にせ救世主
そこには、エメラルドグリーン色のドレスを着た令嬢が立っていた。
きりっとつりあがった瞳で、腕組みをしていた。
「あなたたち、こんな争いをして恥ずかしくないの? ……ほら、ごらんなさい。町の人たちも
あきれてらっしゃるわよ。 放っておいてあげなさいよ、そんなの。」
見ると、町の人たちが見物にたかっていたが、急に自分たちに話題を振られ、大急ぎで解散しようとしていた。
ピンクたちはその様子を見て、たちまち顔を紅潮させた。
特に、町の人からしたらよく分からないことを叫んでいた門番たちは、
「我々も、城に戻りますぞ!」
と、急いでお城に向かって走り出した。
「あの、どうもありがとう。」
ピンクは、令嬢に話しかけた。
「あら、あなたがこの国の姫なのね。……あ、ちょっと話があるのよ。 こっちに来てちょうだいな。」
令嬢は、やさしい顔をして、ピンクをお城の蔭へ連れて行った。
「ここでいいかしらね。」
令嬢はこほん、と咳払いをして、ピンクに顔を近づけてこっそりとささやいた。
「実はね、さっきいた……ああ、レッド王子というのね、その方のこと、好きになってしまったの。」
一瞬、時が止まった。
「ええーーーーーーーーーーーー!?」
ピンクは、あっけにとられていた。
「そそそ、そんな、だって、レッド王子はわたくしを好きで、わたくしはレッド王子が好きで……」
もう、何も考えられなかった。