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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第192話 反魂呪文

 ——シュンッ


 眩い光とともに、ムビは集合ホールへと転移した。

 そこには歓喜に沸く冒険者たちの姿。

 予選突破の余韻が空気を満たしていた。


「ムビくんっ!」


 ムビに駆け寄る少女の姿があった。

 髪に木の葉を付けたユリである。

 ムビを見つけて、安堵の表情を浮かべている。


「やったね!!予選突破、おめでとーーーう♪♪ずっと寂しかったよ~!転移してから、ひとりっきりだったんだよ?木のうろの中に隠れててさぁー!でも、無事に突破できて本当に良かったぁー……って、ムビくん?」


 喜びを爆発させていたユリは、ムビの様子がおかしいことに気付いた。

 心配そうにムビの顔を覗き込む。


「ムビくん、どうしたの?顔、真っ青だよ?」


 ムビの顔色は蒼白、体は小刻みに震えていた。

 ユリに何かを話そうと、口を開きかける。


 言葉を紡ごうとしたその瞬間——


「ミラッ!!死ぬなっ!!」


 会場に響き渡る絶叫。

 冒険者たちが一斉に振り返ると、床に倒れたミラの肩を揺さぶるシンラの姿があった。

 血が床を染め、空気が凍りつく。


 その様子を見て、本選出場を果たした冒険者たちはどよめいた。


「嘘だろ……ミラがやられたのか!?」

「おいおい、誰がやったんだよ!?そんな化物がいるのか!?」


 シェリーが鬼気迫る表情で、ミラの周囲に魔法陣を展開している。


「シンラ、どいてっ!!」


 シェリーが叫ぶと、シンラは素早く身を引く。

 シェリーがありったけの魔力を込めて、詠唱を開始する。


 ---

 闇より深き霧を裂き

 鐘の音は魂を呼ぶ

 眠りし者よ、時の綻びに応えよ

 ただ一刻、ただ一息

 黄泉の扉は開かれん

 鐘が鳴り止むその時まで

 汝は我が声に応えよ

 ---


「反魂呪文——《帰魂の鐘(ネクロベラム)》!!」


 青白い鐘がミラの頭上に現れ、会場に澄んだ音が響き渡る。

 シェリーの呪文を見て、冒険者たちがざわめく。


「おい……あれ、反魂呪文じゃねぇか!?」

「反魂呪文って……死者を蘇らせるっていう、伝説の呪文か!?」

「そうだ……。死者の肉体が残っていて、死後時間が経っていない場合、蘇生可能らしいが……成功確率は、せいぜい2割程度って話だ」


 会場中の冒険者、スタッフが息を呑んで見守った。


 カラーン……


 最後に大きく鐘の音が鳴ると、鐘はミラの体へと吸収された。

 青白い光がミラを包み——


「……ガハッ!」


 ミラが血を吐きながら、息を吹き返す。


「ミラっ……!」

「生き返ったんだな!?」


 ナズナが脈を確認し、心臓の鼓動を確かめる。


「脈が戻ってる……!心臓も動いてるよ!」


 シェリーの表情が和らぎ、深く息を吐く。


「良かった……さすがミラ、悪運強いわね。でも、数日は目を覚まさないと思う」

「ちくしょう……一体、誰がミラをこんな目に……!」


 シンラは周囲を見渡す。

 すると、ムビの姿に気付いた。


「おーっ、ムビ!お前、無事だったか!こっちに来て教えてくれ、一体何があったんだ!?」


 シンラが大声でムビを呼び、手招きする。

 ユリが驚いた表情でムビに問いかける。


「ムビくん、知り合いなの……?」

「う、うん……。予選の間、ミラのパーティと一緒に行動してたんだ……」

「えーっ!すごいね!それって最強メンバーじゃん♪」


 ユリが声を弾ませるが、ムビの表情は暗い。

 ムビはシンラのもとへ歩み寄り、その背にユリも続く。


「よぉ、ムビ。そっちの子がお前の仲間か?」

「初めまして、ユリです♪」

「へぇ、可愛い子じゃねぇか。それはそうと、何があったんだ?お前も一緒だったんだろ。一体誰がミラをやったんだ?」


 ムビは説明しようと口を開く。


(まずは、ギアスのことを説明しないと……)


 ——バチッ!


 頭に激痛が走り、舌が回らなくなる。


(これは……ギアス!?……そうだ、思い出した!ギアスのことは口外しないよう、リリスに制約をかけられてたんだった……!)


「……おい、ムビ、どうしたんだよ?何か言えよ」


 ムビは必死に言葉を探すが、どうしたってギアスに触れずに説明することなどできない。

 沈黙するムビを、シンラは不思議そうに見ていた。


(くそっ……!どうやって伝えたらいいんだ!?)


 そのとき、会場にアナウンスが響いた。


「皆さま、お疲れ様でした!予選通過、おめでとうございます!」


 壇上のスタッフがマイクを握り、冒険者たちの視線が集まる。


「早速ですが、予選通過者の発表をさせていただきます!こちらの表に名前のある16組のパーティが、本選トーナメント出場となります!」


 スタッフの言葉と共に、スクリーンに名前が表示される。

『ドラゴンテール』、『ライオンハート』、『エヴァンジェリン』……。

 その他、有名なパーティたちの名前が連なっている。


「本選の開催は一ヶ月後です!後日、王族や貴族との交流パーティにもご招待するので、ぜひご出席ください!」


 冒険者たちから歓声が上がる。

 A級冒険者といえど、王族や貴族との交流は滅多に行えない。

 社交界への足がかりとなる貴重な機会だ。


「それから、ささやかながら、皆様の活躍をまとめたムービーをご用意したので、ぜひご覧ください♪」


 会場が暗転し、動画がスクリーンに映される。


 本選出場が決まった冒険者16組の、それぞれの各場面が映し出される。


『ドラゴンテール』と『ライオンハート』の対峙。

『エヴァンジェリン』やその他冒険者の活躍。

 ムビとミラたちの宴会。

『ドラゴンテール』VS数多の冒険者たち。

 そして——


「……何だあれは!?」


 シノが触手に絡め取られ、ゴリに痛めつけられる映像。


「ひどい……シノに、なんてことを……!」


 ユリが悲鳴を上げ、口元を押さえる。

 そして映像が切り替わり、ムビとミラの場面へ。


「えっ……」


 シンラが呆然とつぶやく。

 そこには、ムビがミラを背後から突き刺す姿が——


「えっ……ムビくん……!?」


 ユリが震える声でムビを見つめる。

 ムビの背筋を冷たい汗がつたった。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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