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勇者は国境を抜ける


すぐに行動を開始するべきだと判断したソラは、消えた神器の欠片についてはいったん忘れるようにし、どうやって国境門を突破するかを考える。


「正直突破しようにもあそこの警備が厳重だし、国境門は魔法で破壊しようとしたらかなり時間がかかるよな」


国境の警備となるためそこに配属されている騎士たちはどれも一級揃い。それに設備もしっかり整っている。


さらには国境門は物理的にも魔法にも多大な耐性を持っており、破壊しての突破は難しい。


「でもそれって外からの場合でしょ?今回は中からの脱出だから国境門は破壊しようとしなくていいよ。まずはソラに暴れてもらって注意を引いてもらう。そのあとにうちが警備室に侵入して門の開閉スイッチを操作。それで門は開けるからあとは外に出るだけ」


「だが二人じゃきついんじゃないか?流石に人が集まってくるだろ」


「そこでスラムに情報を流す。今から国境門付近で暴動が起きて国境門が開くってね。すると外に出たい奴やこの国に間者を潜り込ませたい奴らがこぞって動き出す。すると一つの暴動が出来上がるってわけ」


「そんなにうまくいくのか?」


まぁみてなよと言い残し、クロは準備を始める。ソラも戦うための準備をはじめるために裏町のアジトにある武器室の中から防具や武器を選び始める。


ただ勇者として突入するべきなので今回は防具はもともと身に着けていたもののままである。しかし武器がないため何かを選ぼうとする。やはり剣にするべきかなと考えていると、急に左手に重みが感じられる。


視線を向けるとそこには一振りの黒い剣が握られており、いつのまに握り締めてたんだとソラは自分で驚愕する。そして後ろからクロも驚愕した様子で声をかける。


「え、急に剣でてきたけどなにそれ?魔法?」


「いや知らないんだがこんなの。だがこの感じ・・・」


そう言ってソラは二度三度その黒い剣を振るい状態を確かめ、刀身に視線を投げかける。その視線に応えるかのように刀身が煌めくと、ソラはその剣の正体に気が付く。


「これ神器の欠片だ」


「え?ほんとに?溶けて消えてたじゃん」


「あぁそうだな。だがこの感覚はデュランダルの時と同じだ。他の武器じゃ感じられないものをこいつからは感じれる」


そう言ってソラは鞘を探し始める。すると今度は腰に突然鞘が出現し、そこに剣を納めれるようになる。


その現象を見てクロも説明できないからきっと神器の欠片のせいだろうと考え始める。


しかし今までと違ってなぜ突然その場から消えたのかがわからないクロだったが、ソラ自身もわかっていないことのため考えても仕方ないという風に考える。いずれわかるだろうと楽観的に考え、まずは目の前の目的に集中しようと考える。


準備を整えた二人はそのままアジトから出発し、クロはスラムに情報を流しに行き、ソラはそのまま国境門付近まで行き、クロからの合図を待つことにするのだった。


































国境門を警備する門番は今日やってくる人間たちがいつもと違うことに気が付き始める。普段だったらいないであろう浮浪者や旅人が増え始めたのだ。それも急速にその数を増やしていき、行列を作り始める。


明らかに異常な光景のため、門番は今日の警備隊長である人物に報告をしに行こうとすると、信じられないものを目にする。


その人物は白いマントを靡かせ、白銀の鎧で体を覆っており、風に靡く白銀の髪と蒼い瞳は昨今人気の勇者物語に出てくる人物像と一致していた。

そして王都より回されてきた手配書の顔とも一致していた。”元”勇者ソラ=カミナリ。一級指名手配犯。辺境の都市を壊滅させるために魔王と手を組み、近衛騎士団と勇者の仲間を裏切った罪で手配されていた。


最初は何の冗談かと思っていたが王様による証明印が押されていたため、それは事実として国境警備隊の間に広まっていた。


そしてその指名手配の人物が目の前に立ってこちらをじっと見つめていた。そして周りの人たちもソラの存在に気付き始め喧騒が大きくなり始めると同時に、ソラの腰から黒い剣が抜き放たれる。


