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第64話 デスストーカー

「いやああぁぁぁっ!!」


 ユリの悲鳴が鉱道内に響き渡った。

 デスストーカーはボロボロのローブを揺らめかせながら、悠々と坂を下ってくる。


「逃げてっ!!!」


『四星の絆』は弾け飛ぶように元来た道を全速力で戻る。


「そんな・・・あの声は確かに・・・!」


 走りながらシノが泣きそうな声を出す。

 それに対し、配信画面からガエンの声が聞こえる。


「そういえば、聞いたことがある・・・。デスストーカーは、魂を喰った人間の声を真似て、仲間(ツレ)の人間を呼び寄せるって・・・」


 禁忌指定の魔物は情報が限られている。

 ギルドの資料にも載っていない、噂程度の話だ。

 まさか本当にそんな性質があるとは、ガエンは思ってもみなかった。


「じゃあ、救援隊の皆さんは、もう・・・」


 恐らく、喰われたのだろう。


「とにかく、デスストーカーを撒くぞ!俺が分岐を教える!」


 ガエンの怒声が飛ぶ。


「そこの分岐は、右だ!」


『四星の絆』は迷わず右の道を選ぶ。




 ペタッ ペタッ ペタッ




 背後からデスストーカーの足音が近付いてくる。

 足音はぴったりと『四星の絆』についてくる。

 捕まったらどうなるのか―――想像したくもない。


「いやあぁぁぁぁ!!来ないでえぇぇぇ!!!」


 ユリが泣き叫ぶ。

 おぼつかない足取りのユリを、シノが必死に支えながら『四星の絆』は逃げる。

 そのため、少しずつ背後の足音との距離が縮まってくる。




 ペタッ ペタッ ペタッ




「もっと早く走れ!!!」


 ガエンの怒号が響く。


「無理だよ・・・!死んじゃう・・・!」


 ユリは精神が限界に達していた。


 やばいって

 追いつかれる

 速く!

 逃げて!!


「大丈夫だ!分岐で撒ける!次、2回連続で3方向の分岐が来るぞ!右、左だ!いいな!?右、左だぞ!!」


『四星の絆』は分岐を右に進むと、すぐに次の分岐が現れた。

 ガエンの言う通り、左の道を選んだ。


「次は左だ!」


 次々と現れる分岐を、ガエンの言うとおりに進んでいく。

 デスストーカーの足音は、少しずつ遠くなっていった。


「いくらこちらの位置が分かるとはいえ、分岐が何度も続けば迷う筈だ!このまま引き離せば、最終的には俺達がどっちに行ったか分からなくなるぞ!」


 おお!すげぇ!

 ガエン神!

 流石Aランクパーティ!


「次は右だ!」

「ガエンさん!そっちは魔物の気配があります!」

「なにぃ!?じゃあ左だ!」

「分かりました!」


 ムビは前方に魔物探知魔法を発動しながら走る。

 ガエンとムビのコンビで全く止まることなく分岐を選び続け、気が付けばデスストーカーの足音は聞こえなくなった。


「デスストーカーの足音が聞こえなくなりました!」

「よーし、いいぞ!このまま、もう一つの表ルートへの道を案内してやる!デスストーカーの野郎が裏ルートで迷っている間に、そっち経由で脱出だ!」


 この二人最強コンビじゃん!

 行け行け!

 こんなスリリングな配信見たことないwww


 SNSでは、『デスストーカーから逃亡中』というハッシュタグで大量に拡散され、大勢のリスナーが『四星の絆』の配信に流れていた。

 同時接続者数は120万人を突破していた。


「次、まっすぐだ!」

「・・・駄目です、次の分岐は全部魔物と遭遇します!・・・サヨさん、走りながら詠唱できますか!?」

「やってみますわ!」

「150メートル先で遭遇します!」


 ムビ達が10秒程走ると、Cランクの魔物の群れに遭遇した。


「""氷嵐の咆哮(アークティックハウル)""!」


『エンパワーメント』!


 ムビのスキルとの合わせ技により、Cランクの魔物はサヨの呪文で一掃された。


「ナイスです、サヨさん!」

「ムビさんこそ、ありがとうございます!」


 おぉー!

 マジで息ピッタリじゃん!

 神配信過ぎる!

 これは逃げきれるわww


「よし、行けるぞ!次は真っすぐだ!」


 ・・・よし!この道に魔物はいない!


 ガエンの指示通り、『四星の絆』は真っすぐ進んだ。

 道はどんどん広くなっていく。

 100メートル程走ると、道が大きく左折していた。


「そこを左に曲がると広い道に出る!そこを走り抜ければ分岐地獄の後、表ルートへ続く道だ!ここまで来れば逃げ切ったも同然だ!」


 おぉーーー!

 完璧だわww

 リアルホラーゲームクリア(=゜ω゜)ノ


『四星の絆』は勝利を確信して左折すると―――


 ―――()()()()()()()()()()()


「なっ・・・!なんで行き止まり・・・!?ガエンさん!!?」


 ガエンは数秒間沈黙した後、絞り出すような声で言った。


「崩落で、道が塞がっちまってる・・・。以前は通れたんだ・・・。すまねぇ・・・」


 左折して30メートル先に、天井まで聳える瓦礫の山があった。

 量が多過ぎて、呪文で吹き飛ばすことは不可能だろう。


「戻りましょう!デスストーカーが分岐を間違えていれば、まだ撒けるかもしれません!」




 ペタッ




 遠くから、足音が聞こえた。




 ペタッ  ペタッ  ペタッ




 足音が、徐々に近付いてくる。


「ひいぃぃぃぃぃッ!!!」


 ユリが瓦礫の山へ向かって走る。

『四星の絆』も皆、震えながら後ずさりする。

 そして、すぐに瓦礫の山へと辿り着いた。

 もう、後ろに下がることはできない。




 ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ





 ―――ペタッ




 足音は止まり―――


 ―――曲がり角から、デスストーカーが現れた。

お読みいただきありがとうございます。


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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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