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旅のジェラール  作者: ローリング蕎麦ット
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第十一話


 気づくと、意識が途切れていた。


 途切れた意識が浮上したのは、匂いのせいだった。


 鼻につく奇妙に甘ったるい匂いに、沈んでいた意識が急速に覚醒していく。


 はっと目を開けば、ジェラールは自身が横たわっているのに気づいた。


 座っていたはずが、寝ている。


 だが動けない。


 仰向けの体に柔らかな感触が押し付けられて心地よい。


 さらに言えば、えらく開放感がある。


 全裸になっていた。


 焦りながら眼だけで、闇の中を見渡す。


 まだ夜だ。


 だが、弱いが光はある。


 蝋燭の弱い光。


 そして全裸で絡みついてきているララと目が合った。


「おはようございます、ジェラール様」


 ジェラールの胸板に舌を這わせていたララが淫靡に笑う。


 そして、ちゅっと、目覚めの挨拶のように乳首を強く吸われて痺れるような快感が走る。


 異様に感覚が敏感になっているのをジェラールは自覚した。


 ぬらりとした蛇のように、ララが身を起す。


 一糸まとわぬ豊かな体が、蝋燭の光に照らされて艶めいていた。


 昼のあどけない表情は、微塵も残っていない。


 ジェラールの腹部に、まろやかな尻を乗せて座るその表情は淫魔のものだ。


「アヴランシュの町までの旅、とっても楽しかったですわ。本当に、本当にありがとうございました」


「ぅ……ララ殿……」


「まぁ、まだおしゃべりできますのね。常人では目覚めぬ媚香の量ですのに」


 乳房を揺らしてくすくすと笑うララが、ジェラールの股間に手を伸ばす。


 急所をもてあそぶように撫でられる、妖艶なもどかしさにうめき声が漏れた。


 だが翻弄されながらも、ジェラールは見た。


 少し反ったララの体の、下腹部。


 そこに刻まれた禍々しい刺青を。


「アスモデウス……の……使徒……」


「はい、その通りですわ」


 アスモデウスの使徒。


 アスモデウスという悪魔を信奉する邪教徒であった。


 ベルゼブブの使徒が大食を教義とするのに対し、こちらは色欲。


 教会の信者を肉欲に溺れさせて堕とす淫蕩なる邪派である。


 ただ快楽に導く性の技は言うに及ばず、その本領は吸精にあった。


 男女の交わりの中で、相手のマナやオウルを奪うのである。


 女が仕掛ける場合、男の吐精と共にそれらを絞りだし、腹の中や口で受ける技が特に有名だった。


「これまでの護衛、本当にありがとうございました。これはそのお礼ですわ。感じてくださいませ」


 ララの手が、いっそうなまめかしくなる。


 撫でられてしごかれて、ジェラールは否が応でも昂ぶりを覚えてしまう。


 心の中で神に祈りを捧げながら、どうにか精神を統一しようとする。


 散逸しているマナを、正常に巡らせんとするための集中だ。


「いやですわ、ジェラール様。わたくしに集中なさって……」


 それを妨害せんと、ララがジェラールへとおおいかぶさってくる。


 首筋へ薔薇のつぼみのような唇を這わせ、右手がつつとその胸板を指先で撫でた。


 そして舌がちろちろとじらす様に首筋を、耳元をくすぐってくるのだ。


「吸いつくしてしまっても良いのですが、それはわたくしも気が咎めますわ。ですから安心なさって、身をお任せくださいまし。わたくし精一杯ご奉仕して、快楽の天国をお見せいたしますから」


 耳元に、熱い吐息と共にララがささやいてくる。


 とろけるようなその甘い声に、ついくらりと来てしまう。


 だが本当に殺されずとも、搾り取られるだけ搾り取られた後、数日は動けないのは目に見えている。


 どうにか体を動かそうと、ジェラールは清らかな心で精神を集中させようとするが、


 むにゅ


 と押し付けられて、集中が乱される。


 男と女の戦いにおいて、男は分が悪すぎる。


 ジェラールはそう思った。


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