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第9話 『白銀の獅子』との再会 その1

「すみません、荷物持たせちゃって」

「いえ、レベルが上がったので、これくらい平気です」


 ダンゴール108体以上の素材を収納した市販の魔法袋をシノが担いでいた。

 魔法袋には空間魔法が掛けられており、かなりの容量の荷物を入れることができる。

 ただし、重さを軽減することはできず、袋の重さは500キロを超えていた。

 ムビにとってはかなりの重さだが、レベル12のシノは軽々と持ち上げた。


「ギルドに持って行ったら、いくらぐらいになるかな♪」

「間違いなくぶっちぎり過去一の報酬になるわね・・・」


 時刻は夕暮れ時で、森を抜けるにはもう一息といったところ。

 ギルドに着くのは夜になるだろう。

 ユリとルリとサヨは、ムビが編集した動画を見ながら歩いていた。


「おぉーーーカッコいいーーーー!」


 10秒毎に歓声が上がっていた。

 動画の出来栄えは良いみたいだ。


「修正点があったらいつでも言ってくださいね」

「全然修正点とか無いよ!神動画だよ!」


 今回の冒険でかなり戦闘シーンが撮影できたので、7本分くらいの動画にはできるだろう。

 1週間は毎日投稿ができそうだ。

 街に着くまであと2時間以上あるが、帰りながら皆に動画を見てもらって、0Kだったら 『Mtube』に投稿しよう。




「『白銀の獅子』様ですね。前回依頼分の報酬計算が完了しましたので、報酬をお渡しいたします。合計で5000万円です」

「はい、どーもー」


 ギルド受付にて、『白銀の獅子』の面々が揃っていた。

 Aランク昇格を果たした後、昇格祝いに皆で長期のバカンスを楽しんでいた。

 バカンスの帰りに、前回依頼分の報酬を受取りに来たのだ。


「いやー、これでまた余裕で遊べるぐらいの金が手に入ったわ」


『白銀の獅子』リーダーのゼルが報酬を手にしてニヤニヤする。


「あたし、欲しいバックがあるんだぁ〜。買ってくれない?」


 魔法使いのリゼがあざとくゼルに言い寄る。

 バカンス帰りで、胸元を露出させた派手な服を着ていた。


「いいよ。リゼは可愛いし頑張っているからな」


 ゼルがリゼの頭を撫でながら笑顔で言う。


「いや〜、これだけ報酬があるなら、パカンスでもっと金を使っておくべきだったな!」

「あらあら、いけませんよゴリ。十分散財したではありませんか」


 戦士のゴリがガハハと大笑いし、神官のマリーがそれを窘める。

『白銀の獅子』に気づいた周りの冒険者達が、ヒソヒソと話し始める。


「・・・おい、『白銀の獅子』だぜ」

「パカンスから帰って来たのか?オーラがスゲェ・・・」

「相当な報酬を受け取ったみたいだぜ・・やっぱ格が違えや」

「流石、今最も勢いのあるパーティだな」

「リゼさん今日もめちゃくちゃエロいなぁ〜」

「ゼルとリゼの奴、できてるって噂だぜ」

「まじかよ!?ゼルの奴羨ましいぜ・・・、あの巨乳を好き放題できるとかたまらん」


 ゼルは周囲の羨望の眼差しを感じながら、優越感に浸る。


 あぁ〜これだよこれ、底辺共に崇められるこの感じが冒険者の醍醐味だよなぁ〜。


 更に、『白銀の獅子』に気付いた女子達の列がゼルの前に出来ていた。


「あの・・・ゼルさん!良かったらサインお願いできませんか?」

「いいよ。いつも応援してくれてありがとね」


 ゼルが白い歯を見せながら爽やかに笑いかけた。


「きゃ〜〜〜〜っ!!」


 それを見て女子達の黄色い歓声が上がる。


「くそ〜、ゼルの奴ばかり羨ましいぜ、俺のところには全然来ねぇ」

「あんたのとこに行くわけ無いでしょうが」


 リゼがゴリに辛辣な言葉を投げかける。


「あの・・・リゼさん・・・」

「ん?」


 見ると、リゼの周りにも男性の人垣ができていた。


「サインお願いできませんか?」


 一瞬で男達の顔をチェックしたリゼは、口元に指を当て、ゴミでも見るような見下した目で言った。


「あんたらみたいなざぁこが、私に話しかけないでもらえます〜?」


 ・・・ぐぅぅっ!

