第48話 『幽影鉱道』最深部2
『四星の絆』はゴーレムを倒し、そのままダンジョン最深部へ向かった。
既にルートの95%を踏破しているため、最深部到達まで1時間と掛からないだろう。
「よっしゃー掘るぞー♪」
そのまま破竹の勢いで採掘と魔物討伐を進めていった。
ゴーレムを討伐して自信をつけた『四星の絆』は、より積極的に戦闘を行うようになり、どの戦闘も10秒以内で終わるようになった。
これはもう完全に、『幽影鉱道』では役不足だな・・・。
次は難易度高めのダンジョンで良いかもしれない。
「おっ?なんか広いところに出た!」
一行は広間に出た。
どうやら行き止まりの様だ。
「ここが『幽影鉱道』の最深部です。ダンジョン攻略完了です、お疲れ様でした!」
ムビは『四星の絆』のリアクションを撮るために、透明浮遊カメラで全員の顔を撮影していた。
「おぉー!ついに攻略かー♪」
「これで私達も中級冒険者を名乗れますね」
「いやー、ぶっ通しで採掘と戦闘でしんどかったけど、楽しかったー♪」
「私は早く帰ってお風呂に入りたいですわ」
『四星の絆』は自信と達成感に満ちた顔をしていた。
冒険者らしい顔になってきたな。
ムビは『四星の絆』の成長っぷりが誇らしくて目頭が熱くなった。
「ダンジョンの最深部ってボスが陣取っているイメージだったんだけど、違うのかな?」
「未踏破ダンジョンならそうですね。ここは冒険者がよく来るので、ボスはとうの昔に倒されていますね。ひょっとしたら、さっきのゴーレムが新しいボスとしてこの広間に居ついていたのかもしれません」
「そうなのかー。いつか、未踏破ダンジョンも攻略して、ボスと戦ってみたいなー♪」
「ははは。未踏破ダンジョンなんて、それこそAランク冒険者案件ですよ」
「じゃあなろうよ、Aランク冒険者」
ユリはまっすぐな瞳でムビを見つめた。
既にここではない、遥か先を見ているようだった。
「そうですね。『四星の絆』なら必ずなれると思います。僕が保証します」
ムビが笑うと、ユリもニコッと笑う。
「うん♪私がカッコよくボスを倒すところ、しっかり撮ってね、プロデューサーさん♪」
『四星の絆』は、広間にテントを張り、キャンプの準備を始めた。
今日はここで一泊し、明日『幽影鉱道』を帰る予定だ。
入口から最深部まで丸二日掛かったが、帰りは行きと違い採掘作業が無い。
一日あれば十分入口まで辿り着けるだろう。
「ねぇムビさん」
サヨがムビに話しかける。
「ここは最深部ですが、鉱石はなにか無いのですか?」
「そうですね・・・。ざっと感知してみましたが、わざわざ掘るような物は無さそうなんですよね」
100メートル圏内に無いことも無いが、既におよそ2億円分の鉱石を採掘している。
これだけあれば4人分の装備品を一新するには十分だし、なんなら余った分を売却して十分な利益を得ることができるだろう。
わざわざ採掘する必要も無さそうだとムビは判断していた。
「でも、ここは最深部なのでしょう?これまでは人に採掘され尽くした道を通ってきていたわけですが、この辺りにはまだ未発見のものがあるかもしれませんよ?」
確かに、大物がまだ眠っているとすれば、ここ最深部が一番可能性がある。
なかなか来られる場所ではないし、折角ならばしっかり探知してみるのも悪くない。
「確かにそうですね。一回、くまなく探ってみようと思います」
ムビはまず、通路側に最大限魔物探知を行った。
一方向に限定すれば、最大1キロ先まで探知が可能だ。
—――800メートル先に魔物がいるけど、こちらに向かってくる様子は無いな。
鉱石探知に集中しても良いだろう。
安全を確認して、ムビは鉱石探知に集中する。
鉱石探知は一方向に限定すれば、最大500メートル先まで探知が可能だ。
その状態で、ムビは広間をぐるりと一周することにした。
これなら、広間から半径500メートル以内の岩盤に埋もれている鉱石を探知できるだろう。
ムビは岩盤に手を当てながらゆっくりと歩き出した。
・・・おぉー、これだけ奥まで調べると、意外と大きな鉱石が見つかるなぁ。
でも、深過ぎるからわざわざ掘る必要はないかなぁ。
・・・うわっ、これめっちゃデカ!
200メートル先かぁ、ちょっと悩むなぁ。
・・・・・・!?
ムビはピタッと動きが止まった。
とてつもなく大きな金属の反応があった。
・・・レア鉱石ではないけど・・・なんだ、この巨大な金属は・・・?
ムビは角度を変えながら、金属の大きさの全容を調べる。
・・・立幅は、およそ10メートルか。
横幅は・・・5、6メートルかな?
厚みは・・・ああクソっ、ちょうど500メートル先で、この探知範囲じゃ測りきれないや。
一旦、他を調べてみよう。
ムビは一旦部屋を一周した。
いくつかめぼしいレア鉱石を見つけたが、やはり先程の反応が気になった。
よーし!さっきのところ、もう一回ちゃんと調べてみよう。
ムビは先程の位置に戻り、もう一度巨大な金属を探知する。
・・・やっぱ厚みが分からないなぁ。
よし、探知範囲を限界まで萎めて、奥行きを図ろう。
ムビは探知範囲を木の枝程の細さに萎め、更に100メートル探知範囲を拡大する。
・・・厚みは・・・・・・!!!!!?????
ムビは壁に手を当てながら固まった。




