第52話 ダンジョンボス戦2
その時、ゴーレムの体が光り輝く。
「ゴオオォォォォォォッ!!」
ゴーレムの体から魔力が迸り、全方向に向けて衝撃波が発生する。
「きゃあぁぁぁぁっ!」
『四星の絆』はもろに衝撃波を受け、全員が散り散りになり壁まで吹き飛ばされた。
―――ゴーレムが魔法攻撃を!?
聞いたことがない!
ムビは驚愕した。
恐らくダメージ目的の魔法ではないのだろうが、レベル差がありすぎて四人全員が大ダメージを受けている。
ムビがくらっていたら即死していただろう。
邪魔者のいなくなったゴーレムは、泥濘からまさに抜け出そうとしていた。
くそっ、4人が孤立している今、ゴーレムが動き出したらまずい!
1対1に持ち込まれたらやられる!
ムビはスクロールを使用し、ルリの真横に転移した。
「ムビ君……!?」
「ルリさん、これを飲んでください!」
ムビがハイポーションを渡す。
「……わかった!ありがとう!」
ルリはハイポーションを飲み干す。
「スクロールで皆を回収して一旦体勢を整えます!ルリさんは詠唱をお願いします!」
そのとき、ゴーレムは泥濘から抜け出し、完全に立ち上がった。
「ゴオオォォォォォォッ!!!」
怒りの雄たけびを上げると、サヨの方を向き、猛スピードで突進していく。
……速いっ!あれはサヨさんじゃ躱せない!
迷っている暇もなく、ムビは即スクロールを展開し、ルリと共にサヨの真横に転移する。
「サヨさん、捕まって!」
もう既に目の前にゴーレムが迫っている。
1秒後、確実な死が訪れる。
スクロール!
ムビは間一髪、ルリとサヨを連れてシノの横に転移した。
―――ズズウゥゥゥゥン!!!
部屋が地響きで大きく揺れた。
元々3人がいた場所はゴーレムの突進により、壁が粉々に砕け散っていた。
―――あぶない……!あとコンマ数秒遅れていたら死んでいた……!!
「ゴオオォォォォォォッ!!」
ゴーレムは仕留め損なったことに怒りの声を上げた。
ズシンズシンとユリの方へ向かって悠然と歩んでいく。
ムビはシノにハイポーションを飲ませると、ユリの真横に転移する。
「ユリさん、これを飲んでください!」
「ありがとう、ムビ君!」
ユリもハイポーションを飲み、『四星の絆』は体力が全回復した。
パーティも固まり、陣形が整った。
「もう転移のスクロールはありません!ハイポーションも残り僅かです!今の魔法攻撃は、もうくらわないように注意してください!」
「わかった!ゴーレムの体が光り始めたら注意ね!」
そのとき、ルリが全員にかけていたバフが切れる。
「バフも切れたか……ここからが正念場だね」
「大丈夫、私のバフなんてステータス1割上げる程度だから、そんなに影響ないよ」
「ははは。帰ったら、もうちょい上昇率上げといて……よっ!」
ユリとシノが一気にゴーレムに向かって飛び出していく。
「"聖光の五月雨"!」
転移の間に詠唱を終えていたルリがゴーレムに魔法を放ち直撃する。
ゴーレムが怯んだ隙に、ユリとシノが合体技を放つ。
「 「”双星の交錯”!!」 」
まともにくらったゴーレムは、すぐさまシノを攻撃する。
「”暗殺影鎌”!」
サヨの魔法が直撃し、ゴーレムはグラついてシノへの攻撃を外す。
その隙に、ユリとシノがさらに追撃する。
「 「”双星の交錯”!!」 」
立て続けに大技をくらったゴーレムは、怒りの声を上げると、体が輝く。
「やばい、アレが来るよ!」
ゴーレムが体内から魔力を放出する。
周囲に衝撃波が巻き起こったが、事前に察知していた『四星の絆』は全員回避することができた。
「へへーん!もう当たらないよーだ!」
通常体内の魔力の流れは読めないものだが、巨大ゴーレムは体内が透き通っているため事前に魔力の放出を察知することができる。
厄介であることには変わりないが、それがせめてもの救いだ。
一連の流れを見ていたムビが、『四星の絆』に声をかける。
「皆さん、このゴーレムは恐らく魔法攻撃に弱いです!」
『四星の絆』がムビの方を振り返る。
「えっ、そうなの!?」
「はい。このゴーレムは”双星の交錯”を受けてもすぐに反撃してきますが、"双星の調律"を受けたときはノックバックしました。恐らくゴーレムの体を構成する希少鉱石は、物理耐性が高く魔法耐性がそれ程高くない性質なんだと思います!だから、このゴーレムは執拗に後衛を狙ってくるんだと思います!」
言われてみれば、確かにシノに止めを刺そうとしたとき以外は、ルリやサヨを狙うことが多かった。
「それから、魔法攻撃のあと、グラつくことが多くなってきました。恐らく、体力はかなり減ってきていると思います!」
「ということは、もうちょいということね!?」
「よし!魔法攻撃主体に切り替えましょう!」
シノはそう言うと、盾に魔力を込める。
盾が氷に包まれた。
「ま……魔法盾!?シ……シノ、いつの間にそんなの覚えたの!?」
「元々練習してて、このダンジョンでレベルアップして使えるようになった」
「か……かっこいいー!よーし、私も!」
「いやいや、練習もしないで出来るわけ……」
ゴウッ!
ユリの剣が炎に包まれた。
「おぉー!出たー!」
「この……天才め……」
シノは呆れていた。
「よーし、このまま押し込むぞー!」




