第26話 決闘2
ムビは相手ベンチの方を見た。
見たことのない男が座っている。
あれが、新しい『白銀の獅子』の『動画編集者』か。
「もう始まるので、僕もベンチに向かいます。大丈夫です。必ず勝てます」
ムビは『四星の絆』に声を掛け、ベンチに向かった。
『動画編集者』はベンチから動画を撮影し、『Mtube』に後日動画を上げることが許可されている。
ベンチは流れ弾から『動画編集者』を守るための屋根付きの防護結界が張られており、観客席から中が見えない作りになっている。
『四星の絆』と『白銀の獅子』。
互いの戦闘要員4人が揃ったところで、場内にマイクの音声が鳴り響いた。
「レディース・エン・ジェントルメーン!只今より、『白銀の獅子』と『四星の絆』の決闘を開始いたします!皆さん準備は良いですかぁーーーーー!!?」
観客が大歓声で答える。
「それではまずは『白銀の獅子』の選手の紹介から!今最も勢いのある冒険者パーティを纏めるカリスマ!剣も魔法も自在に扱う天才!リーダー、ゼルゥーーー!!!」
「お前らにとって最初で最後の夢の舞台だ。しっかり噛み締めろよ?」
ゼルが冷笑を浮かべている。
「どんな攻撃も効かぬ鋼の肉体!圧倒的な怪力で敵をねじ伏せる重戦車!戦士、ゴリィーーー!!!」
「へへへ・・・たっぷり可愛がってやるぜ」
ゴリは首をポキポキ鳴らす。
「美しき魔女!若くして大魔道の領域に辿り着いた魔法の天才!魔法使い、リゼェーーー!!!」
「はっ、ようやく殺せるわ♪特に黒髪ツインテールのあんた、覚悟しなさい?」
リゼは侮蔑を込めた冷たい視線を送る。
「回復!光魔法!バフ!攻撃も補助も何でもござれ!神官、マリィーーー!!!」
「どうぞお手柔らかに」
マリーがペコリと頭を垂れる。
「続いては、なんと現役アイドル!Dランクパーティ!!?一体どこに勝算があったんだッ!!?でも可愛さなら誰にも負けないッ!可愛いだけじゃ駄目ですかッ!!?『四星の絆』の紹介です!まずはリーダー、盾持ちのシノォーーー!!!」
シノに大歓声が降り注ぐ。
シノはペコペコとお辞儀をする。
「剣使いのユリィーーー!!!」
ユリは笑顔で観客に向かって手を振る。
「魔法使いのサヨォーーー!!!」
サヨはスカートの裾を摘まんでお辞儀する。
「僧侶のルリィーーー!!!」
ルリは緊張で固まっていた。
「実況は私イナヅマ、解説はおなじみオカダさんでお送り致します!オカダさん、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「まずはオカダさん、この一戦、どう見られますか」
「『白銀の獅子』の圧勝でしょう。勝負になりませんな」
「ブックメーカーによる賭けのオッズもなんと、『四星の絆』300倍!『白銀の獅子』は過去18戦18KO、その中にはAランクパーティも含まれています。対する『四星の絆』は決闘初参戦、しかもDランクパーティです。オカダさん、なぜこのような対戦が組まれたのでしょうか?」
「恐らく、KO記録の更新が狙いでしょうな。国内の連続KO記録は19。『白銀の獅子』は、この試合KOするとそれに並びます」
「『四星の絆』は敗北すると『白銀の獅子』に吸収されることになっています。予定調和の八百長試合なのではないかという意見もあります」
「確かに、新メンバーの紹介としては絶好の舞台ですな。個人的には、決闘をそのように使うのはいかがなものかと思いますがな」
「果たして、『四星の絆』はどこまで食い下がることができるのか!それではここでルール説明です!戦闘フィールド内で4対4の戦闘を行います!制限時間1時間の間に全滅あるいは降参宣言させることができればKO勝ちとなります!制限時間1時間が過ぎたら判定に移り、ジャッジ3人から、より多くの支持を受けたパーティの判定勝ちとなります!また、ベンチには戦闘不参加のパーティが待機しておりますが、このメンバーは補助魔法、回復魔法の使用が認められております!観客席とベンチには攻撃が届かぬよう、防御結界が張られております!」
「しかし、たった3日でスタジアムを満員にするとは流石『白銀の獅子』だね」
「そうですね!本日はチケット完売!また、PPVは10万を超えています!流石は人気の『白銀の獅子』、凄い数字ですねオカダさん!」
「いやー、相手が強いパーティだったら、この倍は超えるんじゃないの」
両パーティが開始線に並び終えた。
ムビは、『エンパワーメント』の発動に備え、集中する。
「それでは、試合開始です!」




