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第十六話 ティアちゃんの家に行くには山賊が邪魔です

勧誘騒動から3か月ほど経ち、2回目の試験も終わりました。

もちろん、私はまたパーフェクトでしたが、今回はティアちゃんも技術でパーフェクトを出しました。

そして、前期の授業が終わる3日ほど前のことです。


「私の家に来てくれませんか?」


私は、ティアちゃんにそう言われました。


前期が終わると、少し長い休みが設けられています。

基本的にこの時期はみんな一度里帰りをするのですが、家に帰ることを禁止されている私は、休みに入っても寮で生活するつもりでした。


そんな時だったので、私に断る理由はありません。


「良いんですか?」

「はい♪」

「なら、行ってみたいかな」

「歓迎します♪」


お泊りイベント発生です♪


え?

いつも同じ部屋にいるだろうって?

寮の部屋と女の子の家でお泊りを一緒にしてはいけません。

全然違うものです!!


さて、そうと決まればティアちゃんの家族にお土産を持って行った方がいいですね。


「ティアちゃん、お土産は学園名物『高級魔物の魔力クッキー詰め合わせ』(お値段30,000P)でいいですか?」

「いえいえ、お土産なんていりませんよ?」

「そうですか?ご両親にあいさつするなら、あった方がよくないですか?」

「大丈夫ですよ。それにしても、あいさつ・・・ですか、リタが言うと違う意味に聞こえてしまいます」


・・・・・?

なにやら、急にティアちゃんの顔が赤くなりました。

どうしたんでしょう?


「い、いえ、なんでもないです。気にしないでください」


よくわかりませんが、ティアちゃんがそういうのなら、気にしないことにします。


こうして、私(と真貴ちゃん)は学園が休みの間、ティアちゃんのお家へ行くことになりました。

今から楽しみです。


そうそう、私が高級なお菓子をお土産にしようとしたことを疑問に思った人はいませんか?

実はですね、ついに私の借金が無くなったのです!!

いえ、それどころか私は今、ちょっとした小金もちです。

なぜなら、今、私の学生証には


1,352,600P


と書かれているのです。


なぜこんなにあるのかって?

毎週のように真貴ちゃん、ティアちゃんと一緒に『近くの山』で魔物を乱獲していたからです。


まぁ、学生証に入っているだけでは学園外では使えませんので、一度学生課に行ってお金に変えないといけないんですけどね。


つまり、金貨1枚と銀板3枚に銀貨52枚、後は銅版6枚ですね。

亜空間に入れておけば盗まれる心配もないので、この際全部おろしておきましょう。




「なんですか、この豪華な馬車は?」


終業式も終わり、私と真貴ちゃんはティアちゃんについて学園の門近くにある場所置き場に行きました。


・・・・・?



ティアちゃんは不思議そうな顔をしていますが、そこで私達が乗ることになっている馬車は、明らかに他の馬車より豪華で大きさも2倍くらいあります。

しかも、数十人の護衛が乗った馬車まで一緒にくるそうです。

まるで、私の実家で、両親が乗る馬車みたいです。


「ティアちゃんって大貴族のお嬢様だったりします?」


私は思わず聞いてしまいました。


「それは・・・ついてからのお楽しみです♪」


ティアちゃんはそう笑顔で言いました。




さて、馬車に揺られること数日、ついにリーン王国を出てしまいました。

ティアちゃんはどうやらリーン王国の人ではなかったようです。

まぁ、あの学園にはいろんな国から人が集まりますからね。

珍しいわけではありません。


それはいいんです。

問題はこの馬車です。

揺れない上にふかふかのお布団、メイドさんまでいます。

明らかに馬車の大きさと中の広さがあっていませんが、これは多分『亜空間魔法』が使われているのでしょう。

馬車の中だというのにいつもより快適な暮らしができています。

本当にこの馬車最高ですね。

一台くれないでしょうか?




