第二十七話
日没は修道士達は聖堂に集い、礼拝式を行う時間なのである。
これを晩課と言った。
ちなみにこのおよそ三時間後、就寝前の勤行が終課となる。
鐘の音はそれらを知らせるためのものだが、同時に民草へ時刻を示す役割も負っていた。
修道院や教会は、時間を司っていたのである。
ジェラールも、客坊で祈りを奉げた。
やがて夕食が運ばれてくる。
パンや魚のスープに、葡萄酒もついてきた。
それをいただいた後、食事を下げに来たのは少年だった。
浜で下位弟子の稽古をしていた修道士だった覚えがある。。
「ジェラール様、もしよろしければ、ベルゼブブの使徒と戦った時の話をお聞かせ願いませんか?」
その眼はえらくきらきらとしており、憧れの人を見ているようだった。
ベルゼブブの導師と勇敢に戦い、力及ばずも生き延びた強い男。
と映っているのだろう。
想像されているよりも無様だったとは思い、ジェラールは苦笑してしまう。
「私は導師との戦いで、本当に手も足も出ませんでした。フォルセウス様に助けられたのですよ」
「で、ではいけませんか……」
「いえ、そういうわけでは……」
しゅんとする少年に、ジェラールも無下にできずに分かりましたと小さく頷いた。
「きっと想像なさっておいでよりも、格好悪いお話になります。しかし、もしいつかベルゼブブの使徒に出会った時に何か参考になるかもしれません。少しだけ、お話をさせていただきましょう」
「本当ですか! ありがとうございます!」
少年修道士は、心から喜んでいる様子だった。
さてではどこから話そうかと思っていると、扉越しに人の気配がいくつも。
どうぞ、と声をかけると少年修道士の同期らしい少年達がたむろしていた。
みんな、ジェラールの話を聞きたがっている様子だ。
「これは……なんだか大人数になってしまいましたね……」
そういうわけで十人ほどを連れ立って、庭の方に移動することになった。




