第61話 インフルエンサー
ええええええ!!
ミラが直々に行くの!!?
神展開じゃん!!
「お・・・お待ちください!ギルドは、討伐依頼は出せないと・・・!」
ギルド職員が割って入る。
「ギルドが依頼を出さないなら、ワシ個人で行けば問題無かろう?」
「そ・・・それはそうですが・・・」
「というわけじゃ♪えぇーと、今からルミノールに向かえば、今日の夜には着くかのう?そこから『幽影鉱道』に向かうから、まぁ1〜2日ってところか?・・・お前達、なんとか2日生き残れ。ワシがデスストーカーを討伐してやる♪」
コメント欄は爆発的に盛り上がった。
同時接続者数は、10万人を超えた。
「ちょ・・・ちょっと待ってください!いくらミラでも、一人では禁忌指定の魔物には勝てません!デスストーカーの恐ろしさを分かっているのですか!?」
ギルド職員が必死で止める。
「なんじゃ、うるさいのう。確かに禁忌指定の魔物と戦ったことはないが、なんとかなるじゃろ」
「相手はデスストーカーですよ!?負けたら魂が消滅するんです!仮に逃げ切れたとして、マーキングされたら、市街地までデスストーカーが追ってきます!そうなったら、多くの市民が二次被害に遭います!ギルドとして、とても見過ごすわけにはいきません!」
「ふーむ。ならば確実に討伐すれば良いのじゃろう?・・・おーい、今配信を見ておる冒険者達!一緒にデスストーカーを討伐しに行くぞ!」
「ちょっ・・・!?何言って・・・!?」
「よいからよいから♪我こそはと思う者は名乗り出よ!」
ミラはしばらく待つが、誰も名乗り出てこない。
「およ?誰もおらんのか?」
「あ・・・当たり前です!デスストーカーですよ!?誰も戦う筈ありません!」
「ちっ、しけとるのう。・・・よし、ならばこうしてやろう」
ミラはしばらく黙る。
「はい、これで送信っと♪」
「・・・?何をしたんですか?」
「ん?なに、この配信をワシのSNSで宣伝したんじゃ♪」
「はぁ!?そんなことしたら・・・!」
おおっ?なんだ?急に同接数が増えだしたぞ
おい!ミラの投稿、猛烈な勢いで拡散されてるぞ!
ミラの投稿から来ました
ミラが助けたいって言ってた冒険者はここか?
応援してるぞー!
絶対助かる!
「さて、冒険者諸君」
同接者数11万・・・12万・・・13万・・・
「今回の討伐に参加したパーティーは、ワシとコラボ撮影じゃ♪」
なっ・・・なにぃっ・・・!?
冒険者達に衝撃が走った。
同接者数14万・・・15万・・・16万・・・
「『Mtuber』なら、これがどういうことか分かるな?そして、『デスストーカー討伐に貢献したと思うパーティをチャンネル登録せよ!』と、ワシのフォロワー達に伝えておいた♪」
同接者数17万・・・18万・・・19万・・・
「デスストーカーとの戦闘はほぼワシに任せて良い。諸君らは、後方からワシをサポートしてくれればそれで良い。ローリスクハイリターンの、美味しいお仕事じゃ♪」
同接者数20万・・・21万・・・22万・・・
「さて、もう一度聞こう。我こそはと思う者は名乗り出よ!」
深紅の刃参加します!
雷鳴の牙参加する!
黒鉄の蠍も参加させてくれ!
俺も行く!
俺もだ!ミラとコラボさせてくれ!
無数の参加表明がコメント欄に溢れた。
「かかかっ!参加する者は、本日21時にルミノールの関所に集合じゃ!遅れるなよ?」
同接者数は30万を超えた。
「というわけじゃ、『四星の絆』諸君。デスストーカーは必ず討伐するから、安心して待っとれ♪」
ムビ達は、あまりの急展開に感情が追いついていなかった。
絶望の底に落とされたと思ったら、今度は希望の光が見えてきた。
「なんじゃ、まだ元気がないのう。ほれ皆、『四星の絆』を励ましてやるのじゃ!」
頑張れー!
応援してるぞー!
絶対助かるからなー!
俺達が付いてる!
ずっと見守ってるからな!
30万を超えるリスナーからの応援コメントで埋め尽くされ、ムビ達は涙が出てきた。
「どうじゃ?これだけの人間がお前達を応援しておるのじゃ。最後の最後まで、あきらめたらいかんぞ?・・・では、ワシは今からルミノールに向かうからな、またのぅ♪」
二カッと笑って、ミラは配信から出ていった。
「すごい、嵐のような人でしたね・・・」
「ほんとね。ぜひ、現実でも会ってみたいなぁ」
「会って、お礼を言わなければなりませんね」
『四星の絆』に、活力が湧いてきた。
しかし、ユリだけはまだ震えている。
「ユリ、皆が助けに来てくれます。もうすぐ呪いは解けますからね」
シノがユリの手を握った。
「『岩砕の斧』も行きたいところだが、ダンジョンの案内役として俺は配信に残った方がいいだろうな。救助隊とは待ち合わせ場所を決めておいた方がいい。デスストーカーが裏ルートを見つけきれない可能性の方が高いから、入口に近い裏ルートの広間を集合場所としよう」
ガエンが『四星の絆』に提案する。
「分かりました。ガエンさんが私達の位置を特定できるまで、一旦移動します」
「ああ、そうしてくれ。・・・ギルド職員の、お前はもう帰っていいぞ」
「そうですね。これで失礼させていただき・・・ん?」
ギルド職員の言葉が途切れた。
何かを確認しているようだ。
「・・・ギルドから連絡がありました。『白銀の獅子』が、現在『幽影鉱道』に向かっているそうです」




