第55話 金喰いスライムの巣
『四星の絆』は急いで現場に駆け付ける。
「ここです。この岩盤を10メートルほど掘ったところに、金喰いスライムの巣があります」
ムビがボス部屋の壁をペタペタ触る。
「確か、あの金ピカスライムのドロップアイテムは2億円だったよね?2億円ゲットのチャンス♪へへへ・・・」
ルリのつるはしを握る手に力が入る。
「いえ、それが数十匹いるみたいで・・・」
「数十匹!!?」
ルリの手からつるはしが滑り落ちた。
「そうなんです。金喰いスライムの生態は謎に包まれているので、これは学術的にも大発見なんです。なんとしても一網打尽にしなければなりません。それで、巣を入念に調べてみたのですが、そこに抜け穴があるみたいなんです」
ムビは数メートル先を指差す。
確かに、よく見たら小さな穴がある。
「金喰いスライムは、ここを通って巣を出入りするみたいなんです。作戦はこうです。まず、この出入口をルリさんの”大地の要塞”で完全に塞いで、金喰いスライムを密閉空間に閉じ込めます。そして、巣に開通する直前まで岩盤を掘ります。最後に、外から巣に向かって四人合体技を打ち込みます。巣はあまり広くないので、一網打尽にできると思います」
「金喰いスライムー網打尽って・・・一体、どれだけの経験値が・・・」
「なんか私、足がガクガクしてきた・・・」
早速ルリが、”大地の要塞”で抜け穴を塞いでいく。
「もう少し奥まで・・・そう・・・そこで大丈夫です」
ムビの指示により、巣の付近まで抜け穴を完全に塞いだ。
「よーし!掘るぞー!」
3分程岩盤を掘って、ムビが慎重に指示を出した。
「OKです。あと10センチくらいで開通します。・・・これくらいでいいでしょう。皆さん、一旦外に出ましょう」
『四星の絆』は10メートルの穴の外に出た。
「奥に向かって、四人合体技をお願いします」
「わ・・・わかった・・・!」
『四つ星の絆』は息を合わせ、全員の魔力を混ぜ合わせた。
「「「「"四星の輝き"!!!!」」」」
光の渦は穴の奥に吸い込まれ――――大爆発が起こった。
穴から土煙が噴き出してくる。
土煙が収まるまでしばらく待ち、ムビ達は穴の奥へ入っていった。
穴の奥は少し広い空間が広がっていた。
「・・・うわああああぁーーー!!!」
金喰いスライムのドロップアイテム、純金核が無数に転がっていた。
「純金核がこんなに・・・!!」
「ちょっと待って・・・レベルは一体・・・」
『四星の絆』は震える手で、恐る恐るステータスウォッチを開く。
全員のレベル欄に、43という数字が表示されていた。
「う・・・嘘でしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!????」
たった一撃で、15以上のレベルアップ。
ムビのレベルに並んだ。
「は・・・ははは!なんかもう笑っちゃいますね!」
ムビは大笑いしていた。
「レベル43って!!凄過ぎてもう意味が分からない!!」
「私達、Bランク冒険者並のレベルになったってこと!!?」
「恐らく、岩のゴーレムくらいならタイマンで圧倒できそうですわね・・・」
Bランクの討伐推奨レベルは40〜80。
下位レベルならば、既にBランクの魔物ともタイマンで戦える強さということだ。
「レベル43は、『白銀の獅子』と並ぶレベルです。やりましたね、皆さん」
「えぇぇっ!!?『白銀の獅子』並って・・・!!?」
「戦闘センスは皆さんの方が上ですし、多分、今決闘をしたら、僕抜きでも『白銀の獅子』に勝てますよ」
「なんかもう・・・頭がついていけない・・・・・・」
洪水のように押し寄せる多幸感に、『四星の絆』は頭が痺れてきた。
その後、手分けして純金核を拾った。
全部で24個か・・・これで50億円くらいはあるぞ・・・。
保存袋の中は、世界で一番と思える程、宝の山で溢れ返っていた。
「これで本当に全部です。皆さん、本当に、本当に、お疲れ様でした!元々キャンプする予定だった場所まで戻りましょう!」
ボス部屋開通のために掘った、500メートルの通路を歩きながら『四星の絆』は今日の冒険について振り返っていた。
「いやー!今回の冒険は凄過ぎた!!」
「まるでおとぎ話みたいでしたね」
「お宝の山・・・へっへっへ・・・♪」
「動画が無ければ、信じてもらえないレベルでしたね」
ムビは、歩きながら動画編集を終えた。
「動画できましたよ。こんな感じでどうでしょうか」
「おぉー!見せて見せてー♪」
一行は立ち止まって動画を見る。
街の出発。
湖でのピクニック。
前日のキャンプ。
鉱道での採掘、戦闘。
金喰いスライム討伐。
ゴーレム討伐。
ボス部屋発掘。
ボス討伐。
宝物庫。
金喰いスライムの巣。
どれも最高の思い出として蘇ってくる。
「どうですか?」
「最高の動画だよ♪本当にありがとう!」
「これは、神回確定ですね」
「というより、『Mtube』史上に残る動画になりそうですわね」
ムビも手応え十分だった。
この『幽影鉱道』編だけで、チャンネル登録者数は100万人を突破するかもしれない。
こんなにワクワクするのは初めてだ。
「帰ったら、世界が一変するんだろうなー」
ユリが頭の後ろに手を組みながら言う。
Cランクパーティへの昇級。
大富豪の資産並の報酬。
レベル43。
希少鉱石を使った装備品の一新。
『Mtube』の再生回数、登録者数。
明日のことを考えるだけで、ユリは胸のワクワクが止まらなかった。
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