Prologue
俺の名前は皐月 柊一
まあ、俗に言う普通の高校生ってやつだろう。
今俺は車に揺られ、生まれ故郷である木枯町に向かっている。
俺は小学三年生あたりで引っ越しをすることになり、俺の親父の親父、つまりじいさんに預けられていた。
それが突然、八年経った今、二年生への進級とともに帰ってきたと言うわけだ。
しかもなんだ、新たな家に移り住むと思えば八年前住んでいた家にまた住むらしい。
新鮮味が無いったらありゃしない。
親父がどんな仕事をしているかは知らないが、単身赴任が多く、とにかく全国各地を飛び回っている。
ちなみに母親は俺が生まれてすぐに病死したらしい。
そんな訳で新しい住居(全然記憶にないんだから新鮮味がないこともなかった)に到着し、屈強な引っ越し屋さんが俺の部屋に荷物を運んでいった。
「おい柊一、昔隣に住んでた、妃奈ちゃんて覚えてるか?」
荷物運びを手伝っていた親父が、何の気なしに聞いてきた。
「妃奈?いや、まあ何となく……」
かなりうろ覚えだが、確か隣にそんなやつがいた気がする。
「あ〜あ、妃奈ちゃんが聞いたら怒るぞぉ?昔はあんなに仲良かったのになぁ」
「んなこと言っても八年だぜ?忘却の彼方だな」
親父の鼻で笑うような声を聞き流しながら、俺はさっさと部屋に引きこもることにした。
これが俺の予想だにしなかった結果を招く序曲になろうとは、まだ知る由もなかった…………。