#2 中古車屋
車に興味がない訳ではない。
意外にも車は好きな方だ。
「いらっしゃいませ‼︎お車をお探しでしょうか?」
見れば分かるだろうと言いたい所だが、そんな事を言ったら不快にさせてしまう事くらい分かっていたので、空気を読んで突っ込まないようにした。
「冷やかしですよ。」
「いえいえ笑、冷やかし大歓迎ですよ‼︎こちらのRX-7でしょうか?」
少し苦笑いしてるように見えた。そりゃあそうだ。元気よく聞かれてるのにあんな返し方したら誰だってそうなる。
だが、この店員にはそこまで効かなかったようだ。やっぱり販売店の人達はメンタルが強い。分かんないけど。
「そうですね。」
「ありがとうございます‼︎気になった事があったらまた呼んで下さい‼︎それではごゆっくり‼︎」
こんなに暖かい人が世の中には居るのか。やっぱり世の中捨てたもんじゃ無い。そんな事を思いながらフロントガラスに貼ってある値札に目をやった。
「380万…」
思わず声に出てしまった。20年以上も前の型だ、このご時世にしては中々安い。しかしポンと出せる額かと言われたら決してそうでは無い。高校生からしたら3桁万円なんて夢のまた夢だ。
値段の事は一旦置いておいて、車の状態を見てみよう。凹みや、擦った後等がどこにも無い。修復したのか、それとも前のオーナーが大切になっていたのか、分からないけどとにかくボディの状態はかなり良い。値段の割にはかなり良い気がする。車内が見たくなって来た。当然車は閉まっているので入れない。さっきの店員を呼ぼう。
「すみませーん。」
「お客様ですか‼︎」
さっきの店員がダッシュでこっちに来た。やはり商売となれば必死になるのだろうか、そんな事より本題だ。
「内装見たいんですけど、大丈夫ですか?」
「かしこまりました‼︎少々お待ち下さい。」
と言い、店の奥へと消えてしまった。
1分程で戻って来た。鍵を取りに行ってたのだろう。
「お客様、お待たせしました‼︎」
ドアが開いた。内装も中々綺麗だ、傷も無い、ステアリングは純正、メーターも純正。Defiのブースト計が付いている、前オーナーが付けたのだろう。シートも純正、シフトノブも純正、オーディオもしっかり付いている。最後はエンジンだ。
「ボンネット開けて貰っても大丈夫ですか?」
「はい‼︎大丈夫ですよ‼︎」
ボンネットを開けて貰った。
「これは…」
驚く事に、隅々まで手入れされていて中々状態が良い。きっと、前のオーナーが大事に乗ってたに違いない。これで380万は中々レアだ。
「ご購入を検討で?」
「いえ、目に留まってしまったので。まだ免許も持ってない高校生ですし。」
店員は明らかに驚いていた。免許も無い高校生が車を見にくるなんて考えて無かっただろう。
「この車修復歴とかってあります?」
「今の所無いですね。」
「もしかして、ワンオーナー車だったりしますか?」
ワンオーナー車とは、簡単に言うと新車で買って売るまでの間1人のオーナーが所有していた車の事である。
「なるほど…」
このまま見ていると欲し過ぎて日が暮れるまでずっと立ち尽くしてしまいそうだ。
「また来ます。」
「かしこまりました‼︎その前に名刺を…」
名刺が渡された。松田 仁と書いてあった。次店に来る時は松田さんに頼ろう。
「またのご来店をお待ちしてます‼︎」
それからと言い、そこの中古車屋を通る度にRX-7を見るようになった。




