表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

4 今、置かれている世界は

しばらく状況説明が続きます。10話くらいから動き出す予定です。

 俺はグスタフ・ヴァン・マッケンゼンとしての記憶もしっかりとあるが、グスタフの精神を俺がのっとったのではなく、生まれたときから成平の精神があって、成長するとともにその精神が表に出てきたと感じ取れる。



 マッケンゼン家は、サード・アリストクラート。五段階ある貴族階級で、ファースト・アリストクラートが王家につながる貴族、セカンド・アリストクラートが上級貴族、サード・アリストクラートは中級貴族、フォース・アリストクラートとフィフス・アリストクラートは下級貴族である。


 上位貴族は貴族全体の数%。中級貴族は2~3割、そして、3分の2以上は下級貴族という完全なピラミッド型だ。


 俺はマッケンゼン家の長男。3歳上の姉のハンナ、1歳上の姉のアグネタ、7歳下の弟のマルティンがいる。姉たちは美人系だし、弟はやんちゃだが素直でかわいい。父親のショーンは大柄でいかにも騎士という雰囲気だ。母親のベアトリスは細身で中肉中背、おだやかでとてもすてきな人だ。母親は金髪で薄青い目だが、他は父親も含め、金髪とも栗毛ともいえない色で目は濃い青色だ。


 東郷成平としての意識を自覚してから、俺は精力的に情報を求めていった。両親やマッケンゼン家の従者たちから聞いた話、家にある本、数か月後にはこの世界のおおまかなことがわかってきた。

 

 住んでいる国の名はロマーニャ王国。エウレプの東部に位置する。北は大平原、南西にかけてはなだらかな山地が広がり、南東は大きな海となっている。

 家にある地球儀を見るとマッケンゼン領は地球でのヨーロッパにあたるエウレプの東端にあるロマーニャ王国の一番東端。地球のルーマニアかモルドバ辺りだと思われる。

 つまり、エウレプの辺境の地と言っていい。


 地球儀。そう、地球儀があるのだ。もっとも地球儀とは言わず、アトラン儀という。

 アトラン儀に描かれている大陸を見る限り、完全に地球だ。俺は地球から疑似地球ともいえるアトランへと精神を跳ばされてきたのだ。


 とは言っても球形のアトラン儀に描かれているのは、ヨーロッパ・アフリカからアジアにかけてのだいたい北緯20度から50度くらいのところだけ。南北アメリカ大陸はほぼ全部描かれている。

 当然、アフリカ大陸も南北アメリカ大陸も元の世界と名称が違う。

 それ以外の地域はある理由から人間が生存していない可能性が高い。



 南下して行くと大河がある。ドナウ川だ。もっとも、こちらではドゥナ川というが。


 マッケンゼン領は交易のため、商人もよく行き来する。そのため、様々な情報も入ってくる。エウレプの片田舎ながら、意外とアトラン世界の情報も入ってくるのだ。



 さて、南北アメリカ大陸も描かれている通り、ユングランドとは交流が盛んにおこなわれている。そして、南北アメリカ大陸は植民地とはなっていない。強力な魔法使いによって守られており、エウレプの国々よりもむしろ強大な国家であるらしい。


 地球で言う南北アメリカ大陸の存在は500年ほど前には知られていた。その時の到達者の名前をとってロロ大陸と呼ばれている。

 

 アフリカ大陸はアフリ大陸。全く同じ要素で生み出された人類だけに、地球と同じ発想になるらしい。でも、アフリの語源となったラテン語っぽい言葉ってないんだよな。どうしてだろう。


 ロロ大陸とは、地球のノルウェーからデンマーク辺りにあるノルスマンニア王国が定期的に交流を行っている。

 ただし、アトラン洋(地球の大西洋)には、数は少ないが強大な魔力を持つ海洋生物がいて、航路は地球で言うアイスランドやグリーンランド沿いを通る必要があるとのことだ。

 冬季は交易できないが、この交易によって南北ロロ大陸の情報はかなり伝わってきているようだ。


 北ロロ大陸には強大な魔力を持つシャーマンが治める連合部族国がいくつも存在する。


 南ロロ大陸は沿岸部や山間部にいくつもの国が存在するらしいがエウレプとの直接の交易はされていない。生きたまま心臓をえぐり取り魔力を奪い取るという儀式をやっているような王がいる国がいくつも存在し、交易に行ったエウレプの人々が何人も犠牲になってからは、北ロロ大陸の国を通してしかつながりはなくなったそうだ。


でも、南北ロロ大陸原産の食べ物はしっかりと伝わってきており、我が家の食卓にも、トマトやジャガイモ、とうもろこしなどが普通に出てくる。名称は地名などと一緒で地球と違うがそれはいいだろう。


 よって、地球と食事は割と似通っており、東郷成平の記憶がよみがえってきてからも違和感はたいして感じないで済んでいる。


日常の食事はパン、トマトをベースに大豆、じゃがいもや人参、とうもろこしを入れたスープだ。味付けは塩、にんにく、牛などの骨、とうがらし、オールスパイス、ハーブなどを使い、さまざまな味が楽しめるが、残念なことに胡椒などスパイスがあまり手に入らない。

