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第二十二話 賊

今回は何とか納得いくようにできたと思います。



ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ


私は今、山賊『鬼の髭』の根城で、大虐殺を行っています。

これは戦闘ではありません、私達が一方的に『鬼の髭』を潰しているのです。

そこに、悲鳴もなければ、物音もしません。

なぜこんな大虐殺ともいえる行為をしているのか?

それは、この山賊団が『女の敵』だからです。



ギルドで緊急クエストを受けた私達は、賊が一番隠れている可能性の高い国境線沿いを真貴ちゃんの探知魔法を使いながら、移動していました。

すると、すぐに100人を越える人が集まっている場所が見つかり、私達がその場所に行くと、そこには少し大きめの洞窟がありました。

明らかに怪しいです。

私達はまず、前と同じように『クリアライト』と『サイレントムーブ』を使って洞窟内を調査します。

そして見つかったのが、人の核である『生結晶』が無数に散らばる嫌な匂いのする部屋でした。

『生結晶』は死ぬ時の感情や生前の行いによって色が変わります。

この部屋にある『生結晶』はどれも酷く濁っていました。

ここで何があったのか、容易に想像がつきます。




私達は彼女たちを連れ、一度洞窟を出ることにました。

洞窟を出ると、ティアちゃんが口を押えながら、目に涙を溜めて、少し離れたところにある、木の元に走っていきます

私も、正直そうしたいですが、我慢します。


「全員消します」


しばらくして、ティアちゃんが戻ってきた後、私は静かにそう言います。

真貴ちゃんもティアちゃんも無言で頷きました。




私はまず、『シュメルツミスト』という、毒と麻痺と眠りの混ざった霧を出す魔法で洞窟を満たします。

次に、ティアちゃんが『イマニティブースト』という状態異常系がほぼ効かなくなる魔法を使います。

最後に、私達は眠り、痙攣し、苦しんでいる『鬼の髭』を片っ端から消していきます。



数十分ほどでその作業も終わり、私達は先ほどの惨状になっている場所へと行きます。


「真貴ちゃん、ティアちゃん、私ならこの『生結晶』から生き返らせることが出来ます。けど、生き返るだけです。どうしたらいいと思いますか?」


私は、震える声を押えて、二人に尋ねます。

ティアちゃんは初め、生き返るということに表情を緩めかけましたが、その意味を理解すると、また泣きそうな顔に戻ります。


「・・・・・リタ『彼女たちはこの洞窟に連れてこられると同時に眠ってしまった』のです。この洞窟は『死人の花壇』という魔物の群生地だったのです。『時空魔法』を覚えれば、そうできます」


真貴ちゃんの言う『死人の花壇』とは、動物を栄養とする、植物系の魔物で、ランクはAです。『死人の花壇』はまず、近づいてきた生き物を眠りの霧を出して眠らせ、餌とします。次に、眠った生き物の中から、力の強い個体を選び、胞子を使って操り、同族を連れてくるようにします。その時、連れてくる方法はその個体の性格によります。


たしかに、これなら何とかなるかもしれません。

多少の違和感はあるでしょうが、その辺はギルドマスターにお任せしましょう。


「真貴ちゃん『時空魔法』の使い方、教えてください」

「もちろん、いいですよ」




私は、真貴ちゃんの指導の下、半日かけて何とか『タイムリターン』という物の時間を戻す魔法を習得しました。


魔法の習得したあと、、私達は、『生結晶』を集に戻り、見落としがないよう、確認してから洞窟の外に出ます。



ドドーーーーーーーン



そして、大魔法で洞窟を破壊し、証拠を隠滅しました。

いよいよ蘇生の開始です。


まず『タイムリターン』で『生結晶』の濁りが薄くなるまで時間を戻します。

先に蘇生しないのは『タイムリターン』で時間を戻せるのは『物』だけで、『生き物』の時間は戻せないからです。

そして、いよいよ蘇生です。



「この世の生きとし生けるもの達の根源よ


我の名の元にこの世の理を覆せ


我は死神を友とするものなり


リバイブ!!」



魔法を唱えると、『生結晶』が光り輝き、人の形に戻ります。


「真貴ちゃん、お願い」


私は真貴ちゃんにお願いして、生き返った人たちの記憶を微調整してもらいます。

『生結晶』の濁りが薄くなっただけでは負の感情が出る前に戻ったことしかわかりませんからね。


全員が生き返ったことを確認すると、私はある問題に気づきます。

それは、『全員裸』だったのです。


こ、これは眼福・・・じゃなくて、まずいです。

中には10に満たない幼女もいて、目が離せま・・・じゃなくて、どうしましょう?



