第54話 宝物庫
「・・・い・・・ぃやったあぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!!」
『四星の絆』は喜びを爆発させた。
四人全員で抱き合う。
はは・・・やった・・・。
ムビはペタンとその場に座り込んだ。
流石に今回は死ぬかと思った。
「ムビ君!勝ったよおぉぉーーーーー♪♪」
四人全員が抱き合ったままムビに突進してくる。
ぐえっ、と情けない声を出しながら、ムビは押しつぶされた。
ちょっ・・・!色んなところが当たってる・・・!
ダンジョンボスを倒した英雄4人に対し、ステータスの低いムビはどうすることもできず、そのまましばらく揉みくちゃにされた。
30分程興奮が収まらない様子だったが、ようやく『四星の絆』は落ち着いてきた。
「まずはレベルを確認してみようよ♪」
ステータスウォッチを開き、『四星の絆』は自分のレベルを確認する。
「おおぉぉぉーーーーー!レベル28になってるーーー!!シノは!?」
「私も28になってる!」
「私とサヨは、27ね!全員3レベル上がってるみたい!」
四人合体技でボスを討伐したことで、経験値が四等分されたようだ。
四等分でこれだけレベルが上がるとは、流石ダンジョンボスだ。
一行はそのままゴーレムの倒れている方へ向かう。
砕け散ったゴーレムの体の中から、純度の高い鉱石が出てきていた。
「すごく綺麗な鉱石・・・」
「それに凄い量・・・体がデカいだけあるわね」
ざっと見積もって数百キロ分の鉱石を採取することができそうだ。
ムビは、この鉱石が何なのか、スマホで調べる。
「これは・・・まさか、ファントムクリスタル!?」
「ファントムクリスタル!?何それ!?」
ムビはスマホの画面を『四星の絆』に見せる。
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〈ファントムクリスタル〉《レア度:A》
【市場価値:1グラム1万円】
かつて『幽影鉱道』でのみ採掘可能だった、『幽影鉱道』の名前の由来である幻の鉱石。
Aランクの中でも最高の物理耐久力と、黒鋼並みの魔法耐久力がある。
装備品としての戦力はミスリル以上とも言われているが、現在は採掘が困難になっている。
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「レア度A!やっぱり相当なレア鉱石だったんですね!」
「ちなみにさ、レア度って何なの?」
ルリが尋ねる。
「アイテムや鉱石のランクですね。僕達が『幽影鉱道』で採掘していたレア鉱石が、レア度Bにあたります。レア度Bは武器素材としては優秀で、Cランク冒険者達にも愛用されるレベルですね。レア度Aはミスリルに代表されるような、Aランク冒険者にも愛用されるレベルです。」
「はへー、そんな凄い素材なんだね!」
「そうですね。しかも、Aランクの中でも最高の希少価値があるみたいです。金がグラム3000円、ミスリルがグラム6000円なので、グラム1万円は滅茶苦茶高価ですね」
「なるほど。ということは・・・この宝の山一体いくらぐらいするんだろう・・・」
「そうですね。数百キロはありそうなので、数十億円というところではないでしょうか」
「数十億!!?」
ルリはぶったまげていた。
「それから、ダンジョンボスは恐らくBランクの認定を受けると思うので、討伐報酬は1000万円ですね」
「なんかもう金銭感覚バグってきたな・・・」
報酬1000万円は極一握りの限られた冒険者のみに許された特権であるが、数十億の前ではチンケに感じてしまう。
「とりあえず、手分けしてファントムクリスタルを収納しましょう」
ムビ達はせっせとファントムクリスタル数百キロを保存袋に詰めた。
「へへへ・・・ムビ君、この欠片、個人的に持って帰ってもいいかな?」
「まぁ、これだけあるし、全然良いと思いますよ。それだけでも何千万円すると思いますが」
「へへへ・・・サンキュー♪」
ルリは涎を垂らしていた。
「これ、私達の装備品になるんだよね?」
ユリが眼をキラキラさせながら尋ねてくる。
「そうですね。武器も防具も、一式フル装備で揃えられると思いますよ」
「うひゃー、楽しみー♪」
ミスリル以上と言われる素材だ。
恐らく今後、Aランクパーティに昇格しても使い続ける装備品となるだろう。
「さて、それじゃあボス部屋の探索でもしてみましょうか」
一行は手分けしてボス部屋を調べる。
一通り探索してみたが、怪しいものは無かった。
ただ一つ、これ見よがしにある扉以外は。
「あとは、この扉だけだね」
「これって・・・宝物庫なんじゃない?」
「ですね・・・宝物庫の筈です」
ムビも何度か宝物庫には入ったことがある。
もちろん、既に攻略されたダンジョンの、何もない空っぽの部屋だったが。
「開けてみましょう・・・」
ムビは開く瞬間を動画に収めようと、扉の前に透明カメラを浮遊させた。
ムビが扉を少し開けると、隙間から眩い光が漏れてきた。
「こ・・・これは!?」
「・・・期待大なんじゃない!?」
ムビは一気に扉を開けた。
眩い光が、『四星の絆』を包み込んだ。
中には、部屋いっぱいの金銀財宝の山があった。
「うっひゃあぁぁぁーーーー!!!!!」
「こ・・・これが宝物庫!!!????」
「こ・・・こここここここれ全部私達のもの!!!!???」
「なんて美しい・・・」
ムビも驚きのあまり言葉を失っていた。
「ム・・・ムビ君、これはいくらぐらいになると思う・・・?」
「わかりません・・・途方も無い・・・多分、100億じゃきかないと思います」
「「100億!!?」」
『四星の絆』全員が驚愕した。
「と・・・とにかく詰めれるだけ詰めてみましょう・・・」
採掘した鉱石やファントムクリスタルにより保存袋の容量は既に逼迫していたが、限界まで詰め込んでみた。
しかし、金銀財宝の山は全然減らない。
「これは、一旦帰って、保存袋を追加購入して再チャレンジした方が良さそうですね」
「まだ全然残ってますわ・・・」
この財宝、売ったら一体いくらぐらいになるんだろう・・・。
500億・・・いや、1000億・・・?
「えへへ、何買おうかな♪バック、洋服、アクセサリー、美味しいもの、旅行・・・えへへ♪」
ルリは財宝の山へダイブし、最高の寝心地を味わっている。
「もう、ルリったら!はしたない!」
シノが注意して、それを見てユリとサヨが笑っている。
「これで全部ですかね・・・この部屋とボス部屋の周辺の岩盤も探ってみます」
「お願いしますわ」
ムビは宝物庫の壁に沿って、500メートル先の岩盤まで鉱石を探知した。
「特に何もないですね。ボス部屋の方も見てみます」
正確にはレア鉱石があったのだが、この部屋の財宝に比べたら何も無いに等しい。
ムビは扉の外に出て、ボス部屋の確認を行う。
・・・まぁ流石に、これ以上は何もないだろうけど・・・ん?
ムビは、ピタッと止まった。
「お帰りームビ君、どうだった?」
『四星の絆』は財宝の山に埋もれて幸せそうだった。
「まさか、またボス部屋があったんじゃないだろうね??」
ルリが冗談っぽく軽口を叩き、『四星の絆』は全員笑う。
ムビだけが、無言で立っていた。
「・・・ム・・・ムビ君・・・?」
「・・・どうしたの?まさか、本当にボス部屋が・・・?」
ムビが一呼吸置いて話始める。
変な汗が止まらない。
「た・・・大変なものが・・・。金喰いスライムの巣を見つけました・・・」
「金喰いスライムの巣!!?」




