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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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205/207

第205話 魔装

(嘘でしょ……あれよりも強い魔物が存在するの……?)


 ミラ、シンラ、ナズナ、シェリー。

 全員の力を結集して、ようやく討ち倒したあの化物。

 それ以上の存在がいるなんて、信じたくなかった。


「おそらく、レヴィアタンやアスモデウスあたりの召喚を目論んでいたのでしょう。1万人分の魂では、72柱の悪魔の中位が限界だと証明されましたね」

「……よく分からないけど、魔王軍の幹部ってそんなに強かったの?」

「ええ。文献によれば、最低でもアモンの倍以上の戦力を有していたと推測されます」

「……ひえー。ほんとに、神話の世界の話だね。勇者様たちは、そんな化物と戦っていたのか」

「まぁ、現代の勇者と当時の勇者とでは、天と地ほどの開きがありますね。現在の勇者制度は形骸化していますから」

「現代に生まれてよかったぁ……」


 ムビが胸を撫で下ろすと、リリスは微笑んだ。


「ふふ。アモンを倒せるなら、ムビ様の強さも十分神話級ですよ?」

「うーん。でも、呪いでスキル封じられちゃってるしなぁ」

「確かにそれは痛手ですね。『ドラゴンテール』がいる以上、さすがにレベル100では優勝できません。ムビさんの解呪が急務です」


 その言葉に、ムビはふと疑問を思い出す。


「……そういえば、リリスって聖装持ってる?リンさんから、レベル上限が無いって聞いたんだけど」

「あら、聖装をご存知で?ならば、レベル上限を突破する方法もご存知のようですね」

「その言い方……やっぱり持ってるんだ?」

「いいえ。私は聖装を持っていません。王族といえど、そう簡単に手に入るものではありませんから」


 ムビは目を丸くする。


「えっ……?じゃあどうやって、レベル上限を突破してるの?」

「ふふ。方法は一つではないのですよ」


 リリスはマカロンを口に運び、ゆっくりと立ち上がった。


「必要なのは——人間性の喪失。それさえ満たせば、聖装でなくとも構いません」


 ——バチッ!


 黒い閃光が走り、リリスの手に漆黒の剣が現れる。


「そ、それは……?」

「魔剣です。聖なる力を宿す“聖装”とは異なり、闇の力を宿す剣——“魔装”です」

「魔装……」


 美しい装飾が施された黒剣。

 その見た目に反して、部屋全体が重苦しくなるような、禍々しいオーラを放っている。


「基本的には聖装と同じで、装備者の体内に宿り、力を与え、鎧や盾以上に防御力を上昇させます。同時に、レベル上限が消失します」

「すごい……どうやって手に入れたの?」

「ふふふ……それは、内緒です」


 リリスは口元に指を当て、剣は黒い閃光と共に消えた。


「魔装も聖装と同じく、入手は困難を極めます。まずはレベルアップに勤しむのが現実的でしょうね。次に解呪の件ですが、大聖堂の聖女に依頼してみてはいかがでしょうか」

「実は、昨日行ってきたんだ。聖女様でも解呪はできなくて……」

「……そうでしたか。分かりました。やはり、生半可な呪いではないようですね。解呪方法は、私の方で探ってみます。ムビ様は、パーティのレベルアップに専念してください」

「ありがとう。それから、一つお願いがあるんだけど……」

「なんでしょう?」

「口外禁止のギアス、解除してもらえないかな?実は、ミラを不意打ちした件で炎上して、チャンネル登録者数が減ってるんだ。視聴者に、何があったかを説明したいんだ」


 リリスは困ったような表情を浮かべる。


「申し訳ありませんが、それは許可できません」

「そんな……どうして!?」


 リリスの返答に、ムビは絶句する。


「ギアスの使用がお父様の耳に伝われば、『四星の絆』は失格になる可能性があります。この件は、内密にすべきです」

「そんな……。でも俺、皆から殺人鬼って呼ばれてて……。どこにいても、白い眼を向けられるんだ。釈明しないままじゃ、どこにも出歩けないよ……」


 リリスは口に手を添え、少し考える。

 そして、笑みを浮かべた。


「それなら、それで良いではありませんか。もしムビ様が外に出られなくなったら、私が面倒を見ます」

「は……?何を言って……」

「元はと言えば、私が蒔いた種。責任を取るのは当然です。欲しいものがあれば、何でもおっしゃってください。貴族以上の暮らしをお約束します」

「いや……そういうのを望んでるわけじゃ……。それじゃあせめて、ミラに謝らせてもらえないかな?直接、誤解を解きたいんだ」


 ムビは真っすぐリリスを見つめる。


「あの女に、直接……」


 リリスはムビを品定めするように目を細める。


「ダメです。必要ありません。例え少人数でも、お父様の耳に伝わるリスクがあります。どんな小さなリスクも、見逃すわけにはいきません」


 きっぱりとした強い口調。

 ムビは肩を落とした。


(仕方ない……。直接謝りたかったけど、仲間がミラに説明してくれるはずだ)


「分かった。大会が終わってギアスが解けたら、直接謝ることにするよ」

「ふふ。さすがに、ギアスが解けた後のことは口出しいたしません。ただ、ムビ様……お気づきですか?()退()()()()()()()()()()()()()()()?」

「え……?いやいや、契約は大会期間中だから……」

「契約内容は、()()()()()()()()()()()()()、です。つまり、敗退すれば——永遠に私との従属関係が続くのです」


 笑顔を浮かべるリリスに、ムビはゾッとした。


「う……嘘でしょ……?」

「私の目的は、ムビ様が契約書にサインした時点で、ほぼ達成されていました。大会結果がどのようになろうとも、既に私とムビ様は切っても切れぬ関係なのです」

「目的……?」

「そう、目的です」


 リリスは真っすぐムビを見つめる。


「私、ムビ様のことが——好きなんです」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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