 これが良い・・・!


 何名かの男は傷つき、何名かの男は悦んだ。


「リゼさん・・・、それなら5000円差し上げます!」

「俺も3000円なら!」

「俺は1万出すぞ!」

「俺は3万!」


 男達が金を出して懇願し始める。


「はいはぁ〜い、サインは1万円以上から受付けま~す♪」


 リゼは機嫌良さげな笑みを浮かべ、お金を受け取りながらサインを書き始める。


 ギルド内は『白銀の獅子』の登場によりてんやわんやの大騒ぎだった。

 ゼルはその雰囲気を感じながら、最高潮に満たされていた。


 ガタンと音がして、ギルドの入口の扉が開く。




「あっれぇ〜、すっごい混んでる」




 突如聞こえたあまりにも可愛い声に、ギルド内の全員が入口を見た。

 入口には、想像を絶する程の美少女が四人いた。


「なんだあの娘達、可愛過ぎるだろ・・・」

「知ってる!あの娘達、アイドルの『四星の絆』だぞ!」

「顔ちっさ!スタイル良っ!」

「マジで何なんだ可愛過ぎる!」


 少女達が入って来ただけで、フロアの空気が浄化されるような錯覚に皆が陥った。

 ゼルも少女達のあまりの可愛さに目を奪われる。


 あれが『四星の絆』・・・。

 アイドルの冒険者がいるとは聞いていたが、それにしたって可愛過ぎる。

 リゼと互角・・・いや、それ以上か?


 少女達は袋を抱えて、受付嬢の方へ向かっていた。

 肩まで伸びる黒髪の細身の少女が、受付嬢に話しかける。


「すみません、魔物の討伐依頼を達成してきました。素材も集めて来たので、換金をお願いします」

「『四星の絆』さんですね。討伐した魔物は何でしょうか」

「はい。スライム8体、ゴブリン10体、コボルト3体、オーク4体、ダンゴール108体です」

「はい・・・?えっと・・・各魔物の討伐証明部位はお持ちですか・・・?」

「はい、こちらがそれです」


 少女が受付のカウンターの上で袋をひっくり返し、魔物の体の一部がどっさり山盛りに積まれた。


「それと、これが素材です!ダンゴールの外皮108体分です。重いので気を付けてください」


 白い髪の外ハネショートの少女が、カウンターの上に魔法袋を置く。


「・・・か・・・確認しますので、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」


 受付嬢は鑑定魔法を唱えた。

 受付嬢の鑑定魔法は、魔物の部位や素材が本物であるか、どれくらいの価値があるかを判別する。


「・・・全て本物ですね・・・。承知しました、ギルドは全て『四星の絆』の功績として承認します。まず、報酬ですが、討伐依頼の達成分が110万5千円。素材売却の報酬が54万円、合計で164万5千円になります」


 聞き耳を立てていた聴衆達はギョッとした。


 ・・・Cランクパーティ並の報酬じゃねぇか!

 ダンゴール108体討伐なんて聞いたことねぇ!

 あんな美少女たちが達成したっていうのか・・・!?


「それからパーティランクですが、Eランクのダンゴールを108体倒したことで、Eランクの依頼を108回連続で達成したとみなし、『四星の絆』をDランクパーティに昇格いたします」


