黄天派の身ごなしで逃げた。