「無天流【斬天(ざんてん)】」


その一撃により門番の意識は途絶える。なぜならばその一閃はすさまじい剣圧を生じさせ、警備隊の詰め所を斬り裂き、崩壊させ、あたりに悲鳴を巻き起こす。


それと同時に浮浪者たちによる暴動が起き、警備隊の人間が鎮圧にあたり始める。その動きにまぎれるようにしてソラがゆっくりと国境門のほうに向けて歩き始める。


国境警備隊の騎士たちがすぐさまソラの前に現れ、各々が武器を構えて声を荒げてソラを恫喝する。


「動くな!それ以上進めばこちらとしても容赦はせんぞ!」


「・・・迷いが見えるな。上からの報告かなにかで俺が悪さをしたってことが出回ってるんだろ?止めないとこの場所で悪いことするぞ?」


「ふざけるなよ”元”勇者が!!俺たちはみんなあんたを信じてたんだ!!それなのに金に目が眩んで俺たちを裏切ったんだ!!許せるわけがねぇだろ!!」


そう言って一人の騎士がソラに斬りかかる。素早い動きではあったが、直線的な動きだったため黒い剣でその一撃が受け止められる。つばぜり合いに持ち込んだ騎士は思いの丈をソラにぶつける。


「俺たちはあんたに憧れ!!ともに戦いたいと思い!!日々訓練してきたんだ!!なのにこんな風にあんたを捕えさせるような真似をさせやがって!!」


「そんな風に言ってくれるのに俺のことは信頼してくれないのか?回ってきた情報が嘘だとは思わないのか?」


「王様の署名と証明のための玉璽がされたものを疑うわけないだろ!!あんたは俺たちを裏切ったんだ!!だからここで捕まえる!!」


その言葉とともにいくつもの魔法がソラ目掛けて飛んでくる。鍔迫り合いをしていた騎士はすぐさま後ろに後退することで、その魔法の雨から難を逃れる。


ソラは飛んでくる魔法の一つ一つを冷静に対処していく。矢のような物がいくつも飛来してきたため、自身に当たりそうなものだけすべて斬りおとし、防ぎきる。そして今度はこちらの番だと言わんばかりに光の球体がいくつも背後に出現し、国境門前に展開していた騎士たちに殺到する。


それらの攻撃に対して騎士たちは障壁魔法を張ることでその魔法を防ぐが、ソラは魔法を放つと同時に地面を蹴って騎士たちに接近する。接近してくるソラに対して近接戦闘が得意な騎士が前に出て、ソラの行く手を阻む。


しかしソラの剣の速度は残像しか見えず、立ちふさがった騎士たちはいつの間にか自身の身体が斬られていた。遅れて血が噴き出すが、それに合わせて回復魔法が施される。


それを見て誰が回復魔法を使っているのか周囲を探すソラだったが、それらしき人物は見えない。どうやら屋内か、それともうまいこと姿を眩ませているのだろう。


ならばといわんばかりに剣速をさらに上げ、周囲を囲んでいる騎士たちを剣技のみで圧倒していく。


「くそ!?なんだよこいつ!?」


「俺たちの剣が全く当たらない!?」


「ちっ!盾部隊を前に出せ!魔法で動きを止めるぞ!!」


指揮官らしき人物の声とともに大盾を構えた騎士が現れ、ソラの前に立ちふさがる。しかしソラは大盾の騎士に怯むことなく突貫し、その盾を足場にして奥へ踏み込む。


盾持ちの後ろにはソラに魔法をかけようとしていた魔導士が控えており、急に目の前に現れたソラに為すすべもなく斬り捨てられていく。


全員を始末はできなかったが、すでに八人ほどの魔導士が血を流し、地面に倒れていた。命までは奪えてはいないが意識はなく、継戦は不可能だろうと判断したソラは、黒剣に魔力を込める。


「無天流【斬天(ざんてん)】」


凄まじい一撃が騎士たちに襲い掛かる。横薙ぎに振るわれたその一閃は直撃した騎士たちを吹き飛ばし、そのまま戦闘不能にする。


ただソラはかなり手加減をしており、もし本気でやっていたら彼らの胴体は真っ二つになっていたはずである。今回は騒ぎを大きくして、この街から脱出するためなので国境警備隊の騎士には極力死者を出さないように配慮しているのだ。


そうしていると急に頭上から一人の騎士が舞い降りる。その男は地面に着地すると同時に力強く蹴りだし、ソラ目掛けて駆ける。そのまま手に持った大斧で殴りかかるようにして上段から振り下ろす。