赤道付近には人類は住めず、地球でのインドへは陸地を通る交易ルートしかないからだ。


 アトラン儀があることからわかるように、アトランが丸いこと、そして地動説は周知のものとなっている。そして、北極と南極を結ぶ距離の2万分の1を1キール、つまり1キロメートルと定めている。1キールの1000分の1が1メール。1メールの100分の1が1セッチ。つまり、1センチメートルだ。このように長さや重さの単位の呼び方は違うが、実質同じ計量だ。


 まあ、物理的な大きさは全く同じなので当たり前といえば当たり前か。


 言葉や地名も、地球に類似している。古代から交流が盛んなせいか、地球での言語が混ざりあいエウレプではほぼ共通の言葉が話される。最も、エウレプの東側と西側では、青森弁と鹿児島弁の差に近いくらいイントネーションや細かい語句が違うようだが、文字や文法は全く一緒なので意思疎通に問題はないらしい。

 


 でも、大きく違うのが点がいくつかある。

 

 文明としては、元の世界の基準から考えると非常に複雑だ。それはこの世界に魔法があるからだ。物理法則は一緒なのになぜ魔法が使える?

 

 同じ地球、同じ人類でありながら、なぜ魔法が使えるのか。魔法を使うエネルギーはいったいどこから?と考えたとき、一心が言っていたダークエネルギーやダークマターが最も疑わしいと感じた。


 もしかしたら、元の世界でも何世紀に一人くらい、ダークエネルギーを扱うことができる人が現れ、それが伝説のように伝えられたのではないか。だから、人々は魔法をイメージすることができたのではないか。そんなふうに考えてしまう。


 魔法が使えるようになるのは第二次性徴期になってから。男子なら精通、女子なら初潮の後に、自分の使える魔法が本能的にわかってきて、それをトレーニングで磨くことでより強い魔法になっていく。

 男性は15歳ごろから30代にかけて、女性は20代から40代初めにかけて最も強い力で使えるようで、特に女性は子どもを産んだ後が最も力が増大する。そして、突然変異的なものもあるが、基本的には魔力の強さは遺伝の関係が強い。


 人口の1%に満たない貴族はほぼ全員が魔法を使える。

 同じく人口の1%ほどの聖職者は全員が魔法が使えるというよりも、魔法が使える者しか聖職者にはなれない。

 その他の身分の者たちでも魔法が使える者はいて、微力な魔法が使える者まで含めると人口の10%くらい。つまり、10人に1人は何らかの魔法が使えるわけだ。その中でも強い魔法が使えることが新たな貴族、騎士や貴族の高位従者になれる大きな要因となっており、俺のメイドのベスやケイトがそれに当てはまる。


 文明としては近世ヨーロッパくらいだが、政治体制や社会制度は中世ヨーロッパに近い。魔法が使えるせいで、テクノロジーの発達が元の世界と比べるとかなり歪になっている。

 

 そして、地球での中世ヨーロッパにおけるカトリック教会のようなものはない。「神の力」というべき現象が魔法で人々が表現できるせいか、中世の人々のように「見えない神の力」に盲従することはなかったのだろう。

 

 現在は救世暦1517年。救世暦1年に偉大なる神の御子が現れ、『救いの教会』の母体を作った。偉大なる力をもつ人が現れる時代は元の世界と同じ時期のようだ。そのあたりは何かリンクしているのだろうか。ついでに言えば、やっぱり6世紀ごろに救世暦は考案されたらしい。 

 ちなみに宗教による大きな摩擦はないため宗教改革は起こっていないようだ。マルティンは生まれていないのだろうか? 


 救いの教会の建物は街ごとにあり、人々は神を崇めている。が、それは地球の中世ヨーロッパに見られた権力志向・盲目的・非科学的で横暴な教会ではなく、穏やかで人々の心を助けようとする教会となっている。


 そして、救いの教会と平和的に対抗する宗教も存在する。

 聖万象教会だ。歴史的にはこちらのほうがはるかに古いらしい。元の世界でも世界中で見られたアニミズム、つまり、あらゆるものに霊魂が宿っており、多くの神々に世界は支えられているという考えの宗教だ。神道に通じるものを感じる宗教だ。


 救いの教会は一神教。聖万象教会は多神教。相反する宗教だけに対立しているかと思いきや、人々はどちらかの宗教、もしくは双方の宗教を平和的に信仰している。地球の状況からするとびっくりだ。


 救いの教会はだいたい街の中心部にあり、地球のカトリック教会を質素にした感じだ。聖万象協会はそれぞれの街の周辺で最も自然に豊かな所にあり、砦のような頑強な建物となっている。


 元の世界においては、最高級繁華街で、はでに金をばらまく坊主たち、そして、権力争いに終始する神官たちの話を見聞きしていた俺は宗教への敬意など全く持てず、形式としての冠婚葬祭以外は宗教とは全く縁がなかった。


 しかし、現在は家族と共に熱心な救いの教会の信者だ。

 そりゃそうだ。無私の心で人々を助けようとする善意の塊みたいな神父さんたちを見て育てば、誰だって熱心な信者になってしまうだろう。

 そして、自然界のすべてを慈しむ聖万象会には大いに共感するし、神官の姿勢に尊敬の念を抱いている。

これからは朝7時に投稿していきます。出てなかったら翌日以降ということでご理解ください。

様々な形での応援、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