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遂に七つ目の世界が繋がったわ!早速探索に行きましょ!……と言いたいところだけど、二日間ぶっ続けで徹夜作業し続けていたヒロトは現在爆睡中。ほんとにお疲れさま!
この世界はそこまで灰化が進んでなかったから『色戻し』作業はいらないし、今すぐにでも探索出来るんだけど……やっぱり、ヒロトが目覚めるまでは待った方がいいわよね。
……そわそわ。やっぱり、気になって何にもできないわ!五分も待ててない気がするけど、好奇心くすぐる存在がすぐそばにあるのに、落ち着けるわけないじゃない!一人でも見に行きたい!
……よーし、行っちゃお!まあ、ヒロトが起きる前に帰ってきたらばれないって!あ、精霊たちはお留守番ね。ついてきちゃ駄目よ?
世界同士の繋ぎ目を通る。途端、目の前に広がるThe森!って感じの景色。空気が美味しい!……気がする。匂いは……森って感じね!(語彙力とは)
そんなに木同士の密度が高すぎるわけじゃないし、飛びながら探索してしまえば早く帰れそう。忌々しいあいつらと同じ翼も、こんな時は便利だわー。
お、あそこに鹿がいる!やったねヒロト!肉の確保が出来るよ!鳥の鳴き声もするし……あれ?急に鳴くのやめたわね。どうしたのかしら。……ま、いっか。
少し行ったところに小川も見つけたわ。魚がいるのも確認できたし、今回の世界は当たりね!
やっと拠点以外の世界が出来る~!木がいっぱいあるから木材も沢山確保できるし、木の実が成ってる木もあるから食材も採れる!最高ね!毒の有り無しはこの世界の核さえ作ってしまえば判るし!
あれ?これ木苺かな?可愛い~!……ちょっとぐらい食べてもいいわよね?
あー美味しかった!あの場所は忘れないようにしなくっちゃ!ふふ、将来栽培するのもいいかもね!いつかスイーツ作れるぐらいの余裕の持てる世界に出来るよう、頑張らなくっちゃ!ケーキとか食べたいし!パフェとかシュークリームも……ふふふ。やる気出て来たわ~。
……にしても、ひっろいわね―この森。簡単に迷いそうだわ。あたしは魔法使えばさくっと帰れるけど、ヒロト一人で動き回らせるのは危ないかも。霧も出てきたし……。
ん?何この匂い……魔素?微かに火の魔素の匂いがする。こんな霧が出てきてる場所に火の魔素って、なーんかおかしいわね。……まさかモンスター、とか!?ひゅー!ファンタジーぽくなってきた!わくわくするじゃん!火を出すモンスターって何がいるっけ?まっさかドラゴンとか言わないわよね?
……あれ、これ道?レンガっぽいわね、これ。文明の気配を感じるわ。イヤーな予感。村がありましたー、とかやめてよね。
念のため、このまま道沿いに行ってみましょっか。右か左か……よし、まずは右からね。
はい、フラグ建て乙。右は川に続いてるだけだったから戻って左に行ってみたら……見事に村があったわー。レンガとか木材とかを駆使して作られた家々が並ぶ規模の小さめの村。まさにファンタジーに出てくる小さな村って感じ。
まーた敵対されたらどうしよ……いや、まだわからないわ。廃村の可能性も……うわぁ。どう見ても人間には見えない奴らがいるぅー。
豚のような顔に鋭い牙、尖った耳に緑っぽい肌……こいつら、オークってやつかしら。よくエロ同人に出てくるっていうあいつら。でも、ちゃんと服を着こんでるわ。ブーツっぽいのも履いてるし。よくあるオークのイラストみたいにあそことかだけ隠してるわけじゃないのねー。文明レベル結構高めっぽい?知性もありそう。
それにしても、やけに慌てている様子。何かあったのかしら?皆一つの家に入っていってる。集会所か何かかな?それに、この家から例の火の魔素の気配がする。確実に、この家の中に何かいる。
……透明化してるからばれないだろうし、入ってみましょ。
中はよくあるファンタジーの村の家って感じ。家具がほとんどないのは集会所だからかしら?
広い部屋の中に集まったオーク(仮)たち。にしても、でっかいわねー。平均身長一九〇ぐらいはあるんじゃないかしら?
こいつら、何か話し合ってるんだけど言葉が全く分からない。ちなみに、ぶひぶひではない、普通に外国語喋ってる感じ。一応言語同調の魔法はあるけど、ヒロト置いてきちゃってて無属性魔素でブーストできないから効果出るまで結構かかるし、もっても一時間ぐらいだからなぁ……今回は使わなくていいかな。見て帰るだけだし。
ただ、あたしたちの拠点に気づいて話し合ってる……とかじゃないよね?だとしたらすっごい面倒だわ。もう『はずれ』は嫌ー。……最悪、村がある辺りだけ切り離しちゃったら駄目かしら……。
「――!」
突然女の子っぽい声がしたかなーと思ったら、オーク(仮)たち黙っちゃった。女の子声はそのまま何か言い続けてて、それをオーク(仮)たちが真剣に聞いてるって感じ。何?もしかして、この村のボスかしら?オーク(?)たちがデカすぎて見えない……えーい!魔法で瞬間移動しちゃえ!
移動した先すぐそこにいたのは……
「魔女?」
黒のローブにいかにもな黒い帽子、薬草っぽいにおい、そして強く感じる火の魔素の気配。思った答えをうっかり口にした途端、視線が刺さる。見えてないはずだけど、見られてる。ヤバイ。ばれた臭い。
咄嗟に瞬間移動して拠点に戻る。やばいやばいやばい。早くヒロトに相談しなくっちゃ!……あ。
「……とりあえず、この森の中に何かが住んでて、お前さんの存在がばれたのは分かった。……で、だ。何故一人で見に行った?」
うわー。ヒロトさん怒ってらっしゃる―!激おこ!……そりゃあそうだ。ヒロト、探索するのを滅茶苦茶楽しみにしてたっぽいから、抜け駆けされたら当然怒るよねー。
帰ったらいつの間にか起きてたヒロトに捕まり、精霊たちに逃げ道を塞がれ、姿現して正座させられ尋問タイム。諦めて全て話し、現在に至る。
「わくわくが収まりませんでした!ごめんって!」
こんな時は素直に謝るに限る。反省はしているが、後悔はしてない。……うわー。すっごいため息!幸せ逃げますぜ。
「……あのなー。お前さんがいくら強いからって何がいるかわからんとこに一人で行くんじゃない!予想外のことが起こったらどうするつもりだったんだ。のんきに寝ていた俺が悪いが、精霊たちだけでも連れて行けよ。帰ってくるまでずっと心配してたんだからな!」
……予想外。滅茶苦茶心配されてた。むしろ自分が悪いとか思われてた。置いてった精霊たちも『怒り』『安堵』『心配』などの念を送ってきてる。……慣れない優しさ。つい照れちゃって顔を見てられなくなり、何となく地面に視線を向ける。
「ずっと独りで生きてたのかもしれんが、今は俺らがいるんだ。……少しは頼れよ」
肩に置かれた手。顔を上げると、真剣な顔のヒロトと目が合う。本気で心配してくれてたんだなぁ……。
「……ごめんなさい」
今度はしっかり謝る。
「ん」
差し出された手をとり、立ち上が……れなかった。あ、足が痺れ……。