振り下ろされた一撃を回避するも、その一撃は地面を砕き、大地を少し揺らす。その人物はここ南の国境警備の統括をしている男──ローガンであった。すでに齢60を超えてはいるが、昔は第三騎士団で副団長をしていた実績を持つ男である。


ローガンは無言で魔力を身体に纏わせ、身体強化をさらに施すとソラに斬りかかる。ソラも応戦して斬り返すが、ローガンの一撃一撃はとても重いもので、徐々にではあるが押され始める。


そしてローガンは手に込める力をあげて、技を放つ。


「武技【大車輪】!!」


自身の頭上で大斧を振り回し、竜巻を発生させるローガン。凄まじい暴風がソラの身体を空中へと吹き飛ばす。吹き飛んだソラに地上で待機していた魔導士部隊が魔法を一斉に放つ。


空中で逃げ場のないソラは【聖なる領域(ホーリーフィールド)】を展開し、それらすべての魔法を防ぎきる。しかしソラの高さまでいつの間にか飛び上がったローガンがその【聖なる領域(ホーリーフィールド)】を斬り裂いていしまう。


そのまま蹴りをソラに叩き込み、思いっきり地面に叩きつけたローガンは、自身の大斧に魔力を集中させてそのままソラ目掛けて突貫しつつ振り下ろす。


「武技【強撃(インパクト)】!!」


「無天流【撃天(げきてん)】!!」


同系統の技同士がぶつかり合い、拮抗状態となる。しかし上空から重力に従って落ちてきたローガンのほうが有利なのか、ソラは地面に膝をつく。


苦しそうな顔をしつつも、ソラは魔力を込めて新しく魔法を発動させる。


「【光の剣(リヒト・シュヴェルト)】!!」


突如光属性の刀身が出現し、発生時の衝撃でローガンの大斧が一瞬だけ浮く。その瞬間を狙い、剣を振りぬいたソラは、ローガンをそのまま吹き飛ばす。


そして吹き飛んだローガン目掛けて【光の剣(リヒト・シュヴェルト)】の刀身をさらに伸ばし、そのまま突きとして放つ。


放たれた【光の剣(リヒト・シュヴェルト)】の突きに大斧を盾のようにすることで受け止めたローガンだったが、そのまま国境門横の壁に激突する。


光の剣(リヒト・シュヴェルト)】を光の粒子に変えたソラは、その粒子を操り光の弾丸の雨を騎士たちの頭上から降らせる。


無事な騎士たちはなおも果敢にソラに挑みかかるが、それら全てを完璧に捌ききる。そこへ傷だらけのローガンが突撃してくる。


「さっきのでのびとけよ爺さん」


「あの程度じゃただのマッサージにしかならんわ!!」


そのまま二人は凄まじい剣戟を繰り広げはじめる。互いに一歩も引かないその剣戟に圧倒される騎士たちだったが、仕事を忘れることなく囲いを作っていく。


ローガンは一度剣戟をやめて後方に下がり、それに合わせて槍を持った騎士たちが一斉にソラに向かって槍を突き出す。


それを上空に飛ぶことで回避したソラだったが、そうなることを見越していたローガンは上段からの振り下ろしをソラに叩き込む。


しかしそれを見越していたソラはなんと空中でその一撃を回避し、逆にローガンに蹴りを叩き込み吹き飛ばす。追撃とばかりにソラは手をローガンのほうに向ける。


「【光撃(リヒト・シュトラール)】」


光の光線が放たれる。放たれた光はローガンを飲み込み、その背後の家を何軒も貫いてしまう。ローガンの姿が消えた途端、今度は国境門がひとりでに開き始める。


それをみてソラはクロがしっかりと仕事をこなしたことを認識し、そのまま国境門の外へ向けて走り出す。


さらには周囲で暴動を起こしていた一団も一斉に外を目指し始め、大規模な集団が国境の外目掛けて走り出した。


だがソラや他の集団が外へ出ようとすると、なんと外側から騎士団の騎馬隊がこちら目掛けて突撃してくる。ソラはすぐさま回避行動をとり、その突撃から逃れるが、後ろから追ってきていた一団は騎馬隊の突進に飲み込まれる。


騎士団の騎馬隊の突進は通常とは異なり、魔力を部隊全体に纏わせることにより、貫通力を上げ、さらには敵からの魔法を防ぐこともできる突進を作り上げていた。


生半可な魔法では止められないのがこの王国騎士団の騎馬隊突進である。ソラはそれをすぐさま確認して回避行動に移ったのだ。もし回避していなかったらソラであっても危なかったであろう。


