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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第196話 『ドラゴンテール』のレベル

「ああ、僕のレベルかい?312だよ」

「さんびゃくじゅうに!?」


ムビの手が止まる。

予想を遥かに超える数値だった。


「ははは。まぁ、レベルだけなら参加者でも一番だと思うよ。レベル300を超える冒険者は、国内では僕だけじゃないかな?」


マルスは得意げに笑みを浮かべ、決め顔でドヤる。


「あの……他の皆さんも、聖装を持っているんですか?」

「ああ。パーティ全員、聖装持ちだよ。レベルも、全員250は超えているかな」


(シンラさんたちでも200なのに……。基礎パラメータは、シンラさんたちよりもかなり上ってことか……)


「ふふふ……。その顔は、聖装が欲しいって顔だね?」

「あ……いえ、その……」

「いや、無理もない。当然の反応だよ。ただ、聖装は神代の遺物で、現代の技術では製造不可能。ゆえに、入手は困難を極める。誰も見つけていない古代遺跡を発掘するくらい難しい」


古代遺跡なら先日見つけたが。

とはいえ、二度目の発見をする自信はとてもない。


「マルスさんたちは、どうやって四つも聖装を?」

「うーん、実はちゃんと探して見つけたのは1つだけなんだ。3つは、僕とユーゼンとロウターの家に代々家宝として保管されてたんだ。それをこっそり持ち出してね。バレたらタダじゃ済まないだろうな、ははは♪」


さらっととんでもないカミングアウト。


「だから、あまり見せないようにしてるんですね……」

「ははは、バレたか。あまり広めないように頼むね?」


マルスは人差し指を立ててウィンクする。


しかし、よりにもよって『Mtuber』にそんな大事な秘密を暴露するのか……。

「ドラゴンテールの秘密」なんてタイトルで動画を出せば、万バズ確定なのだが……。


「大丈夫なんですか?そんな大事な秘密を簡単に話して。俺、一応世間的には犯罪者なんですよ?」

「それは大丈夫さ。シノの友人が、悪人なはずないだろう?」


屈託のない笑顔。

いい加減なのか、それともシノへの信頼が絶大なのか。


「まあ、聖装は確かに強力だけど、今の『四星の絆』にはまだ必要ないと思う。ムビ君はともかく、他のメンバーはまだまだレベルアップが必要だ。聖装の入手は、全員が臨界者になってからでも遅くないさ」


気づけば、マルスはデザートを平らげていた。


「さて、そろそろ時間だ。僕は行くけど、最後に一つだけいいかな?」

「はい、何でしょう?」


マルスは声をひそめる。


「……ムビ君って、『四星の絆』の誰かと……付き合ってたりする?」

「えっ?もちろん、そんなことないですよ?」

「なら良かった……。もう少し具体的に聞くけど、シノのこと、好きだったりする?」


マルスの表情は真剣そのものだった。


「いや……俺、プロデューサーなので、そういう風には……」

「そっか……。いやね、ここだけの話、僕はシノのことが好きなんだ」


ムビはジュースを噴き出しそうになった。

薄々そんな気はしていたが、初対面の人間にここまで言えるメンタルにムビは感服した。


「実は一つ、ムビ君にお願いがあって……。もしシノに気が合ったら申し訳ないんだが、シノのことは譲ってくれないか?」

「譲るも何も、シノさんとは何もないですし……」


よくよく思い返してみると、全く何も無かったわけではないけれど……。

しかし待てよ?

アイドルのプロデューサーとして、恋愛を許可するのはどうなのだろうか?

個人的には、アイドルだって恋愛していいと思うのだが……。


「もう一つ。これは男として、大変情けない申し出なんだが……。もしも、もしもだよ?シノに迫られても、断ってくれないか?」

「何の申し出ですか!?」


マルスは最強の冒険者とは思えないほど腰を低くしていた。


「いや、これほんと切実な願いなんだ……。な?頼むよ。このために君には色んな情報を提供したんだ。そうだ!なんならここのご飯代も僕が出すよ!」


えらく気前がいいと思ったら、意味不明な下心が見え隠れした。


「そんな約束、必要ないですって!」

「いーや!約束してくれ!じゃあ僕はもう行くから!今日は楽しかった、またご飯に行こう!お代は払っておくからね!?払ったら約束成立だからね!?じゃあね!」


猛烈なスピードでマルスは店の外に出て行った。

ポカンと口を開けたムビが一人残され、とりあえずまだ半分残っている料理を口に運んだ。




◆ ◆ ◆




「あっ、ムビさん、お帰りなさい。ずいぶん遅かったですね」

「ただいま。マルスさんと、ちょっと話し込んでて」

「マルスったら、お喋りですからね。ごめんなさいね、ムビさん」


昼食を終えたムビは、シノの病室を訪れていた。

カーテンが風に揺れ、シノはベッドの上で読書をしていた。


「そういえば、ムビさんと会うのは数日ぶりですね。まだ言えてませんでしたが、予選突破、おめでとうございます」

「シノさんの頑張りのおかげです。しかし、ほんとよく突破できましたよね。転移でみんなバラバラになったのに」

「そう、それ!本当に信じられないですよね!」


二人は時間を忘れて語り合った。三日間の出来事を、思うままに。

つらいことも多かったはずなのに、シノは手を叩いて笑っていた。

その笑顔を見ていると、ムビの中の疲れや悩みが、少しずつほどけていく気がした。


「あー、いっぱい笑いました」


気付けば外は夕暮れ時。

冷たい風がカーテンを揺らす。


「昨日は、ずっとマルスさんと一緒だったんですか?」

「そうなんです。目を覚ましたら、病室にマルスがいて。大丈夫って言っても全然帰らなくて」

「そうだったんですね。二人は仲が良いんですね」

「ただの幼馴染ですよ。昔から心配性で……って、何ですかその顔は?」


ムビはニコニコと笑っていた。


「いやぁ、こういうの“てぇてぇ”って言うのかなぁって思って」


シノとマルスはお似合いだ。

仲睦まじい二人を想像すると、ニヤケが止まらない。


「あの……マルスはただの幼馴染で、それ以上のことは何もありませんよ?」

「ふふふ。そうなんですねぇ」


緩みきったムビの笑顔に、シノは眉をひそめる。


「もしかして、マルスに変なこと吹き込まれました?」

「えっ……?いや、別に何も……」


不意に図星を付かれ、動揺したムビをシノは見逃さなかった。


「ふーん……マルスは何と?」

「い、いや、ホントに何も……」


シノの目が細くなる。


「もしかして、婚約の話、聞きました?」

「えっ!?婚約!?」


想像以上の進展に、ムビは驚いた。


「それは聞いてなかったんですね。まぁどうせ、似たようなものでしょう?」

「は、はい……。シノさんのことが好きだから、譲ってくれと……」


シノは溜息をつく。


「あの……シノさん。それで、どうするんですか?」

「何がですか?」

「その……婚約の件、です……」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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