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あくまとりっく
それは、突然現れました。いいえ、ずっとそこにあったけれども、突然人の目に触れるようになりました。
「ずっとあったよ?」
「えー、私には何も見えないよー」
見える人、見えない人それぞれありましたが、それは確かにそこにありました。黒かったり白かったり見え方はそれぞれ、街はずれにぽつんと、とても大きな御屋敷です。辺りには霧が立ち込め、コウモリの羽ばたく音や何かの話す声が聞こえてきます。その館はすぐに人々の話題になり、館に赴く人がふえました。
そんなある日のこと、館の周りに集まる人たちに声が聞こえてきました。
「いやいやようこそ。悪魔の館へ。どうぞ、中へお入り下さいまし」
その声に、恐る恐る人々が大きな扉の前まで行くと、ひとりでに軋む音をさせながら、ゆっくりと扉が開かれました。