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久々投稿です。
誰がミレーユを探しているのかははっきりとしていないが、今時点でいいことがひとつ。
「ふふふふふふふふふ」
「気持ち悪いな」
気持ち悪いと言われたっていい!
なんてったって、本当に偶然だけど私の姿絵が手に入ったんだから!
正直自分の昔の姿を思い出すのが難しくなってきていたので魔法を姿を変えることに不安を覚えていた。大きさ変化の魔法だってどこをどう変化させたらいいか漠然としたイメージしか湧かず、うまくいかなかった。しかしここにきてお手本が出てきたのだ。試しで腕のみ大きさを変えてみたが、最初はうまくいかなかったものの姿絵を見ながら微調整したところ姿絵通りに変化した。
「腕だけ細くてすっげぇ気味悪いから早く全身やれ」
あまりに上機嫌だったので師匠の罵倒すらどうでもよかった。その後は顔から首、肩、背中、腹と降りていき、最終的に全身のサイズを変えることに成功した。
「すごい進歩だわ」
「まあ、戻ったのは大枠だけだがな。頑張ったな」
師匠が珍しく褒めてくれた。ただ、師匠の言う通り顔と体型までしか治せていない。他にもニキビやらソバカスやらまつげの長さやら地味に呪われてて元の顔とは形容詞難かった。
そして何より問題なのは、呪い防止の着ぐるみを着ないと魔力がほとんど使えないことだ。いくら姿を魔法で戻しても着ぐるみを着てたんじゃ意味がない。
一番優先するべきは魔力を取り戻すことだということがわかった。
「お前の魔力は封印されているというより、誰かに奪取されて最低限しか残っていない状況が続いているということがわかった。着ぐるみを着ている間はそれをある程度妨害できるが、奪取されている呪いの元をどうにかしないとずっと着ぐるみ生活だな」
「いやよ…身体の肉も着ぐるみも本当に暑いんだから。それに私の魔力が奪われてるなんて、本当に腹ただしいわ…絶対許さないんだから」
「どうやらこの呪いが一番凝っているらしい。お前を呪った犯人はあらゆる呪いをかけて誤魔化しているが、実際お前の魔力が目当てだったんだろうな」
「そういえば私の魔力は質も量もいいって先生も褒めていたわ…犯人は城にいた人かしら」
呪われた後の自分への態度で城の人たちへの愛想は尽きていたが、自分の妹姫のことを思い浮かべて不安にかられる。自分には劣るものの、妹も魔力が強い方だった。私から奪取出来なくなったら妹が狙われる可能性がある。
城のことなんて忘れて、呪いを解いたら静かに偽名で生きていこうと思っていたのに、妹の不安そうな顔が頭から離れなかった。
魔力を奪う呪いは私の私物に髪の毛を括り付けて私自身と媒介を繋げて魔力を流しているのではないかと師匠は読んでいるようだった。ますます城の中の者に呪われた可能性が高まる。その媒介さえ破壊出来れば魔力を奪われることはなくなる。
しかし城に簡単に戻る訳にもいかないし、術者の検討もついていない状況では媒介がどこにあるかなんて全くわからなかった。
前進したと思ったら後退した現状に落ち込みながら店番をしていると、ずっと作業部屋にこもっていた師匠がふらっと出てきた。
「ほら、着ぐるみ脱げ」
「ちょっと、師匠、セクハラですよ」
「うるせえデブ。黙ってぬげ」
「はいはい、どうせ欲情も出来ない豚野郎ですよ」
別に理由を教えてくれたら素直に脱ぐのに、この師匠は本当に乙女心をわかっていない。タンクトップとショートパンツというかなり露出は多い格好ではあるが、師匠なら何も気にならないので素直に着ぐるみを脱ぐ。すると師匠に急に左腕を掴まれた。
「太いな…」
「わかってるわよ!そんなことを言いたかったの?!」
「うるせーうるせー。はい、終了」
「あら、ブレスレット?」
離された腕には赤い石のついたシルバーのブレスレットがぶらさがっていた。急なことに頭が回らず師匠の顔を見たが、師匠は私の反対側を向いていて表情は伺えなかった。
「……着ぐるみが暑いというところまで気が回らなくて悪かったな。同等の効果を持つブレスレットだ。これなら涼しいだろ」
「し、ししょおおおおおおおおおおお!!!」
いつも憎たらしい師匠が、滅多にデレない師匠が、私のために作ってくれたものが嬉しくて師匠に突進した。普段なら絶対避ける師匠が「うげ」と嫌な声をあげながらも避けないでそこにいてくれた。その優しさが染みて涙が出そうになった。
自室で改めて先程もらったブレスレットをつけた状態の自分の姿を見る。やっと、やっと本来の自分の姿に戻れた。呪い無効化のブレスレットのおかげだ。ブレスレット自体の面積が狭い分、一粒一粒に手間と魔力を込めてくれたとわかる。おかげで効果もばっちりだ。こううまくいってしまうと呪いも封じられているので姿を変える魔法の習得をわざわざしなくても…とも思ったが、別の問題があることを思い出した。身分も高いし呪われている相手もわからないこの状況で素の自分を出すこと自体が危険すぎる。どこまでの変化が必要かわからないが、出来る限り早めに習得していく必要がありそうだ。




