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第38話 『白銀の獅子』とミラ・ファンタジア4

「さぁ、それでは『白銀の獅子』とミラ・ファンタジアの世紀の対決が間もなく始まります!実況は私イナズマと、解説はオカダさんです!オカダさん、遂にミラが決闘(デュエル)に参戦です!」

「そうですね。いくら人気冒険者パーティの『白銀の獅子』とはいえ、今回ばかりはミラに注目せざるを得ませんね。どれほどの実力があるのか興味深いです」

「ミラは臨界者です!これまで魔物を相手に戦うことはありましたが、対人戦の経験は殆ど無いということです!これが対戦にどのような影響を及ぼしますかね?」

「魔物と人間では戦い方がまるで違います。経験では『白銀の獅子』が圧倒的に優勢でしょうな。それに、いくら臨界者とはいえたった一人で挑むとは、決闘(デュエル)を舐めていると言わざるを得ません。4対1は倍のレベル差を覆すことも可能なんです。まして相手は百戦錬磨の『白銀の獅子』。ミラは苦戦すると思いますよ」

「両者、拮抗しているということですね!オッズは、6対4でミラ有利と予想されています!果たしてどのような戦いが繰り広げられるのかッ!」


『白銀の獅子』とミラが開始位置に並ぶ。


「それでは、試合開始ィィィィィッ!!!!!」


『白銀の獅子』はリゼとマリーが詠唱を始め、ゼルとゴリが後衛を守る様に身構える。


「『白銀の獅子』、本日は慎重な立ち上がりィッ!!いつものように、ゴリの『殴られ屋』は行いません!!」

「前回はそれが原因で敗北しましたからな。今日の『白銀の獅子』に油断は一切ありません。我々は今日初めて、『白銀の獅子』の本気を目の当たりにするでしょうな」

「ミラも動きません!両者相手の出方を伺っているのかッ!!?」

「これはミラの判断ミスと言わざるを得んでしょう。『白銀の獅子』後衛二人の詠唱が終わってからではペースを握られてしまいます。ミラがこのまま様子を伺うならば、『白銀の獅子』は魔法でミラを攻撃し、その隙に前衛二人が一気にミラを叩くと思います。そうなると4対1の弊害がモロに出ますぞ」


 ミラは開始線から一歩も動かず、観客席を見回していた。


「ええのぅ、凄い熱気じゃのう♪決闘場は楽しい所じゃな♪」


 ミラは最近ショート動画でバズっている踊りを披露して、会場はドッと沸く。


「あぁーっとミラ!!挑発的なパフォーマンス!!これはお客さん大喜びだっ!!!」

「愚かな・・・神聖な決闘を『Mtube』の企画か何かと勘違いしているのでしょうな。初出場で調子に乗って、無様に敗北した冒険者を私は何度も見てきましたよ」

「まもなく呪文の詠唱が終わります!ここから試合が動きそうです!」


 リゼとマリーは呪文の詠唱が完了し、そのまま待機した。


「いいか?できるだけ派手にぶっぱなしてくれ。その隙に、俺とゴリがあいつに最大の一撃をブチかます。俺とゴリは技を叩き込んだらすぐに後退して防御に集中。リゼとマリーはすぐに次の呪文の詠唱開始。攻めるのは、魔法を発動した直後だ。これを徹底するぞ」

「OK。いつでもいいわよ」


 ミラは次の踊りを披露している。

 会場は再び大いに沸いた。


「あの野郎、舐めやがって・・・」

「この隙に距離を詰めるぞ。俺達が中央線に到達したら、魔法を発動してくれ」

「分かったわ」


 ゼルとゴリがジリジリと距離を詰める。

 ミラは『白銀の獅子』に一瞥もくれることなく笑顔で踊り続けている。

 間もなく、ゼルとゴリが中央線に到達する―――


 ―――ゼルの足が、中央線を超えた。


「”灼熱の嵐(フレアストーム)!”」

「”断罪の光(ジャッジメント)!”」


 リゼとマリーの渾身の上級魔法が発動する。

 ミラの周囲を爆炎が包み込み、聖なる光が降り注ぐ。

 爆発音が会場に響き渡り、土煙が舞い上がった。


「行くぞっ!」


 ゼルの掛け声で、前衛二人は一気にミラに襲い掛かる。


「"終焉の絶剣(ニルヴァーナ)"!」

「”究極の突進(ギガインパクト)”!」


 土煙の中の、ミラの影を完璧にとらえて―――




「おっ、ようやく来たか?」




 バチイィィィィィィン!!


