第47話 『幽影鉱道』最深部
「さーて、だいぶ休んだし、そろそろ行きますか♪」
「レベルアップしたし、どれだけ強くなったか楽しみですね」
「帰ったら打ち上げね!Cランク昇格&万バズ&レベル20突破&億越え報酬を記念して♪」
「まぁまぁ、祝うことが多過ぎますわね」
休憩後、つるはしで密閉空間を崩し、一行は先に進んだ。
「さーて、レベル24がどんなもんか、試してみますかー♪」
道中、再びサラマンダーに遭遇したが、今度は後衛の魔法2発で仕留めた。
他の魔物も、金喰いスライム討伐前よりも簡単に倒せてしまう。
「いきなりレベルが6も上がると、かなり恩恵を感じますね!」
レベルが上がったことにより、採掘作業も更にスピードが上がった。
2時間後には、ダンジョン最深部ルートの踏破率90%に達した。
「楽勝楽勝ー♪」
「順調どころか、予定よりも早いペースで進んでいますね。恐らくあと2時間かからず、『幽影鉱道』を攻略できそうです」
『四星の絆』にはもはや死角が無かった。
レベル差を生かした圧倒的な戦闘力に加え無尽蔵のMP。
探知魔法により魔物に急襲されることは無い。
それどころか逆に急襲する始末。
動画もとんでもない内容ばかり撮れたし、帰ってからが楽しみだな・・・。
「ん・・・?」
鉱道の奥から、地響きが聞こえてくる。
なんだろう・・・?
魔物の足音・・・?
ムビは鉱物探知を一旦止め、魔物探知に集中し、探索範囲を広げる。
1体の魔物の反応がヒットした。
「かなり遠くに魔物がいるみたいです。ゆっくりですが、こちらに向かってきています」
「強いの?」
「分かりません。『幽影鉱道』の中ではサラマンダーが最強の筈ですが・・・」
進行方向上なので、このまま進めば遭遇することになる。
「ちょっとカメラをダンジョンの奥に飛ばして確認してみます」
1キロ以内ならカメラを操作できる。
ムビは浮遊カメラをダンジョンの奥に飛ばした。
すると、数百メートル先に大きな巨岩のモンスターの姿を捉えた。
「ゴーレムですね・・・」
「ゴーレムって・・・あの!?」
ゴーレム。
ドラゴンに匹敵する知名度を誇る、超有名モンスター。
巨人のような大きさに岩の体。
討伐推奨レベルは30で、Cランクに分類される。
「鉱道や砂漠などではダンジョン内に魔力が溜まり過ぎると、稀にゴーレムが発生すると聞きますが・・・モンスター災害の一種ですね」
「イレギュラーってこと?」
「ですね。ギルドに報告して駆除を依頼する必要があります。時間が掛かりますが、迂回路を探しましょうか」
「ねぇムビ君」
ユリが目を輝かせている。
「私達で倒せないかな?」
「ゴーレムをですか!?」
「うん。今の私達なら、イケると思うんだぁ」
確かに、『四星の絆』のレベルは24。
ムビのスキルサポートがあれば、討伐は可能かもしれない。
「私もなんとなくイケるような気がします」
「私もイケると思う。なんかすごく調子が良いし」
「危なくなったら逃げればいいですわ」
他のメンバーも、かなりやる気満々みたいだ。
自分達の実力を試したくてウズウズしているのだろう。
「分かりました。でも、無理はしないようにしましょう」
『四星の絆』は先に進んだ。
地響きがどんどん大きくなってくる。
前衛二人は臨戦態勢に入り、後衛二人も呪文の詠唱が済んでいる。
・・・いた。
ゴーレムだ。
5メートルを超える大きな体。
丸太のような太い腕。
まだこちらに気付いていない。
「皆、行くよ!」
サヨが魔法を発動する。
一瞬遅れて、ルリも魔法を発動する。
二発の魔法がゴーレムに直撃したのを確認し、ユリとサヨも一気に距離を詰めて、ゴーレムに技を叩き込む。
奇襲は成功した。
だが、ゴーレムは倒れない。
流石に強いな・・・。
「ゴオォォォォォォッ!!」
ゴーレムは攻撃されたことに怒り狂い、戦闘モードに入った。
丸太のような太い腕を振りかぶり、シノ目掛けて殴り掛かる。
『エンパワーメント』!
ムビはシノの防御力を上げた。
シノは盾でゴーレムの攻撃を受け、吹き飛ばされずその場で踏み止まった。
「ナイス、シノ!」
その隙にユリがゴーレムに切りかかる。
ムビはユリの攻撃力を上げる。
ゴーレムはユリの攻撃を腕で受け止めて、競り合った。
力はほぼ拮抗しているようだ。
前衛二人でゴーレムの足止めに成功している・・・!
これならいけるぞ・・・!
ユリとシノがゴーレムの足止めをしている間に、ルリとサヨの呪文の詠唱が終わった。
「二人とも離れて!」
ユリとシノがゴーレムから離れた瞬間、ルリとサヨが魔法を放つ。
どちらも、ムビの『エンパワーメント』によって威力が倍増している。
ゴーレムは魔法2発の直撃を受け、フラフラとよろめいた。
「今だ!」
ユリとシノが一気に距離を詰める。
「 「”双星の交錯”!!」 」
ゴーレムはユリとシノの渾身の合体技をまともにくらった。
「ゴ・・・ゴォ・・・」
ゴーレムの体に亀裂が入り、そのまま砕け散った。
ゴーレムの討伐に成功した。
「すごーい!ゴーレムまで倒しちゃった!!」
「やっぱりイケたね!!」
ユリとシノが笑顔でハイタッチを交わす。
すぐさま、ステータスウォッチを確認する。
「おーっ♪レベル25に上がってるー!」
「私も25になってる!」
抱き合う2人に、ルリとサヨも駆け寄る。
「もうCランクの魔物も倒しちゃいましたわね」
「ひょっとして私達、天才なんじゃないかな!?♪」
ルリが有頂天になっている。
「ははは・・・皆さん凄いですね」
驚いたな、勝てるとは思っていたけどこんなに一方的に倒すなんて。
『白銀の獅子』が同じレベル帯のときは、ここまで強くはなかった。
Cランクの魔物は討伐推奨レベル20〜40に設定されている。
ゴーレムはレベル30だから、ちょうどCランクの魔物としては平均的な強さだ。
もう既に、『四星の絆』はCランクの冒険者としても十分やっていける実力がありそうだ。
『幽影鉱道』ではもう物足りないかもしれない。
ムビはゴーレムの討伐推奨部位を保存袋に入れた。
Cランクの魔物は討伐報酬が100万円なので、これだけでも本来は十分な報酬だ。
純金核とレア鉱石、合わせて4億円程の報酬があるので霞んでしまうが・・・。
「さぁて、さっさと攻略してうまい酒飲みに帰りますか♪」