っとそんなことを考えていた時、馬車が急に止まりました。

今までは、ゆっくりと止まってくれていたので、いつ止まったのかわからないくらいでしたが、今回は『ガタッ』となって急停止したのです。


これは、トラブルの予感がします。


私達は顔を見合わせて、外を覗いてみると、護衛の人たちと、山賊みたいな人たちが戦っていました。

しかし、状況はこちらが不利です。

なんと、山賊は50人・・・いえ、100人はいるかもしれません。

護衛の人たちも一対一なら山賊を圧倒できるだけの技量がありそうですが、多勢に無勢です。

こうしている間にも、また一人護衛の人が切られます。


これはまずいですね・・・私達も参加した方がよさそうです。


「真貴ちゃん、ティアちゃん、私達も加勢しましょう!!」

「「はい」」


二人が快く賛成してくれたので、私達も馬車から降ります。


「お、獲物が自分から出てきやがったぜ」


山賊が下品に笑いながら言います。


「お、お逃げください」


護衛の人たちが必死に私達に呼びかけます。

もちろん、私達は逃げたりしません。

それに、馬車の中で魔法の詠唱は終わらせてあります。


「アースクエイク」


私が魔法を唱えると、辺りを酷い揺れが襲い、護衛も含めたすべての人が転びます。

その隙に、私と真貴ちゃんで魔術師らしき山賊の首を魔力で切れ味を増した『レッドキャンパス』と巨大な鎌で跳ねます。

首を跳ねられた山賊は、光の泡となって消えていきます。

この世界では、人も死亡すれば、核を残して、消える運命なのです。


「ブラストシックル」


ティアちゃんがいまだに転んでいる山賊を魔法で切り飛ばします。


「っく、こいつらこら殺せ!!」


山賊のリーダーらしき人が叫びます。

次に私は『レッドキャンパス』雷魔法をかけ、触れてしびれた山賊から切り捨てます。


ティアちゃんは風の防御魔法を纏い山賊を近づかせず、遠距離から『ウィンドカッター』で確実に仕留めていきます。


そして、真貴ちゃんは静かに山賊にリーダーに近づき、首をはねました。


「ひっ」


急にリーダーの首が飛んだことで、近くにいた山賊が悲鳴を上げます。


「に、逃げろ!!こいつらやべぇ!!」


一人がそう叫ぶと、山賊達は我先にと逃げていきました。




「ヒーリング」


山賊が逃げた後、私達は護衛の人たちや、業者の人たちの手当てをします。

さいわい、だれ一人死亡した人はいませんでした・・・いえ、違いますね。

さいわい、私達がいたので死亡してしまった人はいませんでした。が正しいですね。

そうです、この時、私は真貴ちゃんの指示で『蘇生魔法』を試したのです。

もちろん、この魔法は禁術です。

こんな魔法が使えることばれたら大変なことになります。

けれど、いつ何が起こるかわかりません。

なので、私はこの魔法を習得しました。


「それにしても、嬢ちゃんたち強いなぁ、護衛が護衛対象に守られるなんて笑い話にもならねぇ」


護衛の一人がそんなことを言います。


「い、いえ、そんなことありませんよ」


ティアちゃんは顔を赤くしてオロオロしています。


「それより、あの山賊はって何なんですか?すごい人数居たんですけど」

「あぁ、あいつらは多分『残虐の悪魔』って名乗っている山賊団だな。ここから少し行ったところにある山を根城にしているらしいんだが、千人くらいいるらしい」

「せ、千人ですか?・・・国はなぜそんなになるまで放っておいたんです?」

「いや、それが、この辺りはちょうど国境でな、下手に国が介入できないんだよ。だからギルドに依頼がでたり賞金がかかったりしてるんだが・・・何せ人数が人数だからな、どうしようもないんだわ」


最悪ですね。

このまま放っておいたら取り返しのつかないことになりそうです。

それに、私達に負けたままあの山賊達が黙っているとも限りません。


(真貴ちゃん、私達なら勝てると思う?)

(ん?リタなら千人くらい余裕です。そもそも『魔力循環』してれば山賊如きの攻撃では、リタに傷つけられませんので、千でも万でも関係ないです)

(そ、そんなに私、強くなってるの?)

(リタだけじゃなくてティアもですけどね)

(なら、倒しに行こうかな・・・真貴ちゃんも手伝ってくれる?)

