第二十一話
炸裂と同時に、光の柱が天へと昇った。
ただの、拳撃の余波である。
それがさながら神話の一幕と化す、導師という戦力の恐ろしさであった。
その威力は、砂浜の一部に隕星が落下したと思わせる跡を残す。
海がめくれ上がり、浜の砂が天へと遡った。
ユーグの立つ場所は、浜から人の背丈ほど低い擂鉢状の穴の中心と化していた。
「……遊びすぎたようだな」
静かに、その爆心地に立つ枯れ木のような男がつぶやく。
「いや、俺が遊びすぎたというよりも、お前が来るのが早すぎる」
紅い、紅い外套がはためいていた。
ユーグを見下ろすのは、ひとりの修道士であった。
真紅の外套を羽織り、剣を下げた偉丈夫である。
その傍らには、ジェラールがぐったりと倒れ伏している。
間一髪、この修道士が助けたのだ。
「ベルゼブブの使徒が来ているという通報があった」
それにしても早い。
やってくるまでの試算をすれば、ユーグの脳裏にララの顔が思い浮かんだ。
十中八九、通報はあのアスモデウスの使徒からのものだろう。
落ちくぼんだ目が、修道士を睨みつける。
「久しいな、フォルセウス」
フォルセウスと呼ばれた修道士は、剣を引き抜き峻厳な声を放つ。
「去れ」
「……ああ、その外套を纏っているお前と、今やりあう気はない」
ユーグが踵を返して、日常の気軽さで歩き出す。
そして、幻のような速度で駆け消えた。
ジェラールが次に目覚めたのは、寝台の上だった。
体中が痛むのを堪えながら身を起すと、見た事のない部屋だった。
「ここは……」
石造りの内装は、どうも修道院の客室のようだ。
窓の向こうに、海が見えた。
その向こうに、陸が。
「……ここは、聖ミカエルの山か」
どうも、命がつながったらしい。
大いに、安堵の息をついた。
それから、痛みをこらえながら気息を整えて瞑目する。
瞑想の中で神に祈り、マナを全身に巡らせて治癒に務めた。
随分長い間そうしていたが、ようやく痛みが和らいできたので目を開く。
すると部屋の入口で、修道士が静かにたたずんでいた。
厳めしい、体躯の良い修道士である。
「これはお待たせしてしまいました。申し訳ありません」
「よくぞ目覚めた。このまま主の御許に返ってしまう懸念もあった」
寝台の隣に、修道士が歩み寄ってジェラールの脈を取り、痛んでる個所を診た。
そしてマナを分け与えてくれた。
雄渾で熱いマナは、大いにジェラールの治癒の助けとなる。
修養されたマナの気質から、この修道士が赤天派武術の達人と知れた。
「かたじけのうございます」
「なんの、可能な限り養生を助ける。遠慮するでないぞ。四日、眠っていたのだ。食事取れそうかね?」
「……そう言われると、空いていると気づいてしまいました」
修道士が穏やかに頷くと、食事の用意をさせると言い残して去って行った。
それから、小男が麦粥を運んでくれたのでそれをすすった。




