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エピローグ+1

―――その数日後。


都市伝説同好会の部長・孝史は、自室でノートパソコンを打っていた。

と、突然インターネットが切れた。時計を見ると、00:15。


(また、親父だな)

孝史は階段を駆け降りた。


「親父、インターネットが切れたぞ」


「すまん、すまん。いま、夜食温め中だ」

帰宅したばかりの親父が、冷蔵庫に用意されていた夕飯をレンジに入れてチンしていた。

うちのレンジは無線LANと周波数が近く、1階のリビングでレンジを使うと、2階の孝史の部屋のインターネットが切れるのだ。


「早くしろよ」

そう言い残し、孝史は階段を駆け上がった。

部屋に戻り、買ってきた『カグラバチ』を広げる。


――あの日の翌日、孝史は敏也が学校に来るか心配だった。

しかし、何事もなかったように「よお」と敏也は教室に入ってきた。

孝史はほっとした。しかし、授業のベルが鳴っても――真美は来なかった。

孝史の脳裏に、昼休み、真美がスマホを覗き込んでいた笑顔がフラッシュバックする。


三時間目の授業に十分ほど遅れて来た担任が、授業を始める前に、重い口調で真美のことを知らせた。

―――孝史は後悔していた。あんな胡散臭い都市伝説、部長として、もっと強く止めておくべきだった、と。


***


「今日、復讐だ」

壁の時計を見る。午前1時26分。

孝史の逆襲の狼煙が上がった。


静かに階段を下りる。――寝ていると思っていた親父の部屋からは、かすかにテレビの音が漏れていた。

(まだ起きてたのかよ……)

気づかれないように足音を殺し、リビングに向かう。

そっと電子レンジを担ぎ上げ、再び階段を上がった。


机の下にレンジを置くと、まだ少し時間があるので『カグラバチ』の続きを開いた。

しばらくして顔を上げると――午前1時50分。


「そろそろ始めるか」


机の前に座り、パソコンを立ち上げる。

手持ち無沙汰に、右手でボールペンのペン回し(フェイトソニック)をしながら、パソコンが起動するのを待った。

――間もなく画面が立ち上がる。孝史はボールペンを鼻の下に挟む。

(あいつが出たら、インターネットを切ってやる)


「さーて、やりますか」

キーボードを叩き、『ジャミーラ』を開いた。

そして、午前2時を待ち、手順通りに進める。


***


パソコンの画面に【動画を作成する】のボタンが現れた。


「これか」


クリックした瞬間――背後に気配が走る。


「こいよ、こいよ」


孝史は呟き、右手のペン回しにも自然と力が入った。

画面が切り替わり、自分の顔が映る。そして、その背後に白い靄がゆらりと浮かび上がった。


「おっしゃー!」

孝史は、足元のレンジのスイッチを押した――が、動かない。

下を見ると、コンセントにプラグが刺さっていなかった。


「あらぁぁぁ~!」


**冷や汗が噴き出した。心臓が喉まで飛び出しそうになる。**慌てて机の下に頭を突っ込む。

そのとき、細い女の腕が、中腰になった孝史の首を掴む。


「うぁーっ!」


プラグを差す時間はない。

その瞬間、孝史は右手に持ったボールペンを、そのままコンセントに叩き込んだ。


**バチッ、と青白い火花が飛び散り、鼻腔を焦げ臭い匂いが突いた。**部屋の電気が落ちた。

1階のブレーカーが飛んだのだ。

その瞬間、行き場を失った“何か”が、悲鳴とも耳鳴りともつかぬ高いノイズを発し、部屋の空気が激しく歪む。


「――ッツ……!」


孝史は振り向いた。だが、そこにはもう誰もいなかった。

白い靄も、あの冷たい腕の感触も、すべて煙のように淡く、空間に溶けるように消えていた。

ただ、焦げたプラスチックの匂いと、机の下に転がるボールペンだけが残っている。


「……勝った、のか?」

孝史は呟いた。


その時――階下で、「カチン!」という硬質な音が響いた。部屋が明るくなる。


「おいっ!孝史、何やってんだ!」

親父の怒鳴り声が響く。


(ははっ、親父も巻き込んじまったか……)

力が抜けたように椅子にもたれた――そのときだった。

ピコン――。

ノートパソコンのWi-Fiアイコンが復活し、画面に静かに最後のメッセージが浮かび上がった。


***

『強制終了確認――ジャミーラ・ノード接続遮断。

 これで、“彼女”は解放されました。』

***


「……終わったんだな。」

部屋の中に、微かに焦げたプラスチックの匂いが漂う。

孝史は、足元に転がっている焦げ跡の残るボールペンを、まるで戦いの証のようにじっと見つめた。


***

――ジャミーラの呪いは、終わった。

その後、ジャミーラに関するすべての痕跡はネット上から消え去った。

もう、どこを探しても「深夜二時の招かれざる訪問者」というページは見つからない。


ただ一つだけ。

机の上に残ったボールペンは、今も焦げた痕を残しながら、静かにそこにある。


終わり

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

「深夜二時に怖い話をAIに書かせると――」なんて、冗談のような都市伝説を、もし本当に試したくなった方……くれぐれもご注意を。深夜、背後に“何か”を感じても、私は責任を取りません(笑)。


ちなみに、電子レンジの電磁波でWi-Fiが切れる部屋は、筆者の家にもあります。ですが、ボールペンでコンセントに突っ込むのは、くれぐれも真似しないでくださいね。ショートより先に、親に怒られること間違いなしです。


それではまた、どこかの闇の片隅でお会いしましょう――。

次は、あなたの背後に“まだ”誰もいないことを祈っています――。


――筆者

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