(いいですよ、ついでに山賊が持っているお宝も貰ってきましょう)

(あ、それ良いですね♪)




「ティアちゃん、ちょっとここ任せていい?」


私は、真貴ちゃんとの『念話』を終わらせると、ティアちゃんに声を掛けます。


「どこか行くんですか?・・・・・まさか、山賊の根城に行くわけじゃないですよね?」


さすがティアちゃん、鋭いです。


「あ~~、ちょっと春(山賊のお宝)を探しにね。ティアちゃんも来ます?」

「あ、春(お手洗い)ですか・・・・・私は良いです。行ってらっしゃい」


私が誤魔化すと、ティアちゃんは顔を赤くしてそういいました。




さて、私は真貴ちゃんの探知魔法で山賊の根城を見つけ、近くの草むらに潜んでいます。

どうやら、山賊達は大きな洞窟のような場所を根城にしているようです。


まずは、調査からです。


「クリアライト」「サイレントムーブ」


私は透明化の光魔法と消音の風魔法を使います。

実はこれ、私のオリジナルなんですよ?


私と真貴ちゃんは入口にいる山賊を素通りして、根城に侵入します。

まずは、捕まっている人がいないか探しましょう。


侵入して数分、捕まっている人がいないか探していた私達ですが、先にこの山賊団が盗んだ(奪った?)財宝を隠している場所を見つけましたので、ごっそりと亜空間に入れておきます。

これで私がお金に困ることはなくなりましたね。



それからまた数分、今度は牢屋のような場所に捕まっている人たちを発見しました。

捕まっている人たちは色々と表現できないような惨状になっています。

とりあえず、私は見張りの山賊を音もなく光に返します。


「あ・・・あなたは?」


捕まっていた人の一人が聞きます。


「私は通りすがりの『魔法使い』です」


私はとりあえずそう答えておきます。


「出口まで案内するので、ここを出ましょう」


しかし、私がそう言っても捕まっていた人たちは動きません・・・いえ、動けないようです。


「ライトヒーリング」


私は魔法で応急処置をします。

これで、動けるくらいには回復したはずです。


「クリアライト」「サイレントムーブ」「マジカルサーチアイ」


そして、捕まっていた人たちにも私と同じ魔法と魔力を見ることが出来るようにする魔法をかけます。


「これで、山賊には見つかりません。早く出ましょう」


私が魔法を使うと、少し驚いた顔をしましたが、今度は素直についてきてくれます。




それからまた数分、洞窟内は騒がしくなっていますが、私達は無事外に出ることが出来ました。

「すべてを引き付ける大いなる力よ


 我が魔力を糧として


 その力を増したまえ


 ハンドレッドグラビトン!!」


私はこの世界ではほとんど光や闇よりも使い手の少ない重力魔法を使います。



ドゴォォォォンン



激しい音を立てて洞窟はつぶれました。

もちろん、洞窟内には生存者などいるはずがありません。


後は捕まっていた人たちの方ですね。


「パーフェクトリカバリー」


私は、捕まっていた人たちに完全治癒の魔法をかけます。

死者蘇生まで使えるようになった私にはこの程度造作もありません。


「あと、これは口止め料です。山賊達は洞窟がつぶれて全滅しました。そういうことですよ?」


私はそう言って亜空間に入れておいた財宝の一部を彼らに渡します。

これで、この人たちもあとは自分でどうにかするでしょう。


私は『循環魔法』と使って、消えるように馬車まで戻りました。




私が馬車に戻ると、先ほどの轟音はなんだと騒いでいましたが、治療の方はもう終わったみたいです。


「みなさんお待たせしました。すごい音もしたみたいですし、早くここから移動しましょう」


私がそう言って馬車に乗り込むと、業者の人たちも「そ、そうだな、こんな所からはさっさと移動しよう」といってさっそく動き出しました。






「リタさん、ちょっといいですか?」


ティアちゃんがすごい笑顔で私に近づいてきます。


「な、なんでしょう?」

「わかってるでしょう?」


冷や汗が大量に出てきます。

これが勧誘が無くなった原因のティアちゃんの笑顔ですか・・・。


「え・・・えっと・・・ごめんなさい?」

「ごめんなさいじゃないですよ、私も連れて行ってほしかったです」


その後、私は寝るまで、ティアちゃんの優しく言っているのに震えが止まらない『話し合い』をしたのでした。







そうそう、なんか全滅した盗賊団『残虐の悪魔』が洞窟に潰される前、奇跡の魔法を使う『黒髪の魔法使い』が現れたそうです。

世の中そんなこともあるんですね。





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