第二十八話
車座になれば、少年達の熱視線がジェラールに集う。
「さて、まずは何をお話ししましょうか」
「ジェラール様、ベルゼブブの使徒、ガズーとダズーは本当に山のような大きさなのですか?」
「あの兄弟ですか。そうですね、本当に大きな方々でした。このくらいかな?」
立ち上がり、背伸びしてさらに手を頭上にかざす。
己の二倍以上の高さになる少年もいて、戦慄するようなの声が漏れた。
「横にも分厚い方々で、そうですね、君が二人分並んだくらいでしたよ」
「僕が横に二人分ですか!?」
指された少年修道士が慌てた様子で、隣の少年達と顔を見合わせた。
「あの、ガズーとダズーの兄弟はどんな拳技を?」
「そうですね、私では再現しきれませんので、あくまで参考ですが……構えはこのようでした」
ジェラールが覚えている限りの構えを再現する。
「ガズー殿の方は、最初にこのように拳を繰り出してきました」
中段に拳を突き出す。
山が迫るような重厚さを演出しようとするが、ジェラールではどうにも迫力が欠けた。
「ジェラール様はどのように凌いだのですか?」
「凌いだと申しますか……」
ジェラールがベルゼブブ式拳術の構えを解けば、風に紛れる。
大天使ラファエルの身ごなしで、少年達の目にも留まらぬ速度で車座の外へ立った。
「このように躱しました」
その快速に少年達から感嘆の声が上がる。
「ガズー殿は、背後に対してこう攻めてきました」
改めてベルゼブブ式の構えに移り、鋭い肘打ちを後方へ突き出す。
ガズーの一手と比べれば、どっしりとした風格がまるで足りない。
しかしジェラールの速力がこの技を繰り出せば、稲妻のような威勢があった。
他にも、二度目に戦ったガズーの技も演武をすれば、覚えている手をすべてつまびらかにする。
その頃になれば、少年達と立ち会う形でこの技はこうすれば外せる、この技が有効だ、とゆっくりと実演しながらの議論の様相を呈いしていた。
「ジェラール様、この技は隙が大きすぎませんか?」
「実はその技は兄弟ふたりで繰り出すものでして」
ジェラールは少年修道士を三人選んで手招きする。
ふたりはベルゼブブの使徒の兄弟役、ひとりがそれを受ける役だ。
自分が受けた兄弟拳法の要旨を教えれば、受け手の少年修道士へとけしかけた。
受け手の少年修道士は、挟み撃たれててんてこまいである。
ひとりでは隙が大きすぎる技も、ふたりで使うと見事に相互が補完し合う。
見ていた少年達が兄弟拳法を破ってやろうと、わっと受け役に群がってくる。
しかしまだまだ少年修道士達では、このベルゼブブの使徒達が苦心して編み出した拳法をどうにもできない。
何人も未熟な赤天派武術を駆使するが、挟み撃ちを抜け出せない。
それをジェラールはほほえましい気持ちで見守った。




