第四十三話
「うふふ、共闘したこともあるのよ。あの時のジェラールくん、危機に陥ったわたくしを颯爽と助けてくれて格好良かったわ」
「やめてください。敵味方の識別をして、ただ目の前の敵を斬っていただけのことです……」
メルルナがねっとりとした媚態でジェラールにしなだれる。
体が不自由なメルルナを邪険にできず、ジェラールはしどろもどろだ。
ララが不思議そうに小首をかしげる。
「そんなジェラール様がどうして回心などを?」
「フォントノワの戦いの最中、私を使っていたベルフェゴールの導師が戦死しまして。それで、機能停止していた私を教会の方に拾っていただいたのです」
「どうして殺されなかったのかしら?」
メルルナが口をはさむ。
「その、私は一切の己の思考を放棄しておりましたから……教会の方々は、そんな私をまだ生まれてすらいない。ならばどうして裁けよう、と洗礼を施してくださり、人間として育ててくださったのです」
「あら、感動的ですわ。しかし、こうしてわたくし達を助けてしまって、どうなるのかしら?」
「……破門ですかね」
ジェラールが苦笑する。
「それでも、師は私の考えに同調してくださると思っています」
「ジェラールくん、アスモデウスの使徒はあなたを歓迎しますわよ?」
メルルナが蠱惑的に媚笑し右から胸を押し付けてくる。
「わたくしもジェラール様とご一緒にアスモデウスの使徒を盛り立てて参りたいですわ」
ララは左から胸を押し付けてくる。
それをジェラールは困惑しながら、穏やかに押しのける。
「もう、馬鹿なことをおっしゃってないでください。メルルナ殿、フォルセウス様のマナに干渉させていただきますよ。イェソドの封印さえ解けば、後は難しくありません。後三日はかかるでしょうが、どうかご辛抱を」
「よろしくお願いいたしますわね、ジェラールくん」
それからアスモデウスの使徒達の拠点へと、七日をかける。
シエクスの町という、一見するとごく普通の町である。
町の多くの者はアスモデウスの使徒で、町長もそうだという。
近くの山にアスモデウスを祀った祠もあり、そこで祭儀を行うのだ。
こういった、悪魔の使徒達の隠れ蓑になる町は各地に点在していた。
偽装のため、表向きは健全な運営で民に受け入れられ、裏向きは目をつけられても上手く立ち回るための賄賂や手管で上からも気に入られる。
ともすれば普通の町よりも上手く運営されることがままあるという。
すっかり歩けるようになったメルルナに導かれ、ジェラールとララが町長の館へと訪れたのは深夜であった。