 ―――ミラのデコピンにより、ゼルの剣は折れた。


 ・・・バ・・・バカな・・・・・・・!!???


「ゴ・・・ゴリっ!!止まれっ!!!」


 ゼルが咄嗟に声をかけるが、ゴリは止まれない。


 ミラの左手がゴリの額の前に掲げられ―――


 バチイィィィィィィン!!


 ―――ミラのデコピンにより、ゴリは地面と水平に吹っ飛んだ。

 そのまま壁に激突し、起き上がってこなかった。


「おぉーーー、綺麗に飛んだのう!我ながらナイスコントロールじゃ♪」


 言うと、ゼルの視界からミラの姿が消えた。

 ミラは一瞬で、十数メートル先のゴリの前に移動していた。


 ・・・な・・・なんだ今の速さは・・・!!?まるで動きが見えなかった・・・


「ほーれ♪ワシの初KOじゃ!ピースピースゥ♪」


 ミラは気絶しているゴリの髪を掴んで顔を引き上げ、カメラに向かって笑顔でピースをした。


「な・・・ななななななんとぉぉぉぉぉぉぉ!!!?デコピン1発で、あの屈強なゴリをKOしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!???しかもゼルの剣を叩き折っているぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!オ・・・オカダさん、これは・・・??」


 オカダは眼球が飛び出る程目を見開き、喋ることができなかった。


 ミラはひとしきりカメラに向かってピースを続けると、ゴリの髪から手を放す。

 ゴンッと鈍い音を立ててゴリの頭部が地面に落ちた。


「えーと、セオリーでは・・・回復役を狙うんじゃったかのう」


 ミラは一瞬でマリーの目の前に現れた。


「え・・・?」


 マリーは構えることすらできず、ミラのデコピンを食らった。

 吹き飛ぶマリーはリゼにぶつかり、二人まとめて壁に激突した。

 二人ともそのまま動かなくなった。


「おぉー!ガキの頃以来のおはじきじゃが、腕は衰えとらんのー♪」


 な・・・なんだこれは・・・戦いにすらなっていない・・・


 状況を整理する暇もなく、横から溜息が聞こえた。

 ゼルの顔が引き攣る。

 真横にミラが立っていた。


「あのな、お前ら弱過ぎるぞ?普通にやったら観客が盛り下がるじゃろうが・・・。どれだけワシに気を遣わせれば気が済むんじゃ?・・・まぁいい。最後は駒回しじゃ♪」

「ま・・・待て!降参・・・」


 バチイィィィィィィン!!


 ミラのデコピンはゼルの顎を掠め、ゼルはその場で高速回転する。


「ほーれ、ピースピース♪」


 ミラは回転するゼルの横に立ち、カメラに向かって笑顔でピースをする。

 ゼルはそのまま10秒程駒のように回転を続け、パタリと倒れた。


「け・・・決着ぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!これがッ!!!ミラ・ファンタジアだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」


 会場は割れんばかりの大熱狂に包まれた。

 どこからともなくミラコールが沸き上がり、収まる気配がない。


「オカダさん!!・・・・・・・・!!!」


 実況席の声が、観客の歓声で最早聞こえない。

 そんな中、ミラにマイクが渡される。


「おはこんばんにちはー!ミラでーす!初めての決闘楽しかったぞーい♪まっ、ワシ最強だから、こんなもんかな?かっかっか!ではまたのー♪」


 万雷の拍手と共に、ミラは会場を後にした。

お読みいただきありがとうございます。


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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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