「マッヒェンウィンドシルク」



ティアちゃんが魔法を唱えると、風の精霊の力で作られた絹の布が裸の人たちをくるんでいきます。


あぁ・・・せっかくの眼福が・・・・・違いますね、これで問題なしです。

服は元からきてなかったことにしましょう。

だから、ティアちゃん、そんな冷たい視線で見ないでください。




私達は、生き返った彼女たちが目を覚ますのを待って事情(『死者の花壇』の捏造話)を説明し、一旦ギルドに連れ帰ることにしました。


目立ちました。

ええ、それはもうこれ以上ないほど目立ちましたよ!!

布きれ一枚しか纏っていない集団が町を歩くんですからね。

そこらじゅう大騒ぎです。


私は、ティアちゃんに一足先にギルドに行って、事情の説明(嘘話)と彼女たちの入る部屋&着替えを用意してもらうよう頼みました。


ギルドに着いてからは、全部ギルドマスターに任せて、今日はもう王宮に帰って寝ることにしました。

さすがにもう精神的にも、肉体的にも限界です。

私達はその日、三人で抱き合って眠りました。






翌日、私達は再び国境線で賊退治をすることにしました。


私は正直、賊という物をちゃんと理解してなかったのだと昨日思い知りました。

ティアちゃんの国の近くに賊なんて一日たりとも居させたくないです。

なので、一人残らず倒すつもりです。


私達は真貴ちゃんの『探知魔法』を使って見つけた属の根城を片っ端から潰していきます。

その中には『竜の足』、『蜥蜴の羽』『闇の目』『死者の足音』などの大規模な賊もありましたが、規模など私達の前では関係ありません。

中には昨日の『鬼の髭』と同じようなことをしている賊もいましたが、私達も昨日と同じ方法で救出&蘇生をしました。

(生きている人の記憶操作は真貴ちゃんが行いました)

立て続けに救出してくる私達を疑惑の目で見る人たちもいましたが、そこはギルドマスターが黙らせてくれました。

感謝です。




救出が必要な人がいる可能性がある、それなりの規模の賊を一通り潰し、小規模の賊討伐に移った時、ちょっとした問題が起きました。

それは、犯罪行為ではあるけど、殺すほどでもないような、微妙な集団がいくつかあったからです。

たとえば、馬車を襲撃はしたものの、ビビッて何もできず返り討ちにあい、助けを求めてくる賊とか、盗んだものを見せ合って自慢してるだけの賊(というより泥棒の集会)とかなかには集まったはいいものの、人を襲う勇気がなくてその辺の魔物や木の実を食べて生活していた、なんちゃって賊までいました。


話を聞いてみると、最近この辺りでは作物の不作が続いており、賊(?)に身を落とすしかなかった人が大半のようです。

つまり、小規模の賊とは、食べていけなくなった農民の人たちの集まりだったわけです。

とりあえず、そんな人達には、治療&餓死しないだけの食料を分け与え(魔物討伐で手に入れた肉などです)処分は保留にして、農地を見に行くことにしました。

もちろん、中には本物の悪人もいたので、その人たちには消えてもらいましたけどね。




農地に着くと、状態は思ったよりもひどい物でした。

土地は痩せ、作物の出来は悪く、水も不足しています。

農家の人たちも痩せている人が多く、使っている農具の粗末なものが多いです。


「わ、私、お父様にお話ししてきます!!」


そんな農地を目の当たりにしたティアちゃんが王宮に向かって全力で走っていきました。

私と真貴ちゃんもすぐに追いかけます。


(真貴ちゃん真貴ちゃん、三圃式・・・じゃない四圃式農法?でしたっけ、クローバーとかカブとか麦?を交代で植える農業方法。これを使えば生産率が上がって豊かになるって聞いたことがあるけど、真貴ちゃん詳しく知らないですか?)


