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◆9


 クリスは急ぎではないらしく、1週間後に取りに来る約束をして帰っていった。そこからミレーユのまじないの勉強は始まった。




 まじないとは、魔力を持つ薬草を調合しそこに魔力を加えることで完成する。魔法が使える人にはほぼ不要だが、魔法が使えない人でも使用できる為流通していた。そんな訳で今回のように魔法が使える相手に使うのはレアケースだ。


話していた感じだとクリスは腕の良い魔法使いっぽかったので、そんなクリスがうまくいかなかった相手をまじないでも探せるのか疑問だが、師匠に習い基本のまじないを作っていく。





「今回はまず基本的なまじないを作る。カネラ草をベースとして調合し、探したい相手のゆかりの物に直接かける。そうするとゆかりの物から探したい相手の魔力を感じ取り、まじないが方向を示してくれる」


今回のまじないの調合は普段作っている薬より随分簡単だった。しかしその後が難しかった。


「自分の魔力を込めすぎると薬草の魔力が打ち消されてしまう。あくまで薬草の魔力を残しつつ、自分の魔力で方向性を導いてやることが大切だ」


簡単そうに言うがなかなか難しい。自分の魔力を使うことはあっても別の魔力、それも薬草の物をコントロールするなんてことはとても細かい調整が必要だ。一般的にまじないが出来る魔法使いが女性に多いのは、そういった繊細な魔力コントロールが得意なのが女性の方が多いというのも理由の一つだ。それを涼しい顔をして平然とやってのける師匠、まじ女子力。


なかなかうまくいかず自分の魔力で薬草の魔力を打ち消すこと8回目を迎え、調合した薬草がなくなってしまった。再び薬草を調合し直そうとしたときに師匠がなにやら唸りだした。


「唸りたいのはこっちですよ・・・」

「いや、お前まじないは初めてだったよな。昔の教え子がまじないのコントロールをうまいこと例えててな・・・あー、確か女性の嗜みみたいな作業に例えてたんだよな・・・料理でもなく、掃除でもなく、洗濯でもなく・・・」

「女性の嗜み?」


女性の嗜みと言われればこちらが先に当てたい。こっちが何年女やってると思っているんだ。


「刺繍とか?」

「そんなかんじだけど、違うんだよなー。もっと二つの魔力が絡み合うその関係性を表してたんだよ」


二つの魔力というところがポイントな気がして再び連想する。料理は大体混ざり合ってしまうので、違う気がした。刺繍も違う。乗馬やダンスなんかは女性ではない。二つの魔力がバランスよくお互いに作用し、支え合い、導かれていく。


「・・・編み物?」

「おおー。それかもしれん。もうそれでいこう」


適当すぎる・・・


しかし、編み物という答えはミレーユの中でキレイに当てはまり、そこから魔力の調整イメージがすぐ湧いた。自分の魔力が薬草の魔力を導き、支え合うイメージ。自分の魔力だけが強くてはバランスが悪くなるので、同じ細さで。


そこからも何度か失敗したが、初めて三日ほど過ぎるとまじないは完成した。そこからは探索魔法を勉強したが、まじないでイメージが掴めていた為すぐに出来るようになった。











「出来上がりました?」

「はい、奥へどうぞ」

前回来たから丁度一週間後に来たクリスを奥の作業スペースに通し、閉店の看板を下げる。


実際に準備は整ったものの、微々たる調整が必要になる可能性があることとミレーユが初めてということを考慮して師匠も付き添ってくれることになったからだ。



「じゃあまず、探したい相手の持ち物を貸してください」


クリスが出したのは、白い絹の手袋だった。

昔自分もよく使っていたな…と懐かしい気持ちになる。今では作業用の軍手を使う日々だ。そのまま自分がはめたい衝動にかられつつ、それを作業台の上に置いた。


作ったまじないを手袋にふりかけつつ、持ち主に導くよう念じる。するとキラキラとした光が手袋の周りに上がった。


よし、成功だ。

あとはそのまま光が方向を示してくれるのを待つだけ。しかし、その後光に変化は訪れなかった。


「…失敗、でしょうか?」

「なんともいえんな。まじないはたしかに発動しているように見えた。魔力のバランスも問題なかった。手袋が悪かった可能性もある」


その場で師匠と様々な考察をしてみたが、まるで検討がつかない。手袋に持ち主の痕跡が少なかったという可能性をつけてみたが、クリスが持ってきた他の物でも結果は同じだった。




「一旦、まじないは中断して探索魔法の動きも見るか」

「あまり釈然としませんが、そうですね。クリスさん、お願いします」


探索魔法にもニパターンあり、まじないと同じで物から痕跡を探す方法と探索する対象をイメージして探す方法があった。痕跡で上手くいかなかった場合、イメージから探す方法も考慮しクリスには相手の姿絵を持ってきてもらっていた。



「これです」

そこにはミレーユの姿絵があった。


えっ、ええええええええええええ?!


「少しお待ちください、ちょっと師匠に事前に相談したいことがあるんでした」


そうクリスに言い残すと少し離れた部屋に師匠を無理矢理連れて行った。


「師匠、まじないが消えた理由がわかりました」

「なんだ?」

「探していた人物、私でした。あの、姿絵も私です」

「は?馬鹿野郎。こんな絶世の美女とお前を一緒にすんじゃねーよ豚」

「ちょっと!!!!!師匠!!!わたしは呪いさえ解ければ細くてかわいいって言ってたでしょ!!!!ほら!!!言った通りだったでしょ!!!!」

「お前こそ呪いを解いてから言え!全然ちげえし面影もねぇ・・・・と思ったが、わりかし面影はあるかもな。今の格好じゃ全然似てねーけど。がはは」

「笑ってんじゃないわよ!!!」


猫の着ぐるみ姿を見ながら爆笑する師匠に殺意を覚える。

でも今はそれどころじゃない。クリスの探し人が自分だったのだ。クリスが悪い人とは思っていないが、一体誰が探しているのか。最後は誰からも引き止められたしなかったが、これでも一国の姫だったのだ。誘拐等から暗殺の可能性も考慮して自分の正体は出来るだけ明かしたくない。


「とりあえず、お前には探索不能の呪いもかけてある。着ぐるみを着ている間は呪いが無効になるようにしてあったが、それを解いておこう。これで次の探索魔法を行なっても失敗すんだろ」

「ありがとうございます!」


その後クリスの元に戻り、計画通り失敗した。

さりげなく誰が探しているのか聞いたがうまくにごされ、その日は帰って行った。もしかしたら次はうまくいくかもしれないからと、姿絵を置いて行ったまま。




大分久しぶりの更新になってしまいましたが、またじわじわ更新頑張っていきたいと思っています。

よろしくお願いします。

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