第43話 Dランク最強種の魔物
『四星の絆』は目を覚ました。
スマホで時間を確認すると、ちょうど朝の6時。
9時間程眠ったようだ。
朝食や身支度に1時間ほど費やし、再び探索を開始する。
「今日の目標はダンジョン最深部攻略です。魔物も強くなってくるので、気を付けていきましょう」
探索を開始した『四星の絆』は、昨日に引き続き快進撃を続けた。
出現する魔物はダンジョン浅層部と比べて平均討伐レベルが2~3程高いが、何の問題もなく討伐していった。
鉱石もどんどん採掘し、保存袋の中は煌びやかな輝きでいっぱいになった。
4時間後、ダンジョン最深部ルートの70%を踏破した。
「ここで昼食がてら休憩していきましょうか」
ムビは結界のスクロールを展開する。
「ふいー、疲れたー」
「ムビ君、スタミナポーションお願い」
「どうぞ」
昨日からぶっ通しでダンジョン攻略を進めているが、スタミナポーションとムビの魔力支援により、『四星の絆』は体力・魔力ともに元気いっぱいだった。
レベルも全員18に上がっている。
「ムビさん。鉱石の重さ、物凄いことになってると思うんですけど、大丈夫ですか?」
昼食を食べながらシノがムビを気遣う。
既に採掘したレア鉱石の重さは1トンに迫る程だった。
「大丈夫です。高級な保存袋が複数あると、こういう使い方ができるんです」
ムビはマトリョシカのように、保存袋の中から保存袋を取り出す行為を4回行う。
「この魔法袋は軽量化魔法が掛かっているので、こうするとどんどん軽くなるんです。保存袋は5個あるので、これだけあると実質持ち物はほぼ制限なく持てますね」
軽量化魔法は重さを5分の1にする。
鉱石が1トンとすると、魔法袋に入れることで200キロ。それを2つ目の魔法袋に入れることで40キロ。それを3つ目に・・・と繰り返すことで、鉱石の重さは300~400グラム程度になる。5階層目の魔法袋を鉱石用に、4階層目を魔物の討伐証明部位や素材、3階層目にその他荷物を格納し、ムビの荷物の総重量は2キロにも満たなかった。
「なるほど、これはお金を出す価値がありますね」
「1億円が出せるならの話ですが」
「ははは・・・まぁ、これはAランク冒険者あるあるのテクニックです」
本当は最高級の、状態保存魔法が掛けられている魔法袋が欲しかったが、それは1つ5億円もするので流石に購入をためらった。
もしもこの魔法袋を5つ揃えることができれば、古の魔法『異空庫』に匹敵する収納が可能になる。
「さて、それじゃあそろそろ1時間くらいになりますし、出発しましょうか。ここからはダンジョン深部なので、出現する魔物もDランク上位種ばかりになります。気を引き締めていきましょう」
『四星の絆』は最深部に向けて進み始めた。
程なく、四体の魔物と遭遇する。
「サラマンダーですね」
サラマンダーは全身炎で覆われた体長3メートル程のトカゲだ。
別名"前衛殺し"。
接近戦を挑むと体表の炎で火傷するためだ。
毎年多くの冒険者を殺傷している強敵だ。
討伐推奨レベルは、Dランク最強の20となっている。
これまでで最も討伐推奨レベルが高く、パラメータ的には『四星の絆』より格上の魔物だ。
「""氷嵐の咆哮""!」
事前に探知して戦闘準備をしていた『四星の絆』は、後衛の呪文詠唱が完了していた。
サヨの氷属性の中級範囲魔法を食らったサラマンダーは怯む。
流石に一撃は無理か・・・。
でも、これでサラマンダーの体表の炎は消えた。
今なら接近戦に持ち込める!
更にルリが中級範囲魔法を発動し、サラマンダーは大ダメージを受け動きが鈍る。
そこにユリとシノが接近し、一気にサラマンダーを討伐した。
「凄い・・・サラマンダーをこんなにあっさり・・・」
通常のDランクパーティなら、全滅するか一目散に逃げだしているところだ。
探知とパラメータ倍加があるとこんなに強いなんて・・・。
「サラマンダーは『幽影鉱道』で出会う魔物の中では最強です。それをこれだけ簡単に倒せるなら、もうダンジョン内の魔物で敵はいないと思います」
「ふえーっ!中級ダンジョンをこんな簡単に攻略しちゃっていいの!?」
「本当にムビさんさまさまですね」
強敵を倒していく度に、『四星の絆』はムビのありがたさを実感していく。
「では、討伐証明部位を回収しましょうか・・・ん?」
ムビの探知魔法に、不思議な反応があった。
「どうしたんですかムビさん?」
「いえ・・・。魔物が1体こちらに向かってきているみたいなんですが、不思議な感覚で・・・」
魔物探知に引っかかるのは何も不思議ではない。
だが、ムビが解せないのは鉱物探知にも引っかかっていることだ。
しかもレア鉱物。
なんだこの反応は・・・?
魔物であり、レア鉱物・・・?
しばらく考え―――ムビは突然目を見開いた。
・・・まさか・・・!?
「み・・・皆さん!急いで戦闘準備を!!」
「ど・・・どうしたんですか?」
「金喰いスライムがこっちに向かってきます!」
「「「か・・・金喰いスライム!!?」」」




