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第21話 ムビと『白銀の獅子』の接触3

『白銀の獅子』の4人はムビの家に向かっていた。

 ゴリがゼルに話しかける。


「しかし、あいつ確か『四星の絆』って美少女アイドルのパーティに加入していたよな。あんな羨ましいところにいて、俺達のパーティに来るかな?」

「なぁに。俺達みたいな超大物に再加入を提案されたら間違いなく飛びつくだろ。それに、そろそろあいつの無能もバレて、愛想尽かされている頃さ。今頃一人寂しく飯でも食ってるんじゃねーの?」

「それもそうだな!がっはっはwww」


『白銀の獅子』はムビの家の前に辿り着いた。

 家の中に明かりが付いているので、ムビが中にいるのだろう。


「相変わらずチンケな家に住んでるわねー」

「ははは、誰からも相手にされないあいつにはお似合いだな」


 ゼルは入口の扉をノックする。


「はーい」


 家の中から声が聞こえて、扉が開く。


「どちらさまでしょ・・・」

「久しぶりだなム・・・」


 ムビとゼルは固まった。

 ムビは、予想だにしない最悪の来客に驚いたためだ。

 ゼルは、家の奥に美少女が4人座っているのを見たためだ。


「あーーっ!!『白銀の獅子』の皆さんじゃないですかぁー!?♪」

「ウソーー!?本当だーーーー!!!」


 ゼルは急いでイケメンスマイルを顔面に貼り付けた。


「や、やぁ・・・。確か、『四星の絆』の皆さんだっけ?皆でムビのお家でご飯?仲が良いんだねぇ」

「はいっ!今日MV撮影が終わって、打ち上げしているんです♪」


 憧れの『白銀の獅子』の登場に、皆興奮しているようだ。


 ムビの奴・・・こんな可愛い子達を自分の家に連れ込むだと!?

 どうやってそんなこと・・・!?

 いや待てよ、この状況、逆に都合が良いかもしれん。


「ちょうど良かった。実は俺達、ムビを含め、君達に話があったんだ。悪いけど、俺達もご一緒させてもらっても良いかな?」

「ちょっとゼル!?玄関で話して終わるって・・・」

「どうだろうムビ、お邪魔しても良いかな?」


 ムビは、後方をチラッと見た。

 ユリ、シノ、ルリの3人が、目を輝かせながら首を縦に振っている。


「・・・いいよ」

「悪いな、そしたらお邪魔するね」

「良いんですかーーー!!?『白銀の獅子』の皆さんとご一緒できるなんて光栄ですーーー!!♪」


 リゼは溜息をついたが、ゴリは鼻の下を伸ばして大喜びしていて、マリーも満更ではない様子だった。

『白銀の獅子』の面々がムビの家の敷居を跨いでいく。


「そうだ、手ぶらで参加するのも悪い。豪勢にいこう。ムビ、こいつで寿司やら肉やら高級ワインやら買ってきてくれ」


 そう言ってゼルはムビに100万円の札束を渡した。


「うわーー凄い!流石トップ『Mtuber』!♪」

「ははは、トップではないよ。まだまだこれからさ♪」


 そう言って『白銀の獅子』達は『四星の絆』の間に入って座りこんだ。

 ムビはその様子を、札束を握り締めながら玄関で眺め、夜の街に繰り出した。




 ムビは『白銀の獅子』時代もこうやってよくパシリにされていたから、ゼルがどういうものを欲しているかも熟知していた。

『白銀の獅子』行きつけの高級店に電話する。


「寿司銀八です・・・あっ、その声は『白銀の獅子』のムビ様ですか!いつもお世話になっています!・・・へい、特上握り盛り合わせと焼き魚ですね!ありがとうございやす!」

「ステーキ竜王です・・・あっ、『白銀の獅子』のムビ様ですね!はい、ドラゴンの特上部位とT-ボーン、その他詰め合わせセットですね!いつもありがとうございます!あっ、デザートも?承知いたしました!」

「酒の白川です・・・あっ、ムビ様!いつものですか?分かりました!ワイン2本、シャンパン2本用意しておきます!」




 ムビは街中を奔走し、1時間程して家に帰ってきた。

 ドアを開けると、『四星の絆』と『白銀の獅子』がすっかり打ち解けた様子で盛り上がっていた。


「おせーぞムビ」

「ムビさん、一人で行かせてしまってすみません」

「うわぁー!凄い美味しそうーーー!!♪」


 ムビがテーブルに寿司、焼き魚、ワイン、シャンパン、デザートを並べると、『四星の絆』から歓声が上がった。


「肉はこれから焼くから。皆、先に食べてて」


 そう言ってムビは台所で肉を焼き始めた。


「なにこれーーー!!!めっちゃ美味しいー!」

「こんなに美味しい物食べたの初めてですーーー!!♪」

「ははは。好きなだけ、たくさん食べていいよ♪」


 肉を焼きながら、ムビはチラッとテーブルの方を見る。

『四星の絆』と『白銀の獅子』は大盛り上がりしていた。

 ゼルとゴリがユリとシノを挟むように座っており、ユリとシノが目を輝かせながら楽しそうにゼルとゴリの話を聞いている。

 ゼルとゴリは、話しながら時折ユリとシノの頭を撫でたり肩を触ったりしている。

 リゼとルリは何やら毒舌で意気投合したのか、『姉御』と呼ぶルリに対しリゼが上機嫌に笑っている。

 マリーとサヨは隣り合って、落ち着いた様子で話をしている。


 ・・・あの席の、どこにも座りたくない・・・。


 ムビは一人で肉を焼いているこのポジションが一番楽だった。

 時間がかかる様に、一枚ずつ丁寧に焼いて小出しにしてテーブルへ運んだ。

 いつまでも、肉が焼けなければいいのにと思った。


「それでよー、ムビの奴が足引っ張ってよー!」


 肉を焼きながら、時折テーブルの方から笑い声と共にムビの悪口が聞こえてくる。


 ・・・あぁ、またこの感情・・・


 ムビは久しぶりに、情けなさと悲しさが入り混じった感情に襲われた。

 あっちにだけは本当に行きたくない。

 しかし、肉も最後の一枚を焼いてしまい、最後の逃げ場所ももう機能しなくなった。

 ムビは、最後の皿をテーブルに運ぶ。


「ムビさんすみません、お肉を焼いていただいて」

「おせーんだよ、もっと早く肉焼けっての!」


 ゴリはすっかり酒が回っているらしく、ぎゃははと大笑いしていた。

 料理は全て平らげられているようで、ムビの分は残っていなかった。

 ゴリがかなり食べていた様子だったので、恐らくゴリがムビの分も食べてしまったのだろう。


「ムビさん、ここどうですか?」


 ムビが突っ立っていると、ユリが床をポンポンと叩いて、ユリとシノの間への着席を勧める。


「や、そこは狭いからあっちに座れムビ」


 ゼルがゴリとリゼの間を指差した。

 ムビは何も言わず、言われた位置に座る。


 ゴリとリゼは一生ムビには構わないだろうという雰囲気で、反対側の『四星の絆』メンバーと楽しそうに談笑している。

 ムビは周囲にあるものを見た。

 高級ワインとシャンパンは、ムビの届かないところに置いてある。

 わざわざ取りに行く気も、盛り上がっている中誰かに頼む気もせず、目の前に1個だけ残っていた缶チューハイを開けて1人でチビチビと飲んだ。

 周りは大いに盛り上がっており、終わりそうな気配は全くない。

 早くこの地獄のような時間が終わらないかなとムビは思った。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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