プロローグ
「タカ、いいもん見つけたぞ」
昼休み。高校の都市伝説同好会に所属する敏也が、ぐっすり寝ている部長・孝史の肩をポンと叩いた。
「なぁに……」
弁当を食べ終えたばかりの孝史が、机に伏せていた顔をのそりと上げる。
「これ、見て見て」
敏也は得意げにスマホの画面を突き出した。
「夜中の2時に幽霊が出るんだってさ」
「……幽霊?」
「昨日、『都市伝説』で検索してたら、ヤバいやつ見つけちゃってさ」
その会話に気づき、同好会メンバーの真美が歩み寄ってきた。
「どうしたの?」
「トシがさ、なんかヤバい都市伝説見つけたんだって」
「え、どんなの?」
敏也は真美にもスマホを見せる。画面には大きく、
***
【閲覧注意】
深夜二時に怖い話をAIに書かせると、背後に幽霊が現れて殺される!
***
「なにこれ?」
真美は眉をひそめ、怪訝そうにスマホをのぞき込んだ。
「なんでも、マレーシアのIT企業が作った『ジャミーラ』ってAIに、怖い話のタイトルを入力するだけで幽霊が出るんだってさ」
「いやいや、ありえないでしょ」
孝史はあくびまじりに目をこすり、呆れたように首を振る。
「それがさ……その『ジャミーラ』って、開発した女性の名前らしいんだけど、今は行方不明なんだって。最悪、殺されたって噂まで出てる。SNSでも結構話題になってるんだ」
「トシ、そういうのマジでやめとけよ」
そう言い残すと、孝史は再び机に顔を沈めた。
「はいはい、部長……」
敏也はがっかりした様子で肩を落とし、自分の席に戻っていった。