異世界にダンジョンができた理由
本文にはネットスラング多数。草(w)も生えます。
そういった文章が嫌いな方は回れ右で。
「死ねやぁ! 良い異世界人は死んだ異世界人だけだ!!」
「殺せ! 仇討だ!!」
「1階は制圧完了! 食糧庫と宝物庫を発見、すべて回収します!!」
「2階、ファッキン国王発見しました! 他王族ごと確保完了!!」
「よーし、全隊城から撤収! 仕上げに入るぞ!!」
「「「「応!!」」」」
異世界なう。
MMOをやっていたら、うちのギルドならびにレイドギルドがまとめて異世界転移した。その数、実に200人強。
どっかの国の、辺境っぽい所にきたらしい。
みんなMMO時代の能力を持っていたからわりとイージーモード。外見もそれに準ずる感じで。ホームシックな子は多かったけどね、大勢仲間がいたから何とかなった。
細々とやっていたつもりだったが、この世界では非常識の連続だったらしい。かなり目立った。そして国に目を付けられた。
国に雇われた連中に新人用ギルドの、低レベル組の何人かが拉致されたので取り返しに行ったら、性的な意味で食われていた。しかも一発で大当たり。面と向かって責めてみたけど奴らには悪い事をした自覚も無く、むしろ取り返しに来た俺達を悪党呼ばわり。
取り返しに行った攻略ギルドとPKK&CPKギルドのメンバー全員ブチ切れた。
怒りに任せて王城に報復戦。←今ここ。
命令した国王並びに大物貴族全員を縄でつなぎ、王城前の広場に連行してみた。
「言い訳はするかい?」
「ふざけるな! 余を誰だと思っている!!」
「敗戦国の責任者だろ、JK」
「負け犬www」
「性犯罪者の元締め」
「死ねよカス」
処刑前にこちらを煽らせるために言い訳させてみると、分かりやすいリアクション。自爆乙。
そしてブチ切れたままのみんなは火に油を注がれヒートアップ。
「よーし。じゃあ、処刑だな!」
「串刺し! ケツからぶっといの、ぶっ刺してやろうぜ!!」
「賛成! 晒してやろうぜ!」
「反省したなら減刑もあったけどね。フォロー不可。自爆乙」
「うん、これなら良心も痛まねーわ」
「待て! 貴様ら、自分が何をしているのか――ぐほっ!?」
「分かっててやってるに決まってるだろ、馬鹿か貴様? ああすまん。馬鹿だったな。死んで治せ」
処刑目前であわてる国王。今更遅い。蹴りであごを破壊し、喋れないようにする。
そうして哀れ国王は処刑され、広場で晒し者にされる。
もっとも、その後ろにあった王城跡地の方がインパクトはあったと思うけど。大規模破壊魔法で更地にしたし。
集団心理って怖いね!!
俺が全力で扇動したのは内緒だけどwww
国一つ攻め滅ぼしたら、戦国時代になったでゴザル。
パワーバランスが崩壊すると国家間の関係って一気に荒れるね。まるで重大なバグの見つかった公式掲示板だ。パないわ。
巻き込まれるのが嫌な、無関係(笑)な俺達は拠点を移すことにした。
「海が良い! 海の近く! 海産物だけじゃなくて、塩の問題があるだろ! 絶対に海の近くが良いって!」
「山の近くじゃないと鉱山とか見つからないんじゃね? 鉄は必要だろ?」
「平地が無いと農業ができない! 農業無しで飯の確保とか、どこの無理ゲーだよ!? 四季があるか分からないけど、いつも獲物が取れるとか限らない! それに栄養バランス考えろ!」
「段々畑とかあるし。山の近くの方がメリットがでかい」
「ふざけんな、成功する確率の低いギャンブルに付き合えるか! うまくいくとは限らねーんだぞ!」
この世界の国家とは距離を置く事にした俺達。適当な魔境――人の手の届かない場所――に拠点を構えた。
海があり、山々に囲まれ、ちょっとは平地(ただし森)もある場所だ。空を飛べる連中を総動員して探した、みんなの意見を反映した絶好の場所だ。
森を切り拓き、建物や畑を作り、生産ギルド主導で生活基盤を整えていく。
モンスターはいたけど、弱いので問題なし。
俺達に平穏が訪れた。
そう思っていたが。
「もう嗅ぎつかれたか」
「まー、あんだけ目立てばしょうがねーし」
「んじゃ、迎え撃つか。情報を持ち帰られないように全滅させるぞ」
「索敵に出て来る。部隊を分割してないかの確認と、後方に物資の集積地があればそこを強襲してくる」
「じゃー、俺達は防衛陣地の構築かな。木材使うよー」
「こっちは森の精霊にお願いしてくる」
俺達に目を付けた連中が攻めてきたのだ。
完全武装の騎士っぽい連中が1000ぐらい?
