表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/193

第36話 『白銀の獅子』とミラ・ファンタジア2

「なぁなぁ、いつもどんな風に編集しておるのじゃ?」

「いや、特段変わったことは何も・・・」

「ちょっとコツを教えてくれんかのう」

「コツ!?・・・いや、ははは、どうでしょう、適当に作っているだけなので・・・」

「あの動画を適当とな!?つくづく天才よのう♪確かに口では説明しづらかろう。ちょっと編集風景を見せてくれんか?」

「えぇッ・・・!?今からですか・・・!!?」

「うむ、今からじゃ♪構わんじゃろう、ゼル?」


 ゼルは苦笑いした。


「まぁまぁミラさん。今日はスケジュールが詰まってますし、それはまた今度にしましょう」

「えー嫌じゃー!ワシはそれを楽しみに今日来たんじゃ!見せてくれないなら帰るぞい」


 ミラが頬を膨らませて可愛く駄々をこねる。

 ミラのことだ、機嫌を損ねて本当に帰ってしまう可能性がある。


「・・・分かりました。おい、編集風景を見せてやれ」

「・・・えぇっ!?ゼルさん!!?」

「おぉ!楽しみじゃのう~♪」


 新人は不安な目をしてしばらくゼルを見つめるが、観念したのか、PCを持ってきた。


「い・・・いつもこのPCで作業しています・・・」

「おぉ!この編集アプリはワシも使っておるぞ!お揃いじゃ♪」

「ははは・・・そうですか、それは良かった・・・」

「じゃあちょいと、今日制作予定のを編集してみせてくれんかのう」

「・・・わ・・・分かりました・・・」


 新人はゴクリと唾を飲み、適当に未編集の動画を選択して編集を開始する。


「・・・ふむ。ここまでは、ワシと変わらんようじゃな」


 新人は手を震わせながら動画を編集していく。

 ミラは無言で編集画面をじっと見つめ続ける。


「・・・いやーしかし、動画編集に興味を持つなんて、ミラさんも勤勉ですねー!」

「いやー全くだ!流石トップ『Mtuber』!俺も見習いたいぜ、ははは・・・」


 ゼルはさり気なくミラに話を振るが、ミラは編集作業を見つめたまま全く答えない。

 撮影の間を持たせるために、ゼルとゴリで会話のキャッチボールを続ける。


「いやー、ミラさん真剣ですねぇ!ははは・・・」


 ミラは答えない。

 そんな状態で10分程時間が過ぎる。


「お主」


 ミラが突如口を開く。


「その文字フォントを使うのか?」

「えーと、はい・・・。そうですが・・・」

「いつものフォントと違うのではないか?それに、そのフォントは少しダサくないか?」

「あっ・・・!ははは、間違えてました・・・いつもの使いますね・・・」


 新人は文字フォントを探す。


「いつも使うフォントなら、お気に入りに登録しておるはずじゃろう?」

「・・・あぁ、このPCは買い替えたばかりで、実は設定が初期化してるんです・・・。また設定するのが大変で、ははは・・・」

「お主、手が震えているようじゃが、大丈夫か?」

「・・・えっ!?アッ、ハイ、ダイジョウブです・・・」


 新人の手がカタカタ震えている。

 手汗でマウスがビショビショだ。


「えぇっと、どれだったっけ・・・。すみません、いつも登録してるのを選んでたから、忘れちゃって・・・」

「・・・まぁよい。続けてよいぞ」


 新人は震える手で動画編集を続ける。


「お主」


 またミラが口を開く。


「その編集は少々甘くないか?」

「・・・あっ、すみません・・・。これは後程、更に手を加えようと思ってまして・・・」

「後程手を加えるだと?もう15分程経過したが、まだ30秒分しか編集しておらんではないか。『白銀の獅子』の動画は平均30分以上の尺じゃぞ?15時間以上かけて編集したあと、また手を加え直すというのか?そもそも、編集した30秒の動画も、いつものクオリティと比べたら天と地ほどの差があるぞ?そのペースで毎日2本の動画を投稿できるのか?」

「・・・あ・・・あはは・・・今日はどうも調子が悪いみたいで・・・」

「お主、本当に『白銀の獅子』の動画を作っておるのか・・・?」


 新人は、もう限界とばかりにゼルの方を見る。

 ゼルはゴリに目配せして合図を送る。

 ゴリは、ソファーの裏からテロップを取り出して、大声を出す。


「・・・じゃじゃーん!ドッキリ大成功ーーー♪」


 ゴリが満面の笑みを浮かべて「ドッキリ大成功」と書かれたテロップを頭上に掲げていた。

 ミラは口を開けてゴリの方を見ている。

 ゼルがすかさず笑顔で説明する。


「いやーミラさん。実は、一人で動画編集をしていたというのは本当なのですが、そいつが止むに止まれぬ事情によりパーティを抜けてしまいまして・・・。こいつは、新人なんです。『動画編集者』が入れ替わっていたらミラさんは気付くのか?という検証を実はしていたんです。いや、流石ミラさん!あっという間に見抜かれましたね、ははは♪」


『白銀の獅子』は全員笑顔で拍手をする。

 ミラもそれに釣られて笑顔を浮かべる。


「かっかっか!なんじゃ、ドッキリだったのか!道理でな、ワシより数段動画編集が下手なもんで、おかしいと思ったんじゃ♪」

「いやー、参りました!よっ、流石トップ『Mtuber』♪」


 和気あいあいとした雰囲気になり、新人もようやく安心したようだ。


「もう!ほんと昨日、ゼルさんが前担当者のフリをしろって言うから、緊張して夜も眠れなかったんですからね!」

「いやー悪かった!ははははは♪」


 どうやら上手くいったようだ。

 ミラのドッキリなんて、『Mtube』初なんじゃないか?

 この動画はきっと伸びるぞ、楽しみだ。


 ミラは笑顔のままソファから立ち上がり、背伸びをした。


「それじゃ、ワシは帰るとするかのう」

「えっ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