第78話 大冒険の翌日
ムビは自宅のベットで目を覚ました。
小鳥の囀りが聞こえる。
暗い鉱道とは違い、暖かい朝日が窓から差し込む。
そうか、帰って来たんだ・・・。
あれから色んなことがあった。
『幽影鉱道』から一日かけて移動し、夜にはルミノールの街へ到着した。
冒険者全員でギルドに向かい、ギルド長立会いの下、『幽影鉱道』で起きた一連の事件について報告した。
ルノワールの冒険者が、『四星の絆』と『白銀の獅子』を除いて全滅したこと。
『白銀の獅子』とデスストーカーに繋がりがあったこと。
デスストーカーを討伐したこと。
宝物庫の中が空で、宝を持ち去ったのは『白銀の獅子』と推測されること。
ギルド長は非常に驚いていた。
「まさか・・・『白銀の獅子』が、そんなことをする筈が・・・」
「事実です。今現在も、俺達の命を狙っているかもしれません。早急に何らかの対応をお願いします」
「そうだ!あの野郎共、牢屋にぶち込んでやれ!」
他の冒険者達も熱が凄まじく、ギルド長はタジタジだった。
「分かりました・・・。早急に、聞き取り調査を行います。また日を改めて、『四星の絆』の皆さんをお呼びします」
こうして、『白銀の獅子』の聞き取り調査が行われることが決定した。
次に、ムビ達は討伐証明部位、鉱石や素材を提出した。
あまりの量と質に、ギルド職員は面食らっていた。
「こんなの、見たことありません・・・。一体、どれだけの価値になるのか・・・」
精査するため、報酬の受け渡しは3日後になるという。
『四星の絆』のパーティランクは、その場でCランクへ昇格した。
また、ギルドの計らいで『四星の絆』全員、3日間通院することになった。
身体の異常、精神の異常をチェックするらしい。
ルナプロダクションにも報告し、1週間の休暇を取得するよう指示された。
冒険者達はそのまま打ち上げに行ったが、流石に『四星の絆』は休養を勧められ帰宅した。
ムビは心身共に疲労が限界で、帰宅するなりベットに倒れ込んで眠った。
そして、今に至る。
・・・よく寝たなぁ・・・。
時刻は10時。
12時間程眠ったことになる。
ムビはいつもの習慣で、『Mtube』をチェックした。
『四星の絆』チャンネルの動画はどれも500万回再生を超えており、金喰いスライム、ダンジョンボス、デスストーカー関連の動画は1000万再生を超えていた。
チャンネル登録者数は、100万人を超えていた。
「よしっ!」
ムビは声に出してガッツポーズをした。
ついに大台を突破し、大物『Mtuber』の仲間入りを果たした。
これで『四星の絆』のアイドル活動は成功するぞ!
この登録者数なら、ドーム公演も可能だ!
『Mtube』の登録者数の数パーセントが観客動員数として見込まれる。
ドームの収容人数3万人にも十分届き得る。
今すぐ仕事をしたい気分になったが、今日は休みだ。
まだ、冒険の疲れが体に残っている。
今日は流石に、一日好きなことしてリフレッシュしてもいいよな・・・。
上機嫌になったムビは、顔を洗い、外出の準備をした。
リフレッシュすると決めた一日。
ムビはまず、お気に入りの温泉施設に行った。
奇跡の湯と言われる活性水素温泉・・・。
他にも、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、メタケイ酸、メタホウ酸を含んでいる。
水風呂は天然にがり冷泉。
源泉かけ流しだ。
百年檜の柱、百年杉の梁の建物で、檜の香りが落ち着く。
サウナ、新緑の美しい広い露天風呂、塩サウナまである。
最高過ぎる・・・。
ムビは2時間程、青空を見ながら温泉にプカプカと浮かび、身も心も完璧に解れた。
13時からはお気に入りのテラス席に座った。
やっぱり読書は落ち着くなぁ。
使える魔法が一気に増えたし、読書欲が無限に湧き出てくる。
ランチとパフェを食べながら魔導書を読み、たっぷりと2時間過ごした。
15時過ぎに病院に行き、17時には検査が終わった。
特に異常は見当たらずホッとした。
17時からはカラオケに行き、3時間歌い続けた。
モノマネ魔法で保存したドアさんの歌唱法を自分に適用させ、最高に気持ちよく歌えた。
やっぱりドアさんは凄いや!めちゃくちゃ上手く歌えて気持ち良い!
20時半からは、ずっと憧れだった、ルミノールNo.1の高級焼き肉店に行った。
うまあぁぁーーーーーーい!!
噛めば噛む程肉汁があふれ出てくる。
人生で2番目の美味さだった。
流石に死闘の直後、皆と食べたドラゴン肉には敵わないが、それでも天にも昇る美味しさだった。
2時間程、ムビは様々な肉料理を堪能し、大満足した。
お会計は、なんと20万円。
・・・まぁ、たくさんお金入ってくるし、いいよね・・・?
23時、ムビは家に帰ってきた。
ベッドに寝っ転がって、『Mtube』のチャンネルを確認する。
動画の再生回数も、チャンネル登録者数も、朝より更に伸びていた。
ふふっ、幸せだなぁ。
明日は、何しようかなぁ。
ムビが笑顔でスマホを見ていると、玄関の扉をノックする音が聞こえた。
こんな時間に誰だろう?
「はいはーい、今行きまーす」
ムビが玄関の扉を開けると―――そこに立っていたのは、リゼだった。




