第45話 四人合体技
あとは金喰いスライムをなんとか討伐するだけだ。
「金喰いスライムは防御力がとても高いです!最大の一撃で攻撃してください!密閉空間なので魔法の使用は控えましょう!ルリさんとサヨさんは牽制をお願いします!」
『四星の絆』は一斉に金喰いスライムを攻撃する。
ムビはスキル『エンパワーメント』を使い、サヨのステータスをユリとシノに半分ずつ振り分ける。
「”七星剣”!」
ユリが攻撃を繰り出すが、金喰いスライムは素早い動きで攻撃を躱す。
「シールドバッシュ!」
躱した金喰いスライムを狙い、シノが攻撃をヒットさせる。
金喰いスライムは壁にぶつかり、ポテっと地面に落ちるが、全くダメージが無い様子だ。
「ノーダメージですか……」
そのまま密閉空間で10分程戦闘を続けた。
ユリとシノの攻撃が何度か当たるが、金喰いスライムにダメージは無いようだ。
「くそーっ!折角金喰いスライムを閉じ込めたのに!」
「私達のステータスでは、まだ討伐は不可能ということでしょうか……」
ムビは金喰いスライムの討伐方法を模索する。
金喰いスライムは体力が低い……。
1ダメージで良いから削る方法を見つければ、なんとかなるのに……。
今できる最大の攻撃は……。
「ユリさん、シノさん!なんとか合体技を当ててください!」
「OK!分かった!」
ムビ、ルリ、サヨの3人で金喰いスライムを追いかけ、金喰いスライムの動きを誘導する。
金喰いスライムは3人を回避しながら、ユリとシノの前に来た。
「 「”双星の交錯”!!」 」
ユリとシノの合体技が発動する。
しかし、金喰いスライムに躱されてしまった。
「やっぱり合体技当てるのは難しいよーっ!」
「大丈夫です、今のは惜しかったです!動画的にはめちゃくちゃ映えてますよ!当たるまで頑張りましょう!」
『四星の絆』は更に10分間、金喰いスライムと格闘を続ける。
そして、ついにその時が来た。
「 「”双星の交錯”!!」 」
数十回目のトライで、金喰いスライムに合体技がヒットした。
ユリとシノの通常の攻撃の、何倍もの威力の一撃が固い黄金の体に叩き込まれる。
サヨのステータスを二人に振り分けているため、威力は更に底上げされている。
金喰いスライムは吹き飛ばされ、ピンボールのように密閉空間を跳ね回った。
「手ごたえあり!これなら……」
金喰いスライムは空中で体勢を立て直し、地面にポテっと着地した。
そして今までのように素早く動き回る。
どうやらノーダメージのようだ。
「そんな……”双星の交錯”で倒せないなんて……」
「これは本当に無理そうだね……」
『四星の絆』にあきらめムードが漂った。
ムビも大技の魔力消費を何度も立て替えているため、MPの消費量が激しい。
このまま続けても徒にパーティが消耗するだけだろう。
くそっ……折角、金喰いスライムを倒せるチャンスなのに……。
「皆さん、”双星の交錯”以上の威力の技は何かありませんか?」
「……一応、あることにはあるけど……」
「……金喰いスライムに当てるのは不可能というか……」
「あるんですか!?どんな技ですか!?」
四人がそれぞれ顔を見合わせる。
「四人合体技です」
四人合体技……。
”双星の交錯”が二人の息を合わせる技なら、四人合体技は四人の息を合わせて発動する技だ。
ムビも聞いたことはある。
だが、それはAランクパーティでも使用不可能と言われている、難易度の高いロマン技だ。
二人でも息を合わせるのは大変なのに、四人で息を合わせるのは実戦では不可能だ。
成功させているシーンは『Mtube』でも見たことが無い。
「四人合体技、できるんですか!?」
「はい。皆で試しにやってみたら、成功したことがあって……。でも、発動に時間がかかるし、四人全員集中する必要があるんです。それに実戦ではやったことがないし……。成功したとしても、とても金喰いスライムに当てることはできないと思います」
ムビは考える。
ということは、金喰いスライムの動きを完全に封じることができれば可能性はあるかもしれない。
考えろ……何か方法は無いか……?
しばらく考え、ムビがルリに話しかける。
「ルリさん、ダンゴールのときの要領で、”奈落の泥流”を試してみましょう」
「”奈落の泥流”?良いけど、でもダンゴールよりずっと動きが速いし、当てられる自信無いけど……」
「大丈夫です。金喰いスライムの回避行動には規則性があります。皆さん、3人で一斉に金喰いスライムに飛び掛かっていただいてもいいですか?」
ムビの指示を聞いて、ユリ、シノ、サヨが金喰いスライムに飛び掛かる。
すると、金喰いスライムは、横の壁を跳躍して3人を躱す。
「今みたいに、通路を塞ぎながら一斉に飛び掛かると、金喰いスライムは必ず壁を跳躍して回避するんです!飛び掛かる瞬間に、壁を”奈落の泥流”で泥濘にしてください!」
「わ……分かった!」




