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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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203/206

第203話 サヨの洞察力

 サヨは続けてムビに質問する。


「ムビさん、好きな食べ物は?」

「ハンバーグ」

「好きな女性のタイプは?」

「何の質問ですか」

「じゃあ……ミラを殺したのはなぜ?」

「…………」


 押し黙るムビの瞳を、サヨはじっと見つめる。

 全てを見抜くようなサヨの視線を、今ほど頼もしく思ったことはない。

 ムビはサヨに伝わるよう、全力で目で訴えかけた。


「やはり、ミラに関わる質問をすると魔力反応がありますね。ムビさんが黙るのは、魔法の影響と見て間違いないでしょう」


 ムビは全力で頷こうとするが、それもギアスで封じられる。

 代わりに、目をパチパチさせる。


「ムビさんにかけられた魔法はなんですか?」

「…………」

「魔力反応あり。恐らく、ミラに関わる質問に答えられないのではなく、自身にかけられた魔法について言及できないのですね。言い換えれば、ミラの殺害にはその魔法が関わっている、ということになる。ムビさんはその魔法に操られ、ミラを不意打ちしたのですね」


 サヨの推理が進むにつれ、小躍りして喜びたくなった。

 リアクションの一切を封じられ、全身にバチバチと魔力が流れる。


「あらあら、魔力反応がさらに強くなりました。正解のようですね」

「誰かがムビ君に精神操作系の魔法をかけたってこと?」

「それも考えましたが、精神操作系の魔法なら常時魔力反応があるはずなんです。恐らく呪い、もしくは契約……。例えばそうですね……"ギアス"、とか」


(さすがサヨさん!天才!!)


 ムビはサヨの魔法の知識と洞察力に感服する。


「ムビさん。ご自身にかけられた呪いについて、話していただけますか?」

「俺にかけられた呪いはスキル封じだけで、他に呪いはかけられていません」

「なるほど。では、ムビさんが結んだ契約について話していただけますか?」

「…………」


 サヨはムビの頬から手を離した。


「契約で間違いなさそうですね。となれば、ギアスの可能性が濃厚です」

「ギアスって、強制的に相手を従わせるっていう、あの……?」

「ええ。ギアスには一般契約と奴隷契約の2種類あります。奴隷契約なら首に紋様が現れるので、一般契約でしょう。騙されて契約書にサインさせられたのでしょうね」

「ひえ~。ムビ君を騙すなんて……。誰か知らないけど、相手も相当やり手だね」

「あら。相手はある程度絞れますよ」


 サヨは平然と言ってのけた。


「えっ……分かるの?」

「ええ。ミラへの不意打ちは、遠距離ギアスの可能性が高いですから」


 ムビも疑っていた遠方からのギアス。

 この口調だと、サヨには明確な知識があるようだ。


「遠距離ギアス?」

「通常のギアスは直接命令が必要ですが、遠距離ギアスなら離れた場所からでも指示を送れます。しかし、遠距離ギアスは超高等魔法……。莫大な魔力を消費しますし、技術的にも並の臨界者程度に扱える代物ではありません。よって、契約主はレベル100を超える者に限られます」


 レベル100を超える存在。

 そうなると、該当者はかなり絞られる。

『四星の絆』の面々は、シノの推理に息を呑む。


「『ミラと愉快な仲間たち』はミラを殺すわけがない。『ドラゴンテール』はムビさんと接触したことがないので除外。『両面宿儺』はムビさんの予選通過を願うはずがないし、そもそもムビさんが契約書にサインするわけがない。となると該当者は——リリス様、くらいでしょうか。リリス様なら、ムビさんの予選通過を願っているし、契約書にサインを書かせることも可能でしょう」


 ムビは心の中で全力で拍手を送った。

 サヨが神様のように見えた。


「すごいねサヨ!納得だわ!」

「リリス様なら、放送で私のピンチも確認できたはずですしね」

「——それであってる?ムビ君」


 ムビは沈黙するが、ムビのリラックスした雰囲気を全員が感じ取った。


「これで謎は解けましたわね。はぁ……あの女、八つ裂きにしてやろうかしら」

「ちょっ、サヨ、落ち着いて……相手は王女様だよ!?」

「王女だろうが神だろうが知りません。ムビさんの手を汚すなんて……」


 サヨが握るグラスにヒビが入り、ルリが「ひっ」と悲鳴を上げる。

 怒りのオーラをまとったサヨを、全員でなだめる。


「でも、早くミラに弁解した方がいいよね。ムビ君、誤解されたまま殴られちゃったし……」

「確か、私と同じ病院にミラが入院していたはずです。仲間の人たちも毎日面会に来ていたと思います」

「それなら明日、ムビさんがあの女と会っている間に、私たちでミラの誤解を解きましょう。ムビさんがいたら、問答無用で攻撃されるかもしれませんし」

「リリス様を"あの女"呼ばわり……」


 押し黙り続けるムビの肩を、ユリがポンと叩く。


「ずっと説明できなくて大変だったね。よしよし、明日ミラさんたちと仲直りしよ♪」


 ここ数日、ムビを苦しめていた問題が、ようやく晴れた気がした。

 普通なら誰にも気づかれず、一人で抱えるはずだった重荷。

 だが、『四星の絆』は違和感を感じ取り、ムビの異変に気付いてくれた。

 そして、全員が惜しみなくムビをフォローしてくれる。

 ムビは『四星の絆』が仲間であることに、心の底から感謝した。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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