 ・・・Dランクっていやぁ、冒険者一本で飯食っていける、プロレベルじゃねぇか・・・。

 あんなに可愛いのに、冒険者としての実力もあるってマジかよ・・・。


 少女達は報酬を受け取って受付から離れた。

 皆で喜びを分かち合っている。


 うわぁ・・・すごく仲良くて良い子そう・・・。

 尊い・・・推せる・・・。


「あ・・・あの〜、サインいただいてもよろしいでしょうか」


 いつの間にか、さっきリゼに5000円とか言ってた男が少女達の前に立っていた。


「あっ、サインですか?良いですよ〜♪お名前何ていうんですか?」

「えっ・・・!あっ・・・名前・・・モブオです・・・」

「モブオさんですね♪私達のこと知ってるんですか?」

「いえ・・・今日初めてで・・・」

「そうでしたか〜!私達、『四星の絆』って名前でアイドル活動しているんです!『Mtube』もやってるので、良かったら応援してくださいね〜♪」


 白髪の少女が、サインを書いて色紙を渡した。

 色紙にはサインだけでなく『モブオさんありがとう』と書かれていた。


「・・・ぼっ・・・僕、ファンクラブ入ります!チャンネル登録と、メンシプにも入ります!!」

「え〜!本当?嬉しい〜♪」


 白髪の少女は、モブオの手を握り握手した。


 な・・・何だあの神対応・・・天使だ・・・。

 俺もあっち行こ・・・。


「ちょっ・・・ちょっとあんた達!?」


 一連のやり取りを見て、リゼの周りにいた人垣が一斉に移動を始めた。


「すみません、俺もサインお願いします!」

「俺も!俺も!」

「オーケーオーケー!押さないでね・・・お兄さん、お名前は?」


『四星の絆』は『白銀の獅子』にも負けないくらいの人気を博していた。


「おい、ゼル・・・。あの娘達、パーティに加えないか?」


 ゴリが鼻の下を延ばしながらゼルにヒソヒソと話しかける。


 ・・・確かに、Aランクパーティ、ましてや『Mtuber』には華が必要だろう。

 彼女達はその華としてふさわしい。

 俺達と比べてレベル差は相当あるだろうが、しかし、俺達がサポートしてレベルを上げれば良いことだ。

 ゴリもたまには良い提案をするじゃないか。


『白銀の獅子』と『四星の絆』がサインを書き終えたタイミングで、ゼルが『四星の絆』の方へ歩き出す。


 さて、どう口説いたものか・・・。


 歩いてくるゼルに、『四星の絆』は気が付いた。


「あーーーっ!!もしかして、『白銀の獅子』のゼルさんですか!?」


『四星の絆』の面々が、輝く瞳でゼルを見ていた。


「あれ、知ってた?そうです、『白銀の獅子』のゼルです」

「私達、『白銀の獅子』の大ファンなんです!!初期の頃からずっと見ていて、いつも元気を貰ってたんです!!」

「本物のゼルさん、めちゃくちゃカッコいいですね!!」

「うわ、リゼさんとゴリさんとマリーさんも皆揃ってる!!どうしよう、皆カッコいい〜//」


 何だ何だ、めちゃくちゃ好反応じゃないか。

 もしかして俺に惚れてる??

 つーか全員マジで可愛いな。

 こりゃ、口説くどころか持ち帰れそうか?


『白銀の獅子』と『四星の絆』が話しているのを、フロアの全員が見ていた。


「おいおい、注目の2パーティが意気投合してるじゃねぇか」

「俺には分かるね、人知れず努力を重ねて自分の力でしっかりのし上がってきた者同士のシンパシーってやつ?」

「うちのギルドも活気付いて来たじゃねーか」

「しばらくは間違いなく、あの8人がうちのギルドの中心だな」

「イケメンに美女。他には誰も入る余地が無いってやつですか~」

「くぅ〜、あの輪の中に入りて〜」

「バッカやろwwお前じゃ無理だってwww」


 少女達は一生懸命、ゼルに自分達の想いを伝える。

 ゼルは最高に承認欲求が満たされていた。


「それで、私達、『白銀の獅子』の元メンバーのムビさんにたくさん助けていただいて!」


 あーなるほど、ムビさんねぇ〜、ムビさん・・・ん・・・?

 ちょっと待て、どうしてムビなんかの名前が出てくるんだ?


「ムビさんには、私達のプロデューサーになっていただいて・・・!素晴らしい動画もたくさん作っていただいて、もう感謝してもしきれなくて・・・!」


 この娘達のプロデューサー!?どういうことだ・・・!?


「今、先に事務所の方に報告に行っているんですけど・・・あっ、噂をすれば!ムビさーん、こっちこっち〜♪」


 少女の声に釣られて、『白銀の獅子』とフロアの全員がギルドの入口に目をやる。

 扉が開いていて、ちょうど一人の少年がフロアに入ってくるところだった。

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