はい、前世の私がおバカであることが露見しました。

あの有名な四圃式農法?を何となくでしか知らないとか・・・真貴ちゃんいなかったら詰んでますね。


(あ~~リタ、四圃式農法はこの世界では無意味です)

(え?)


無意味?

どういうことでしょう?


(そもそも、この世界に微生物なんていません。というか、小さな虫すらいませんよ?それに、死亡したら光になって消滅するので、微生物がいたとしても生きていけません)


そういえば、蚊とか蠅を見たことないですね。

50cmくらいある蜂なら魔物としてみたことありますけど。


(それじゃぁ、この世界の植物ってどうやって育つんですか?)

(精霊が育てます)


精霊・・・なんというか、宗教の話みたいですね。


Q、世界はどうやってできた?

A,神様が作った。


Q、風ってどうして吹くの?

A,精霊が起こしているからです。


Q、夏や冬があるのはなぜ?

A,火の精霊と水の精霊がケンカしてるからです。


というような感じでしょうか?

・・・・・自分の常識がゲシュタルト崩壊してます。


(そもそも、精霊とは魔力が意思を持ったものです。といっても下級精霊は意思というより方向性があるだけ・・・熱くなるとか風になるとか一つの思考しかありません。中級でしゃべれる猿、上級以上はその精霊しだいで、人並みから超越者まで色々です。そうそう、前にリタに話した『新しい魔力』とは精霊を含んでいる魔力のことで、『古い魔力』とは精霊を含んでいない魔力のことです)


なんだか、わかったようなわからないような・・・。

精霊が虫や微生物の代わりをしているって認識でいいのかな?


(つまり、簡単に言えば農地のにいる精霊を活性化させれば、時間をかけることなく、面倒な方法もいらずに豊かな農地になるということです)


なるほど・・・・・と、真貴ちゃんと話している間に王宮に付きましたね。

ティアちゃんは何処でしょうか?




真貴ちゃんに『探知魔法』でティアちゃんの居場所を探してもらうと、どうやら執務室にいるようでした。


「・・・・・ティアの言うとおり、農地が大変なのは把握しておる」

「なら、なぜ早く対策をしないのですか!!」


中からティアちゃんの大声が聞こえてきます。


私は軽く扉を叩き、中に入ります。

返事も待たずに入った私を、中にいた宰相さんが睨みました。


おっと、これは予想外です。

王様とティアちゃんだけかと思っていました。


「対策をしてないわけではないのだ、農民の税も半分にまで下げているし、『豊穣の儀』も最近はできるだけ行っておる。じゃが、それでも追い付かないのだ。原因もわからぬし、どうにかできるものなら、儂から頼みたいものだ」

「お父様・・・・・すいませんでした」


王様の苦悶の表情を見たティアちゃんは、顔を伏せて謝りました。


(真貴ちゃん、『豊穣の儀』ってなんですか?)

(宮廷魔術師など数十人で魔力を大地などに流す儀式です。これを行うことで精霊が活性化して土地が豊かになります・・・・・もっとも、精霊のことまでは分からないと思いますので『豊穣の儀』を行えば、作物が良く育つようになる。程度の認識ですけどね)


なるほど、ただのお祭りとかではないのですね。


「いや、よいのだ。農地の状態を把握しながら、解決できない儂が悪いのだ」

「そんな、お父様はちゃんと考えておられます」

「それでもだ。ティア、王とは、そういうものなのだ」

「お待ちください、それならば、我々家臣一同も同罪です。王の苦悩を知りながら、良い案も浮かばないのですから・・・」

「宰相さん・・・・・」


王様のティアちゃんの会話に、宰相さんが思わず口を挟んでいました。


み、見直しました。

この宰相さん、本当に国のこと考えています。

この前は、真貴ちゃんと一緒に脅かしてすいませんでした。


部屋の中の空気が暗くなっています。


(真貴ちゃん、何かいい方法はありませんか?)

