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「……成程。お主等に協力することで、あの化け物……破壊竜の脅威から守ってもらえるというわけか。ならばこちらとしても、是非協力させてもらいたい」

 おーく族の長と握手する。……交渉成立だ。


 一人で勝手に探索してきたきょうかから話を聞いた俺は、早速きょうかと精霊たちと共に森の奥の村へと向かった。

 俺らの登場に慌てて武器を構える見たことのない種族の者たちに対し、きょうかに魔素を提供して言語同調をしてから敵意のないこと、話し合いたいことを伝える。目に見えん者がいると何をされるかわからんので怖いと言われ、相手に姿を消しているきょうかの事情を理解してもらってから彼女にも姿を現してもらう。すると、警戒はしているが話し合いの場を提供してくれた。


 彼らはきょうかに聞いた通りいかつい顔はしていたが、かなり温厚な種族だった。彼女の言う『えろ同人』が何かは知らんが、彼らが人族やえるふ族(特徴を聞くに耳長族のことか?)の女を乱暴するような奴らには思えない。今までの『はずれ』の人族なんかよりよっぽど信頼できる関係を築けそうだと俺は思うがねぇ。

 彼らは人族に『もんすたー』と呼ばれて迫害を受け続け、今まで森の奥でひっそりと暮らしていたそうだ。人族の男は食い殺し、女を襲うと人族には言われたそうだが、実際はむしろ関わりたくない上に同族にしか欲が湧かないのに根も葉もない噂を流されたことが腹立たしいようだ。なので、人族として謝罪をしておく。

 ちなみに、きょうかの心配していた彼らの混乱は、森のさらに奥の方にある別のオーク族の村に行く道が途切れてしまっていて、行き来出来なくなったことが原因のようだ。……恐らくそこで世界が切れてしまっているんだろう。丁度いいので、このままこの世界が今置かれている状況を説明することにした。

 この世界は破壊竜に壊され、いずれは消えゆく恐れがあったこと。それをきょうかが救い、現在も存在しているということ。俺も彼女に救われた一人であること。そしてこれからも世界の存在を維持するために彼らにも協力してもらいたいという旨を伝えた。

 彼らも破壊竜を見ており、崩壊時に実際に何か(魔素だろうな)が体から抜けていく感覚を味わっているので、無事理解してもらえたようだ。食料を得るために森に入ることも採り過ぎないことを条件に許可してもらえた。よかったよかった。

 ただ、村に入る際は必ず長の許可が出るまで入るなということなので、しっかりと守っていきたい。まだ人族への恐怖がある者もいるから、ということだ。これは仕方あるまい。……もちろん既に勝手に入ったことのあるきょうかにも今後は守ってもらう。

 

 そして彼らの晩餐に誘われたのでお言葉に甘えることにした俺は、現在彼らと焚火を囲んでいた。きょうかは信用しきれないようでお腹が空いていないと断っていたが、一応参加はしておくらしい。精霊たちは……おーく族の子供と遊んでもらってんねぇ。

 ……まあ、晩餐といっても、まだ核ができていないので崩壊時の明るさのままだがな。ほんと不思議なんだよなぁこれ。核さえ出来てしまえば、ちゃーんとお天道様が出ては沈み、お月様が出てくるそうだから。それを俺に教えたきょうかさえうちゅうとは……わくせいとしての概念とは……って、ぶつぶつよくわからん事を言いながら何とも言えん顔をしていたのを今でも覚えている。

 最初におーく族の長の奥さんが渡してくれた、木を削って作ったであろう食器に入れられている汁物は、久々に俺に味というもんを思い出させてくれた。この自然な野菜の僅かな苦みや甘味よ、豆の旨味よ……なんと素晴らしいことか。そりゃ故郷の味噌汁に比べりゃ味がほとんどしないが、あの謎の塊生活を長く続けていた俺には、僅かな味さえありがたかった。思わず涙が込み上げてくる。

