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第50話 扉の向こうへ

「俺は反対です。流石にリスクが大き過ぎます」


 ムビが真っ先に声を上げた。

『四星の絆』は確かに目覚ましい程のスピードで成長している。

 だが流石に、未踏破ダンジョンのボスと戦うのは危険過ぎる。


「私もムビさんに賛成です。もう既に奇跡と言って良い程の成果を得ました。ここで無理をする必要はないと思いますわ」


 サヨがムビに同調する。


「・・・私はやりたい」


 ユリがまっすぐな瞳で呟く。


「ダンジョンのボス攻略なんて、一生に一度あるかないかだよ。もし成功すれば、冒険者の歴史に永遠に名を残す英雄になれる。『Mtube』も絶対登録者100万人を超える。そうなればドーム公演だって夢じゃない」


 ユリの言うことはもっともだった。

 ダンジョンには古い歴史があり、どのダンジョンも数十年から数百年前にボス討伐が終わっている。

 ダンジョンのボスを討伐したパーティの名は、石碑に刻まれ教科書にも名前が載る。

 最後のダンジョンボス討伐は20年前に行われた。

『Mtube』が世に出てきたのはおよそ15年前だ。

 つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 もしもそんな動画がアップされたら・・・。

 どれ程の反響があるのか想像できない。


「私も・・・。根拠は無いけど、皆でならやれると思う」


 ルリが小さく手を上げた。

 賛成と反対が2対2に分かれた。


「シノはどう思う?」


 ユリがシノを強い眼差しで見つめる。


「シノさんがリーダーですわ。私、シノさんの決定ならば従いますわ」


 サヨもシノに意見を求める。

 シノは一呼吸置いて話し始める。


「私は・・・皆を危険に晒したくない。正直怖いし、本音を言うと安全に帰って、皆と楽しく打ち上げがしたい。でも、ここで挑めば、私達は大きく成長できる予感がしてる。怖さと同じくらい・・・ううん、それ以上にドキドキが勝っている。こんなチャンスが目の前に転がっていて、何もせずに帰ったら、『エヴァンジェリン』には一生勝てない気がするの。せめて、一度トライするくらいはやってみたい」


 凛とした瞳でシノが『四星の絆』全員に語りかける。


「決まりですわね・・・。そうとなれば、私も全力で戦いますわ」

「・・・分かりました。俺も持てる限りの手段を尽くしてサポートします。ただし、危なくなったら必ず撤退してください。それだけは約束してくださいね」


 こうして、『四星の絆』はボス部屋に挑む決心をした。




 キーン キーン


 広間に、つるはしで岩盤を掘る音が響き渡る。

『四星の絆』は5人全員で岩盤を掘っていた。

 10分で30メートルのペースで掘り進んでいく。

 ムビは魔物探知を怠らず、後方からの魔物の出現に警戒していたが、魔物が広間へ入ってくることは無かった。




 3時間程掘り続けたところ、何も無い空間に出た。

 発光石のある鉱道とは違い、真っ暗で何も見えない。


「"暗視魔法(ナイトビジョン)"」


 ムビが全員に魔法を掛けると、昼のように明るく見えるようになった。

 目の前には、巨大な扉があった。


「間違いないですね・・・ボス部屋の扉です」


 以前、ムビが『白銀の獅子』時代にダンジョンの奥で何度か見た扉と同じだ。

 今まで見た扉は全て開いていたが、閉じられているのは初めて見る。

 まるで開いたら最後、悲惨な運命を辿るのではないかと予感させる、異様な雰囲気があった。


「本当に、行くんですね・・・?」


 ムビが最後の確認を取る。

 全員が、コクリと頷く。


 扉の前で、『四星の絆』は最後の休息を取った。

 5人とも体力・魔力を全快にし、スタミナポーションを飲んだ。

 ルリが全員に、できる限りのバフを掛け、ルリとサヨが攻撃魔法の詠唱を終える。


「行きますよ」


『四星の絆』は扉を開いた。




 扉の向こうには、煌びやかな装飾の施された広い部屋が広がっていた。

 発光石が至る所に埋め込まれており、部屋の中は明るい。

 四本の支柱が立っており、その中心には巨大なゴーレムが佇んでいた。


 でかい・・・さっきのゴーレムの倍はある・・・


 全身が透き通った鉱石でできており、光に反射し時折鮮やかな虹色に輝く。

 ミスリルではない、ムビも知らない鉱石だ。

 巨大ゴーレムはムビ達を見ると、雄たけびを上げた。


「ゴオオオォォォォォォォッ!!!」


 部屋全体が揺れ、パラパラと天井から石が降ってくる。


 威嚇をしただけでこの威圧感。

 これが、ダンジョンボス・・・。


「皆、行くよっ!!」


 シノの声で、『四星の絆』は一気に動き出す。


「”暗殺影鎌(シャドウリーパー)”!」

「"聖光の五月雨(イノセントレイン)"!」


 既に呪文の詠唱が終わっていたサヨとルリが巨大ゴーレムに向けて魔法を放つ。

 魔法はどちらも命中し、その隙にユリとシノが巨大ゴーレムに躍りかかる。


「 「”双星の交錯(ダブルトレンド)”!!」 」


 2つの閃光が巨大ゴーレムを貫き、衝撃で部屋全体が揺れる。


 金喰いスライムを倒して、技の威力が格段に上がってる・・・!


 初手から『四星の絆』は最大火力をぶつける。

 だが、ゴーレムは少しのけ反っただけでピンピンしていた。


「あんまり効いてなさそうね・・・」

「さすがダンジョンボス、そうこなくっちゃ」


 全くのノーダメージというわけではなさそうだが、まだまだ何発も打ち込む必要がありそうだ。


「手応え的には、金喰いスライム程の固さは無いよ!ゴリ押せばイケるかも!」

「皆さん、当初の予定通り持久戦です!気を引き締めてかかりましょう!」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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