(方法も何も、リタが『豊穣の儀』を行えばすべて解決しますよ?)

(え?)

(『豊穣の儀』が追いつかない、つまり宮廷魔術師たちでは魔力の供給が足りないんです。なら、もっと多くの魔力を流し込めばいいんです。リタは宮廷魔術師が数十人どころか、数万人いても相手にならないくらいの魔力を持っていますからね)


それなら話は早いですね。


「ティアちゃん、解決策がわかりました」

「なに!!?」

「本当か!!」


私がそういうと、ティアちゃんより先に王様と宰相さんが反応しました。

ティアちゃんはタイミングを逃したようで、口を開けたままになっています。


「して、リタ殿その方法とは?」

「私は幸い多くの魔力を持っています。なので私が『豊穣の儀』を行えば解決します」


私の言葉に、王様と宰相さんの顔が落胆に変わります。

信じられないのは分かりますが、そんな顔しなくてもいいのに・・・。


「さすがリタです!!早速やりましょう!!」


そんな中で、ティアちゃんだけが顔を輝かせていました。


「まぁよいか、儀式を行う・・・それもリタ殿だけなら費用もほとんどかからん。やるだけやってみよ。宰相、手配を頼むぞ」

「はぁ、わかりました。王のご命令ならば用意いたします」


宰相さんはため息を吐くと、私をまた睨んでから部屋を出ていきました。


宰相さんが忙しいのもわかるし、睨みたくなるのもわかりますが、勘弁してください。ちゃんと農地を豊かにしますから。






翌日、準備が整ったので、さっそく『豊穣の儀』を行う農地へと行きました。

ため息を吐いていたわりには、宰相さんの仕事が速いです。

面倒事をさっさと終わらせたかっただけかもしれませんけどね。




農民の人たちが見守る中、まずは教会からきている司祭様が祝詞を挙げます。


長いから眠くなったのは内緒です。

さすがに農民の人たちの前で欠伸はできませんしね。


そして、ついに私が魔力を大地に流す番です。

真貴ちゃんによれば『魔力循環』のように魔力を操り、循環させずに外に流れ出すようにすればいいとのことなので、やり方は何となくわかります。


私は一呼吸した後、全力で魔力を大地に流します。


(リタ!!ストップです!!)


と、流し始めた瞬間、真貴ちゃんからストップがかかりました。


(流しすぎです)


どういうことでしょう?

まだほとんど魔力を流していません。

まぁ、流し始めた瞬間にストップをかけられたので当たり前ですけど。


しかし、周りを見てみると、その変化は一目瞭然でした。

そこには越えた、みずみずしい大地が広がり、青々と茂る作物(?)が育っていたのです。

なぜ作物?と疑問形なのかというと、普通のものより3倍~5倍くらい大きいのです。


「き、奇跡だ・・・・・ま、祭りを行う!!すぐに王に許可を取ってまいれ!!」


司祭様がそう叫び、教会の人たちが宮殿に向かって走っていきます。


「あぁ、あなた様はきっと神が使わした使徒に違いない」


司祭様が膝をついて私を祈り始めます。


や、やめてください。

そんなキラキラした目で私を拝まないでください!!






こうして、ローラント王国の農地の問題はひとまず解決し、小規模の賊をやっていた人たちはギルドに行って素直に謝ったことで、少し増税を課せられるだけで済みました。

しかし、農地の急激な魔力枯渇の原因はなんなのでしょう?

真貴ちゃんによると、確かに魔力が減っていく速度が通常よりも早いそうです。

このままではいずれ、農地がまたやせ細ってしまうことになります。

もっとも、真貴ちゃんが「これだけ精霊が活性化していれば5年くらいは平気です」と言っていたので、今は喜んでおきましょう。










そうそう、真貴ちゃんが「リタは神様から『力』も貰っているので、神様の使徒と言われても間違いではないです」と言っていました。




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