モンスターを蹴散らしながら俺達の拠点を目指してるのを警戒網担当のサモナーが見付けた。
「止まれ! この先は我らの領土だ! 勝手に踏み入ろうとするなら相応の報いを受けてもらう!」
「何を言う! この世界は普く我らの領土! 我らが土地に住まう以上、貴様らも我が国の法に従ってもらう!!」
念のために警告をして帰るように促すけど、相手はこっちの話を聞こうとはしない。
とりあえず人が住んでいるところがあって、どの国の支配下にも無いから占領しようといった所かな?
ま、理由なんてどうでもいいけど。
俺は、警告したぞ?
っと、危ないな。矢か。
「よっし。交渉決裂な。グッバイ異世界人、とこしえに」
しばらく問答していたが、相手が弓で先制攻撃を仕掛けてきた。
会話が成立しないモンスター相手なら容赦は要らんな。
というか舐められまくりだな、俺。全プレイヤーでも最硬峰なタンク職相手にこの程度の一撃とか。
交渉役なんだし、生存能力の高い死に難い奴が出て来るとか考えないのかね?
森っていうのは集団戦に向かず、正確無比な遠距離攻撃を持った奴の独壇場だ。
俺が挑発スキルで敵の注目を集め続け、仲間が駆逐する。駆除するの方が正しいか? どっちでもいいな。結果は同じだ。攻めてきた連中の後ろに控えていた2000人ごと殲滅した。
俺達は今後の事を考える事にした。
ぶっちゃけちまえば「あれだけ目立ったんだし、隠れるとか無理だろ」って結論。
でも、また逃げるとか拠点を移すとかは嫌だ。
じゃあどうしようかって所で、「ダンジョンを作ろう」って事になった。
ここに来るまでに全自動で迎撃するシステムがあればいいんじゃねーの? そんな発想だ。
「迷宮作ろうぜ、迷宮!!」
「モンスター、集めないとねー」
「殺し目的だし、クリアできねぇ難易度目指そうぜ! ヒャッハー、落とし穴さん最強伝説の始まりだ!!」
「外周はアンデッドエリアがいいかな? ネクロマンシーできる人って何人いたっけ?」
「ドラゴン拉致ろうぜ、ドラゴン! 財宝で雇えばいいんだよ!」
「石工はデスマーチじゃね?」
「……生産職は全員デスマーチだろ? やだよ、めんどい」
「海はどーすんだよ、海!」
ちょっと揉めたけど、防衛陣地で戦闘区域を指定し、居住エリアに侵入されない設備の必要性はみんな分かっていた。その為、文句は出たけど全員一丸となってダンジョンを作る事になった。
「よーし! こっちの通路は塞いだぞ!」
「アンデッドエリアの毒沼設置完了! あとは自動で発生すると思う!」
「ドラゴンと交渉してきたよー。王城にあった財宝の半分で何とかなった」
「ゴブリンとオーク、繁殖できそう。あとはクッコロ姫騎士探してくる!」
「姫騎士w いらねーだろwww つか、居るのか?」
「何を言う、必要だ!! いなければ育てる!!」
「育てた娘をw オークに与えるとかwww 神か貴様」
一部gdgdしていたが、基本仲間なので仲良く作業は進む。
俺達に一瞬でダンジョンを作るようなスキルは無い。なので全部手作りだ!
哀しいけど、これ、ダンジョン運営ゲームじゃないのよねぇ。
それから数百年後。
とある異世界には誰も踏破出来ないダンジョンの伝説があった。
傲慢な振る舞いをした王国を滅ぼし姿を消した神人の伝説と共に語られるそのダンジョンは、周辺国家を飲み込み人類の生存権を大きく脅かした。
万を超えるゴブリンやオークの王国、死者の王が住まう現世に現れた黄泉の国、ドラゴンが守護する天空の領域、大渦と大津波龍の島などが語られているが、その奥に何があるかを知る者はいない。
噂では死者を生き返らせる秘薬や不滅の魔王を滅ぼす聖剣、あらゆる攻撃を跳ね返す大楯、国を亡ぼすほどの大魔法を封じた指輪などがあるという。
ただその禁忌に踏み入ろうとした者が現れると報復とも言われるモンスターの大攻勢が発生するため、確かめようという愚者は国が必死に処分している。だからそれらは夢見る者の願望やただの噂話にすぎない。
ある歴史家はこんなことを言った。
「もしも滅びた王国が彼らを厚遇していれば、いや、人として扱っていれば、一体世界はどうなっていただろうか?」
その答えは、誰も知らない。
良識の足りない、自制しない日本人(+チート)だとこんなこともあるんじゃないかな、という話です。
ついでに、ダンジョンポイントによる購入とかできなくても人海戦術でダンジョンは作れそうな気がするというネタを突っ込んでみました。