第28話 決闘4
マリーを撃破した直後も、『四星の絆』は迅速に動く。
ルリとサヨはいつの間にか前進しており、リゼの方へ向かっている。
ユリとシノもそのままリゼの方へ向かう。
4人がかりでリゼを叩くつもりだ。
「させるかっ!」
ゼルがリゼの元へ駆けつけようとする。
その動きを見て、ユリがゼルへ方向転換し、ゼルの前に立ちはだかる。
「さぁ!早くも戦いは最終局面に突入しております!オカダさん、どのように見られますか?」
「『白銀の獅子』は回復役のマリーを失っているので、立て直しが厳しい状況ですね。早々に回復役を狙ったのは、『四星の絆』の素晴らしい判断です。ただ、『白銀の獅子』ならばあるいは・・・というところでしょう」
「場は、ゼルとユリの剣士同士のタイマン、リゼが3人に囲まれるという状況になりました!」
「ここはリゼを狙い打って3人が積極的に攻撃を仕掛けるでしょうね。ユリは逆に、リゼが倒れるまでゼルを引き付ければいいので、防御的な立ち回りをするでしょう」
「『白銀の獅子』が逆転するには、ここからどうする必要があるでしょうか!?」
「ゼルにかかっていますね。ゼルがこのタイマンにできる限り早く勝利し、リゼの応援に掛けつける必要があります。そして2対3の状況を作れば、十分逆転可能です」
「なるほど!さぁー、果たしてどうなるのか!!?」
リゼの周りをシノ、ルリ、サヨが包囲する。
「くそっ!3対1なんて卑怯よ!?」
なんでこんな状況になってんのよ・・・!?
楽勝の筈だったでしょう!?
15レベルって情報は嘘だったってこと!?
リゼは魔法を放ち、3人が攻めてこないように牽制する。
隙を付いて、シノが接近を試みる。
「させるかっ!」
リゼは魔法を放ち、シノを追い払う。
再び三人はリゼを包囲しながらじりじりと隙を伺う。
この盾持ちの女はゴリをダウンさせる程のパワーがある!
絶対に近づけるわけにはいかない・・・!
他二人も相当な威力の魔法を使うから気を抜けない!
・・・それにしてもこいつら、一遍に襲ってこないのはなぜ・・・?
シノ、ルリ、サヨの三人は、周りを包囲しながら隙を伺うだけで、一向に襲ってくる気配がない。
リゼは牽制に魔法を放ち続ける。
攻めに転じたいところだが、強力な呪文を使用すれば詠唱の隙を付かれ一気に終わりかねない。
相手の攻めが甘い今、このまま牽制を続けるのが無難だろう。
「『四星の絆』の3人は、なかなか攻めませんね」
「恐らく勝ちを目前に慎重になっているのでしょうな。決闘初心者にありがちな行動です。愚かな・・・ここは一気に攻めないと、逆転を許しますよ」
一方、ユリとゼルは剣を構え向かい合っていた。
ゼルは隙を伺う。
こいつは俺の足止めに集中するだろう。
なんとか隙を付いて、一気に終わらせないと・・・。
—――というゼルの考えとは裏腹に、ユリが距離を詰めてくる。
・・・なんだと!?
そのまま鍔迫り合いになり、激しい斬り合いが始まる。
「あーっとユリ、積極的にゼルに斬りかかるー!!」
「経験の浅さがもろに露呈していますな・・・。もし敗れれば2対3状況になり『白銀の獅子』の反撃体制が整ってしまいますよ。それに、相手は『白銀の獅子』エースのゼルです。奇襲で2人倒せましたが、いくらなんでもタイマンで敵う相手ではありません。調子に乗って墓穴を掘りましたな」
馬鹿が!調子に乗って突っ込んで来やがって!こいつをさっさと倒して、リゼの援護に・・・
ガキィィン!
ユリの剣の一撃により、ゼルは吹き飛ばされる。
「あぁーっとゼル選手吹き飛ばされたぁぁーーー!!!そのままユリが襲い掛かるーーー!!!」
・・・何だこいつの剣の重さは・・・!?
しかも速い・・・!
斬り合いは徐々にユリがゼルを押し込む展開となる。
「ゼ・・・ゼルが完全に押されてるーーー!!!オカダさん、どうですか!!?」
「・・・なんじゃこりゃ・・・。私にも、何が起きているのか・・・」
・・・違う!こいつが強いだけじゃない・・・!
俺の動きが鈍くなっている・・・力も全然出ない!
この調子の悪さ、まるで・・・
ゼルは壁際まで追い詰められる。
息も絶え絶えだ。
ユリが勝負を決めようと突っ込んでくる。
追い詰められたゼルは一縷の望みをかけて渾身の技を放つ—――
「くそっ・・・"終焉の絶剣"!」
—――だが、あっさりユリに受け止められた。
・・・馬鹿な!?
返す刃が、ゼルを捉える—――
「”七星剣”!」
高速の7連撃がゼルに命中し、ゼルは吹き飛び壁に激突した。
そのまま起き上がってくることは無かった。
「・・・ゼ・・・ゼル、まさかまさかのダウンーーーー!!!『四星の絆』ユリ、なんとタイマンでゼルを撃破しましたァァァーーーーーー!!!!」
「・・・んなアホな・・・」
会場は歓声と悲鳴が交錯する狂乱の坩堝と化した。
「すげぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ゼルーーーーーーー!!」
「ゼル様ーーーーーー!!」
「俺の金がーーーーー!!」
ユリはすぐさまリゼの方へ駆けつけ、4対1の状況が完成する。
「お疲れ、ユリ」
「うん、お待たせ♪」
勝ちを確信した『四星の絆』は一気にリゼに襲い掛かる。
リゼはひとたまりもなく、四方から攻撃をくらい地面に倒れる。
ダメージが大き過ぎて、自力で立つことができない。
「く・・・くそ・・・こんな雑魚パーティーに・・・」
そこに、サヨが歩み寄る。
「あらあら。こんなところで這い蹲って、どうされましたの??」
リゼは自分の中の何かがブチ切れる音が聞こえたが、体がついてこない。
「お前・・・いつか絶対殺してやる・・・!」
「まあまあ。御目目いっぱいに涙を浮かべて、お可愛いこと」
くすっと微笑むと、サヨは魔法を発動する。
リゼはサヨの笑顔を見つめたまま気を失った。
「決着ゥゥゥーーーーーー!!!なんとなんと、勝者、『四星の絆』ーーーーー!!!!!史上最大の大番狂わせだーーーーーーーーー!!!!!」
「いや・・・凄いとしか言いようがない・・・ニュースターの誕生です・・・」
「『白銀の獅子』、初の黒星!連勝記録は18でストップしました!」
会場は大熱狂に包まれた。
『四星の絆』は笑顔で観客に手を振る。
「それでは勝利者インタビューです!」
マイクがユリに渡される。
配信画面に、ユリの顔のアップが映る。
「皆さんこんにちは♪『四星の絆』です☆私達、アイドルと冒険者活動をやってます!良かったら応援よろしくお願いします♪『Mtube』のチャンネル登録もよろしくーーー♪♪」
会場から大歓声が上がった。
「可愛いーーーー!!」
「こっち向いてーーー!!」
「今日から推しますーー!!」
大歓声を浴びながら、『四星の絆』は戦闘フィールドから退場した。
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