 ぼろぼろと泣きながら食う俺をおーく族たちは心配してくれた。普段何食べてたんだって言われたので持ってきていた謎の塊を渡し、食ってみてもらう。恐る恐る食した長は味が全くないと騒然としていた。隣から栄養はあるのに……と聞こえてきたが、無視しておこう。

「……そんなに味がしないのか?」

 他のおーく族たちが気にしているようなので、いつもぶら下げてる腰巾着に入れてた謎の塊を全て渡す。

「えぇ……これだけ食って生活してたのか……。あんたも大変だったんだな……」

「何!?これ一つが飯一食分!?……ほら、芋だ!食え食え!」

「俺のも分けてやるから……その、元気出せよ」

「あ、ありがとう……?」

 哀れに思われたのか、主食だという蒸かした芋を沢山渡されてしまった。流石に全部は食べられんので、残った分は持って帰って明日食べることにしよう。


 もちろん食うだけではなく、俺のこれまでの生活やら世界の仕組みだとかをきょうかを交えながら話したり、この世界のことやこの村について聞いたりもした。

 この村の今一番の問題は、塩が手に入らなくなってしまっていることらしい。この村では塩はとても貴重で、いくつかの同族の村を通して何とか得ているもんだそうで。……残念ながら破壊竜によってその村々とは分断されてしまい、現在は入手できなくなってしまっているが。

 塩は大事だ。味付けだけでなく、食料の保存にも使える。俺のいた故郷の村でも山を越えてわざわざ海に作りに行ってたからな……。残り少ないそうなので、次は海のある世界を繋いだ方がいいかもしれない。

 きょうかにも塩の入手には賛成してもらえたので、次は海のある世界を繋ごう。何ならこの世界の核と防壁を作り次第繋いじまおうか。

 それと、きょうかが見たという『魔女』?とやらについても聞いてみたが、人間に恐怖心を抱いてるので会わないであげて欲しい、と言われてしまった。その『魔女』も差別された口らしい。この村より奥の森に住んでるようなので、うっかり出会わないよう村より奥に行かないようにしようかねぇ。


 おーく族に見送られながら拠点へ帰る。しばらく進み、村が見えなくなった位置できょうかが瞬間移動の魔法を使い、一瞬で拠点へ戻ってきた。

「いい奴らっぽくてよかったな。流石に今回のは『当たり』だろ?」

 貰った芋を一つ渡しながら尋ねる。……俺が食ってた時にずっと見てきてたから気になってるのかと思ってな。俺がいくつか毒見してるんだから、問題ないはずだ。

「……そうね。まあ、いざという時はまた切り離せばいいし、このまま核作っちゃいましょっか」

 やっぱり気になってはいたのか、芋を受け取りかじりつくきょうか。少しして「素材の味……」と聞こえた。……たしかにできるなら醤油でもかけて食べたいなぁ。

「とりあえず、じゃがいもと人参、きゃべつ、豆なんかがあるのがあると分かったのは収穫ね」

 へえ。あの村の食べ物はきょうかにとってなじみ深いもんだったのかぁ。成程……もし種を分けてもらえたら畑用の世界を繋げて育ててもいいかもしれんな。なじみ深い食いもんがあれば嬉しいだろうし。あと、あの葉はきゃべつというのか……覚えておこう。

「ただ……魔女が何考えてるかとかわかんないから怖いかな」

「……そうだよなぁ」

 それは言えてる。おれは魔女ってのがどういうのかも知らないし。おーく族は魔女を信頼しているようなので信じたいっちゃ信じたいが……もしこちらに害をなすものなら、最悪きょうかが殺しちまうかもしれん。そうしたらおーく族とは間違いなく険悪な関係になるだろうなぁ。

「おーく族は信じてる奴みたいだし、向こうもこちらとは極力接触しようとはしてこないだろうから、気にしすぎなくてもいい、と俺は思う。……まあ、なるようになるだろ」

「……あんたはちょっとのんきすぎよ。ちょっとは警戒しなさいよ?」

 今日の尻たたきは、いつもよりだいぶ優しかった。いつもより機嫌がいいからかねぇ。いつもこうならいいんだけど。いや、叩かれないのが一番いいが。

 

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