騎馬隊はその勢いのまま反転し、ソラ目掛けて突撃しようとするが、ソラは一瞬で大規模な魔法を作り上げる。


「悪いが俺はここから逃げたいんだ。邪魔しないでくれ。【天罰の光(ネメシス)】」


はるか上空より光の柱が幾つも落とされる。それらは騎馬隊に降り注ぎ、陣形を崩し、落馬させる。


一瞬で騎馬隊を無力化したソラは追撃とばかりに手をかざすが、そこに先ほど吹き飛ばしたローガンが現れ、大斧を振り下ろしてくる。慌てて防御のために黒剣で受け止めたソラだったが、ローガンはその状態から強撃(インパクト)を使用し、ソラを鎮めようとする。


だがソラは【強撃(インパクト)】のタイミングで無天流【流天(るてん)】という相手の技を受け流す技を繰り出すことで、ローガンの攻撃を地面へとぶつける。その衝撃で地面は叩き割れ、騎馬隊の進行すらも阻んでしまう。


騎馬隊はなんとか陣形を立て直そうとしてはいたが、先ほどのローガンの一撃でまたもや陣形を大きく崩してしまう。そこへソラは迷うことなく魔法を発動させる。


光の球(スフィア)】という魔法で込められた魔力属性の球体を創り出し、それを相手に向けて放つものである。それを100個ほど作り上げたソラは、そのまま周囲に向けて解き放ち、場をさらに混乱させる。


しかしローガンはそれら全てを叩き落としながらソラに突っ込んでいく。ソラはそれに驚きながらも横から降りぬかれた一撃をしゃがんでかわし、右手の黒剣で突きを放とうとする。


しかしローガンは刀身を踏むことでソラの動きを止め、逆にふりぬいた大斧をそのまま引き戻そうとする。しかしソラは黒剣を手放し、拳を握り締めて振りぬく。


「無天流【撃天(げきてん)】」


右拳に凄まじい魔力が収束し、それがローガンの腹に突き刺さる。突き刺さると同時に凄まじい衝撃がローガンに襲いかかり、その身体を吹き飛ばして家屋にぶつかる。


崩れ落ちる家屋の瓦礫に飲み込まれながらローガンの意識もまた消えていく。


ソラはローガンを戦闘不能に追い込むと地面に突き刺さった黒剣を取ろうと手を伸ばす。しかしそれを阻むように魔法がいくつも飛んできたため、仕方なく後ろに跳躍してそれらをかわす。


黒剣は地面に刺さったままだが回収ができないと判断すると、あとで回収しようと考える。だが武器がまだ欲しいと考え、周りの騎士に視線を向けて武器を強奪しようと考える。


そうして考えているとまたもやソラの手に重みを感じる。右手に視線を向ければいつの間にか黒剣が握られており、地面に突き刺さっていた黒剣は黒い粒子となって消えていく。


ソラは手に持った黒剣を振るうことで襲いかかってきた騎士を切り伏せると、そのまま国境門の外に向けて走り出す。


「まずいぞ!勇者が外に出るぞ!!」


「止めろ!!国境の外に逃げられたら事だぞ!!」


騎士たちが必死にソラに襲いかかる。しかしソラはそれらをたった一つの魔法で吹き飛ばしてしまう。


光の鞭がソラの周囲を舞い、襲いかかってきた騎士たちを全て弾き飛ばしてしまう。そのまま光の鞭は剣へと姿を変え、ローガンが倒れている家屋に向けて放たれる。


そしてローガンは既に立ち上がろうとしているところではあったが、飛んできた剣に反応できずに右肩を貫かれそのまま倒れる。


ソラは障害を排除したと判断し、今まで使ってこなかった魔法を初めて人前で解禁する。


「じゃあな王国。また会おう」


ソラの全身から電撃が迸ると同時にソラの姿がその場から掻き消えてしまう。


この日死者は出なかったものの負傷者が100名にもなる勇者逃亡事件が発生し、勇者の名声は失墜することとなる。


この事実はすぐさま王国全土に広がり、そして勇者の犯した愚行は世界各国へと広まることとなり、“失墜の勇者”として世界的に指名手配されることとなる。


世界的に指名手配となったことで王国側はすぐ捕まえれると予想していたが、その予想に反して勇者の情報は国境門以降パタリと途切れることとなる。

































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