第207話 合同宴会
「それではミラさんの退院を祝いまして、カンパーイ!」
「カンパーイ♪」
19時。『四星の絆』と『ミラと愉快な仲間たち』による合同宴会が幕を開けた。
開始早々、ミラとシンラが騒ぎ立てるが、他のメンバーも負けじとお喋りに花を咲かせ、笑い声が絶え間なく響く。
予選の話題だけであっという間に2時間が過ぎ、22時には2軒目へ突入。
「でよ~!こいつほんとバカなんだよ、ぎゃっはっは!!」
すでに『ミラと愉快な仲間たち』は完全に出来上がっており、店内でもひときわ目立つドンチャン騒ぎ。
『四星の絆』も負けじと盛り上がり、互いのパーソナルな話でさらに距離を縮めていく。
(すごいなぁ……こんなにすぐ仲良くなれるなんて)
ムビは驚きながらも、心地よい空気に身を委ねていた。
2軒目でも溶けるように時間が過ぎていく。
「お~し、3軒目行くぞ~♪」
音頭を取ったシンラは朝まで飲み明かすつもりのようで、全員当然のようについて行った。
深夜1時、3軒目ではムビとミラは隣同士になった。
「ほ~れ、ムビムビ♪飲め飲め~♪」
ミラは延々とムビにお酌をし続ける。
「ミ、ミラ……俺、もう飲めな……」
「ダイジョブダイジョブ、潰れたらワシが介抱してあげるから~♪」
視界がグルグル回るムビに、ミラは肩を寄せてぴったりとくっつく。
「おいミラ!お前さっきからムビばっかじゃねぇか!こっち来て喋れや!」
「うっさいのー!今いいとこなんだから邪魔すんなぁーっ!」
「なんだとてめーっ!この野郎っ!」
ミラとシンラが争っているうちに、シノがこっそりムビに水を渡す。
「ムビさん、今のうちに」
「あ、ありがとうございます……」
◆ ◆ ◆
四次会、五次会……気づけば朝。
六次会と称して、全員で24時間営業のハンバーガー店へ。
「それでよ、お前ら本戦までどうすんだ?」
徹夜で飲み明かしても顔色一つ変わらないシンラが、ポテトを頬張りながらムビに尋ねる。
「とりあえず、地道にレベルアップしていこうと思ってます。解呪方法は、聖女様やリリスが調査中なので、その結果を待とうかなと」
「なるほど。ところで姉ちゃんたち、お前らレベルはいくつなんだよ?」
「う……。大体、50ちょっとくらいです……」
ユリが申し訳なさそうに答える。
「まじかよ?ははは、よくそのレベルで予選突破したなお前らwww」
「こら、失礼でしょ!」
ナズナがぴしゃりと言う。
「で、どうやってレベルアップするんだ?狩場のアテはあるのか?」
「Bランクダンジョンで魔物を狩っていこうと思っています。本当はもっとレベルアップしたいんですけど、俺も弱体化しているし、無理はできないかなと」
シンラは黙ってストローを吸いながら聞いていたが、ふと口を開く。
「それじゃあ全然間に合わねぇだろ。私らが修行、手伝ってやろうか?」
その言葉に、『四星の絆』のメンバーが目を見開く。
「えっ……!?良いんですか!?」
「おうよ。どうせ暇だしな。お前らもいいか?」
シンラがミラ、ナズナ、シェリーに尋ねる。
「『Mtube』の撮影をさせてもらえるならかまわんぞ♪」
「私も特に予定ないから大丈夫かな」
「私もー」
ユリは目を輝かせた。
「すごい!すごーいっ!ありがとうございますっ!」
「いいってことよ。お前らはもう、妹分みたいなもんだしな」
「一生ついていきます姉御っ!」
「はっはっは、くるしゅうない♪戦闘訓練もビシバシやるから、覚悟しろよ?」
ムビは胸が高鳴った。
この最強メンバーに鍛えてもらえるなら、本戦のレベルにも十分ついていける。
「まぁ、これで『四星の絆』の優勝は決まったようなもんじゃねぇか?」
「いえ、それは……『ドラゴンテール』がいるので……」
「何だ?あいつらそんなに強えぇのかよ?」
「はい。全員レベルが250以上で」
「250だと!?私たちより上じゃねぇか!?」
シンラはハンバーガーを口に運ぼうとして手を止めた。
ナズナも首を傾げながら訪ねる。
「ちょっと待って、人間がなんでそんなレベルしてんの?」
「聖装、もしくは魔装を装備すると、レベル上限を突破できるみたいなんです」
「へー。そんなのがあるんだ」
「そりゃぜひとも手合わせ願いたかったな」
話を聞いていたミラは、ストローから口を離す。
「聖装なら、ワシ、持っとるぞ」
「「えっ、マジ!?」」
数人の声が揃った。
「うむ、Aランクダンジョン"暗黒騎士の古代城"の隠し部屋で見つけた♪」
「"暗黒騎士の古代城"……Aランクの中でもかなり高難易度のダンジョンですね」
「昔、聖装が欲しくて色々調査してのう。二つあたりを付けていたんじゃが、一つ目で無事ゲットしたんじゃ♪」
シン、と場が静まり返る。
「あの……もしかして、もう一つの聖装のありかも知ってます……?」
「ん?ああ、もう一つの方も知っとるぞ。さすがに、現地を探索せねばならんが」
ルリがミラの手を取る。
「ミ……ミラの姉御!もしよかったら、その場所を教えていただけませんか!?」
「ん、かまわんぞ?なんなら経験値稼ぎにもなるし、そこで修行してみてはどうじゃろうか?」
「あ……ありがとうございます、姉御!!」
「姉御はよせ、お主とワシはタメじゃろう!ミラでよいわ♪」
◆ ◆ ◆
こうして今後の方針が固まり、朝食を終えたムビたちは店の外に出る。
解散する前に、ムビたちは円陣を組む。
「よっしゃー!全員ぶっ倒して優勝するぞー!」
「「おー!!」」
朝焼けの空の下、笑い声がしばらく響き渡った。




